懇々説くはお狐様なり「この鳴神村の村人は皆狐の神様を大変信仰しているのですよ」
この優しげな顔をした老婆、古田はトーマの育ての親である。稲妻とモンドのハーフであるトーマは、離れて暮らす父親に酒を届けようと、幼いながら一人船に乗り込んだものの、雷鳴轟く稲妻へ辿り着くや否や外国人の船ばかりを狙う海賊に襲われてしまった。他にも船に乗っていた者はいたが助かった者は一人もいない。トーマも虫の息ではあったが、寸でのところでたまたま海の様子を見に来ていたこの村の漁師に救出されたのであった。
助けられたは良いが、トーマが連れてこられたこの村はおかしな村であった。鳴神村の狐信仰は根深く、狐の神様に村を守護していただく代わりに、18歳になると村人は決まって生贄となる。生贄となった者は皆神隠しにあい、二度と帰ってこないのだとか。
しかし、生贄を捧げないとその年は決まって災害や農凶に苦しんだのだ。
……というのも、今の代の神である神里綾人・綾華の兄妹になる前の話だ。代替わりをしてここ十年、実際村を守護する力を持っている兄・綾人は全くと言って良いほど人間自体に興味を示さず、この村の巫女へ「生贄はいらない」と前代未聞のお告げを下したのだ。代わりに面白い味の食物を捧げよ、とも。
村人達は、始めこそ代が変わったとはいえ突然方針を変えた次期狐神の考えが読めず恐れ慄いたが、変わった味や珍しい味の食べ物や飲み物を捧げるだけで人間の生贄がいらないのであれば、素直に次期狐神が優しい神様で良かった、と思おう。と、段々と人身御供の考えは薄れていった。
だからといってそれで村が豊かになったかと問われると定かではない。次期狐神はとにかく「人に然程興味がなく、施しをする気がない」ようであった。そのかわり、今まで頻繁に起きていた災害は少なくなった様子だったので、とびきり豊かにならずとも災害が以前より少ないことに村人達は大いに喜んだ。
生贄を捧げ続けた村は若者が少なく、最近になってこの村に来たトーマも今まで何も知らぬまま過ごしていたのだが、事が起こったのはつい先日のことである。
17の歳になったトーマは、いつものように鎮守の森へ枝拾いに来ていた。鎮守の森に落ちている孔雀の木の枝は柔らかくて折りやすいし、良い燃料になる。村人は爺婆たちばかりだ。少しでも楽をしてもらおうと枝拾いに夢中になっていたトーマは、この日知らぬ間にいつもより森の奥深くまで進んでいた。
森の奥深くの木陰に何やら光る物を見た気がして目を凝らすと、美しい毛並みの白狐が爪型の罠にかかって蹲っているではないか。その罠はよくモンドの野外で見かける猪用の物に形こそ似ているものの、おおよそ人間が設置したとは思えない複雑な造りのもので、大きめの狐の脚をぱっくりと挟んでしまっている。
血が滲む白狐の脚を見て、トーマは一目散に狐の元へ駆け寄った。
「だ、大丈夫かい!?よしよし、可哀想に……。この森では大きな狸が祀られているから、いたずら好きの狸の罠かもしれない」
高貴な雰囲気が漂うその狐は、へにゃりと眉を下げ心配そうに声を掛けるトーマにすぐになされるがままになった。
トーマは元来動物好きであるし、育ての親である古田からよく狐の神様の話を聞いていたので、白狐に優しく声をかけ、大きな目をニコ、と細めて背中の美しい毛を撫でてやった。
「大丈夫だ。今外してやるから待っててくれよ。よっ、と……ううん……どういう仕組みだ?これ……」
懸命に罠を解いてやろうとするものの、先の言葉通りこれを設置したのはいたずら好きの狸達だった為、到底人間がどうこう出来る代物ではなかった。しばらくトーマの様子を伺っていた白狐だったが、中々罠を外せない様子のトーマを見るとふと立ち上がる。瞬間、パキッ、と罠がバラバラに砕け散った。
「うわ!?あれ……もしかして君、自分で外せたのかい……?」
白狐は驚くトーマの手のひらにすり、と頭を擦り寄せた後すぐさまその場から走り去ってしまった。よく見ると血が滲んでいた脚の傷もなかったように思う。
◇◇◇
「それで、その童が気に入ったと?」
「勿論それだけではありません。彼が村に来た十年前のあの日、ほとんど死にかけていた彼を救ってくれと村の者が私の社へ連れてきたのです」
村が見渡せる小山に腰掛けた綾人の背後で、薄桃色の髪の女性がにまにま笑う。神櫻の香りがやけに濃い。彼女は綾人と同じ狐であるが、綾人よりも長命であり、稲妻城の大御所様の眷属である。
「ほう」
「こちらも神、とはいえ親善事業をやっている訳ではありません。私から告げたことではありますが、捧げ物も碌に貰っていなかったし、私は人間に興味がありません。助けるつもりはありませんでした」
そうだ。あの日の村人の願いは、綾人の妹であり慈悲深く綺麗な心を持つ綾華が「私も彼を助けたい」と申し出なければ叶えられることはなかった。
「しかし、妹の慈悲により私は彼を生かそうとしました。そうして神気を少しばかり彼に分けた。八重様は知っていますか?落ちた花を火鉢に放り込むと、炎によって一瞬だけ生気をみなぎらせます。花が最後に見せるその鮮やかな姿は、炎の輝きをも凌駕するものだと」
その時の様子を思い出しながらいつになく優しく微笑む綾人に、八重様、と呼ばれた女性はほんの少し驚いた後、またにんまりと笑いながら言う。
「つまり死にかけた童が生気をみなぎらせたその姿に惚れた、と」
「そうですね。今考えればあの時すでに私の心はあの子に奪われていたのかもしれません。神気を注いだ時に気がついたのですが、あの子の体は特異体質でした。私の神気を穏やかに出来るのです。」
「運命とでも言いたげじゃな。まさかあのような杜撰な罠にかかってまで関わりを持とうなどと、神らしくない行いをしたものじゃ。罰当たりにも程があるぞ」
「……罰など当たりませんよ。こちらが与える側ですから。フフ、私は彼を試したまでです。思った通りの人物でしたが」
揶揄う言葉をかけても少しも動揺をする様子のない綾人に、八重は内心(生意気な若造じゃ)と思いつつも面白いことになった、と浮き足だった様子で稲妻城へ帰っていった。
◇◇◇
「ーあの子を捧げてください。私の嫁として」
次の日鳴神村の巫女の夢枕に立った綾人がそう告げたことで、平穏な日々を過ごしていた村人達は騒然となる。
今迄碌な物を捧げておらずお怒りになったのか?一度助けたあの子の命を今一度奪いにいらっしゃったのでは?人間を捧げなければまた災厄が起きてしまうのか、と。
古田の家には村長や昔の風習をよく知る年寄り達が押し寄せ、一同は正座して顔を見合わせた。いつものように枝と食糧を調達しに出かけていたトーマは、部屋の異様な雰囲気に足を止め、土間に荷物を置いたまま入れずにいた。
(何で村の人達が集まっているんだ?近々何か催しがある訳でもないし……)
話に聞き耳を立てると、どうやら狐神様の話をしているらしい。生贄、嫁。捧げなければ農凶や災害が起きる。そんな話が聞こえる。
(狐神様が何か……?)
トーマが話の内容を理解しようと頭を悩ませていると、どこからきたのか先日罠にかかっていた白狐が入り口から顔を覗かせているではないか。
じ、とこちらを見た狐に思わず顔が綻ぶ。本当に美しい狐だ。
「お前……あの時の!傷は癒えたのかい?もしかして狐の恩返し、って所かな?」
頭を撫でてやると、ぶわりと霧のようなものに包まれた狐は美しく気品のある青年に姿を変えた。当代の狐神である神里綾人である。
「恩返し、というより君を攫いに来たと言ったほうが良いかもしれない」
「えっ……?」
「今村人達の注目はこちらにないけれど。どうだい、トーマ。私と鎮守の森へ散歩に出掛ける、というのは」
「……」
する、と至極自然に腰を引き寄せた綾人は有無を言わせない、と言った威圧感を出しながらじっ、とトーマの顔を覗き込む。本人は覚えていないが、神気を分け与えられたことのあるトーマは、じわりと自分の中に懐かしさが広がっていくのを感じた。
(断れ、ない)
くら、と頭を揺さぶられた心地がしながらもトーマも負けじと綾人の目を見つめ返す。
「……な、何故俺と?」
「君は、私の番になるんだよ。トーマ。これは決定事項だ。村人は知らないだろうけど、私達は溢れ出る神気を定期的に発散しなくてはいけない。何もしなければそれが災害となるし、多少であれば人間や植物に分け与えられる。しかし、それも必ず良いものになるとは限らない」
「……」
「しかし、番である人間へ神気を注ぐと…穏やかな気となって周囲に幸運をもたらすという訳だ」
「な、なるほど……?いや、待ってください、俺は男ですが、あの…番というのは…夫婦、ということですよね?生贄になって村が安泰ということであれば俺が喜んで生贄となります。しかし番となると…責任を押し付ける訳ではないのですが、女人の方が適任なのでは…」
「君でなくては駄目なんだよ、トーマ」
「は」
はてなマークを頭の上に浮かべるトーマの腰に手を添えたまま、片手を取ると二人の体がふわりと宙に浮く。綾人の姿が人間に変わった時のように、ぶわりと霧のようなものに包まれたかと思うと、先程まで土間に居たはずのトーマの目の前には鎮守の森が広がっていた。
「う、嘘だろ……」
「フフ、どうだい?婚姻の契りを交わす前のお試しということでひとつ」
◇◇◇
(き、気まずい)
自分が美しい狐だと思い話しかけていたのはこの村を守護する狐の神様で、自分のことを何故なのか番にしようとしている。人目のない間に鎮守の森まで攫われて。
(……いやいや、これは攫われたっていうのか?別に神隠しにあった訳でもないし……)
トーマはそんな甘い考えをよぎらせたが、綾人はトーマの反応次第では神隠しする気満々である。何も喋らぬトーマを気にした様子はなく、自分の話をぽつぽつと話してくれた。今迄は生贄や嫁を貰わず、変わった味をした食物を捧げてもらっていた事。溢れ出た神気は時折この鎮守の森へ足を運んでは魔物退治で発散していたこと。それ以外にも草や木に分け与えたこともあるが、綾人の気の力に負けてたちまち枯れてしまったことなど。話を聞いていく内に、トーマは綾人が涼やかな見た目に反して接しやすい人物なのかも、と思った。話は上手いし、こちらを気遣ってくれている様子が垣間見えたからだ。それは番として自分を何故だか大事にしてくれているからかもしれないけれど。
手を緩く握ったまま二人でしばらく歩いて少し開けた場所へ出ると、そこには美しい池が広がっていた。
「まだ疑っているみたいだけど……君に神気を注ぐとどうなるのか試してみようか?」
「試すって……どういう事です?」
「まあ、やってみれば分かることさ」
足元が濡れるのも気にせず、池の真ん中あたりまで歩みを進める綾人に引っ張られ、トーマもついていく。綾人の力なのか、水面は殆ど波紋が広がらず静かなままだった。
ちょうど池の中心部へ辿り着くと、もう一度ふいに腰を引き寄せられ、途端に顔が近くなる。
「……どうか怖がらずにいておくれ」
グ、と腰を抱かれたまま片手で胸の……ちょうど心臓辺りに手を翳される。綾人の掌が淡く光を放つと、温かな気が身体に流れてくる。
「……あ……」
「……鎮守の森は私達に近い存在だから、ここの池だと具現化出来るみたいだ」
綾人からトーマへ注がれた神気が池にぶわっと広がり頭上から雨を降らせる。所々で水が花に形を変え、ピチョン、と跳ね消えていった。差し込む光が水に反射して、まるで天気雨のようにキラキラと光り輝く。狐の嫁入りだ。
「す、すごい……!」
「私の神気はトーマを経由すると人々に幸せをもたらす、ということ、分かってもらえたかな?」
「ええ、分かりましたとも……!俺の体で良ければいくらでも神気を注いで下さい!でも、番にならずともたまにこうして神気をいただければ良いのでは」
「……君ねえ」
腰を抱かれたままの姿勢で尊敬の眼差しを向けてくるトーマはどうしたって生贄は良くても番にはなりたくないらしい。ああ、なんて面白い。村の娘達は自分の姿を見るや否やすぐに己の純潔を捧げようとしてきたというのに。まあ、その純潔を私が散らすことはなかったのだけど。
「まあ、いいよ。トーマはまだ17だろう。18になるまで一年ある。それまでに私が口説き落とすとしよう」
「貴方に得なんて無いのに男の俺を口説くなんて、狐の若様は物好きなお方ですね」
◇◇◇
「……それで、まさか俺の家に住み着くとは思わないじゃないですか」
「だってこれが一番手っ取り早いんだもの」
あの後、綾人に連れられるがまま家へ帰ってきたトーマは古田にひどく心配された。つい先程まで傍らにいた筈の綾人の姿はなく、トーマが夜遅くまで一人で枝拾いに出ていたと思ったらしい。そうして古田をどうにか宥めて部屋へ戻ると、当然かのように白狐の姿をした綾人がいた。
「いやいや、俺が部屋で独り言を喋っていると勘違いされたらどうするんですか。それに貴方神様でしょう。若様が社にいなくては村人達は誰もいない社に祈りを捧げることになってしまう」
「若でいいよ。それと安心をしなさい、トーマ。私は神なのだから、部屋の音を漏れないようにするなんてことは朝飯前だよ。それに、社には妹の綾華がいるのだから」
「……若の、妹」
彼が妹、と呼ぶその女の子のことは朧げに覚えている。自分が小さい頃に死にかけた時、両手を握って生きて欲しいと懸命に願ってくれたあの子だ。そしてあの時、自分は今目の前にいる当代の狐神、綾人に命を救ってもらったのだ。
(……そうだ、なんで忘れていたんだろう。この方は俺の命の恩人なんだ)
「どうかしたかい?トーマ」
「い、いえ……」
薄らとしか覚えていないものの、先程感じた神気の温もりは確かに遠い昔に感じたことのあるものだった。
しかし、そうなると尚更何故この狐神様が自分を番にしたがっているのか分からない。
(だってこの綺麗な神様が俺なんかに惚れるなんて考えられないし……)
(ああ、まいったなあ。トーマはこの地の人間ではないから私に興味がないのかもしれない)
二人の考えは交わらないまま、トーマは冷える夜を乗り越えるため布団に入る。綾人はその傍らで白狐の姿のままその身を丸めた。
「……あの、若。寒くはありませんか?布団は一組しかありませんが、その……こちらへ入っては?」
「おや。なんて優しいお嫁さんだろう」
「いや、お嫁さんではないですが」
動物好きのトーマが白狐の姿のまま丸まる綾人を見逃せる筈がない。そもそも神様にこの程度の寒さがこたえるかは一旦置いておいて。
自分を娶ろうとしているのには変わりないけれど、今は見た目が白狐なので布団に嬉々として入り込んだ綾人をトーマは当たり前かのようにぎゅ、と抱きしめた。
「……トーマは少し不用心だね」
「うん……?若?何か言いました?」
すでに眠気まなこのトーマに綾人の言葉は聞こえなかったらしい。一人と一匹はじわりと温まっていく布団の中で穏やかに眠りについた。
◇◇◇
チチチ……
鳥の囀りが聞こえる。窓の木枠から差し込む光が瞼をくすぐっているようだ。早朝の空気の香りと、それと。
「うーん……朝か……って、おわあ!??」
「お早う、トーマ。早く起きて偉いね」
「おはようございます……じゃなくて!ど、どうしてその姿で…何で抱きしめて……!」
「フフ、朝から元気だなあトーマは」
目の前には綺麗な青年がいて、自分を抱きしめていて。いや、同じ布団へ入るよう促したのは俺なんだけど。
昨晩は冷える夜であったし、自分が温かい布団で寝ているというのに白狐の姿で足元に丸まられていたのだから、布団へ引き入れたのは仕方がないといえよう。
そして、抱きしめられ密着した肌からは体温とはまた違った温かさを感じた。
「あの……若?もしかして神気を放ってます?」
「…………いや?」
「なんです今の沈黙は」
「トーマに私の神気を馴染ませようと思って」
綾人が言うに、特異体質の番へ(まだ番ではないが)毎日神気を注ぐ。すると身体へ馴染んで神気を注げる量が増える、らしい。
「増えたらその分幸せになる人々も増えるということだ」
「なるほど……?」
「トーマはそれが望みだろう」
そのままぎゅっと自分を抱き寄せた綾人の顔が、なんだか一瞬寂しげに見えた。身体が温かい。
(もしかして……人々は若からの施しを切望するばかりで、若を敬いはしても側にいる人がいなくて……さみしい……?)
そ、とトーマが背中に手を添えると、より一層強く抱きしめられた。注がれる神気が多くなる。身体が熱くて、酒に酔ったような心地になってくる。
「……トーマ」
「……わ、んんっ!?」
ふと、顔をあげた綾人に唇を奪われた。トーマは一瞬目を見開いたが、そのまま見開かれた大きな目はトロ、と溶けていく。
しばらく堪能していた綾人だったが、今が朝である事を思い出してから漸くトーマを解放した頃には、トーマはぐったりした様子で虚に宙を見つめていた。身体からは綾人の神気がじわじわと漏れ出している。
「おや。やりすぎたかな」
「……全くその通りじゃ」
愛おしげにトーマを眺めながら微笑んでいると、いつから居たのか八重神子が部屋の隅からこちらを見ていた。腕を組みながらこちらへ歩み寄ると、「おお、可哀想に」とトーマの頬へ触れようとする。それを綾人は見逃さなかった。
「その子は私のですが」
「まだ正式な番ではないじゃろ。そう怒るでない。……それより、これは卑怯じゃな。なんと言いくるめたんだが」
「毎日の日中以外にも眠る時、起きた時。神気を注ぐ口実を得ましたよ。トーマは賢いけれど少しお人好しすぎますね……?」
フフ、と笑う綾人に先程の寂しげな表情はない。我ながら演技に磨きがかかったものだ、と思う。神気を注ぎ続けると注げる量が増える、というのは事実だが、トーマは徐々に綾人専用に身体を造り替えられているとは知らない。妖術の類にも近いものだが、少しずつ少しずつ、綾人に神気を注がれる度に綾人との触れ合いがトーマにとって幸せで心地良い物に思えるよう変化していた。
「一度にあまり神気を注ぐと人間は壊れてしまうものじゃ。今だってこんな虚な目をして、妾のことは見えておらん」
「程々にしておきますよ、それにこれは私なりの優しさです」
「優しさ、というより執着じゃな」
「……そうとも言います」
どうせ番になるのなら、愛しくて心地良いほうが良い。綾人はトーマを離してやる気などないのだから。
これから毎日、共寝をし狐の神様に体内を塗り替えられられることを、トーマはまだ知らない。