懇々説くはお狐様なり「この鳴神村の村人は皆狐の神様を大変信仰しているのですよ」
この優しげな顔をした老婆、古田はトーマの育ての親である。稲妻とモンドのハーフであるトーマは、離れて暮らす父親に酒を届けようと、幼いながら一人船に乗り込んだものの、雷鳴轟く稲妻へ辿り着くや否や外国人の船ばかりを狙う海賊に襲われてしまった。他にも船に乗っていた者はいたが助かった者は一人もいない。トーマも虫の息ではあったが、寸でのところでたまたま海の様子を見に来ていたこの村の漁師に救出されたのであった。
助けられたは良いが、トーマが連れてこられたこの村はおかしな村であった。鳴神村の狐信仰は根深く、狐の神様に村を守護していただく代わりに、18歳になると村人は決まって生贄となる。生贄となった者は皆神隠しにあい、二度と帰ってこないのだとか。
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