寝床は整えたい派寝床は整えたい派 K暁
いつも先にシャワーを出てしまうKKは、必ずシーツを交換する。確かに体液がついてたら不衛生だからね、交換するのは当たり前にしていきたいけど、まさかKKが自らやるなんて正直思ってもなかったんだ。失礼な話だけどね。
「いつもありがとう」
「おう。お前は休んでろ」
「手伝うよ」
「いい、いい。俺にやらせろ。これくらいできなきゃ男が廃る」
「はいはい、じゃあお願いします」
曰く、巣作りは雄の基本とか言って誤魔化されたけど、なんだか大事にされてるなぁって思う。一緒に暮らすようになって、きっと家事はあんまりできないんだろうな、俺がやらないとって思ってた。けど蓋を開けてみれば、丸投げされるのなんてほんとたまに、仕事が詰まりすぎて書斎に缶詰になる時くらいだ。洗濯は干せば畳んでくれるし、料理は作れば皿を洗ってくれる。僕の帰りが遅ければご飯作っておいてくれるし、作るご飯は男らしい丼物が多いけど野菜が多めで栄養バランスもある程度考えられている。食い物は体を作る基本だ、って野菜ジュース飲みながらタバコ吸う人に言われてもな、って思うけど、それってつまり僕の体のことを気にかけてくれているんだと思う。アジトはカップ麺でいっぱいだったことも考えると、僕がいるから作ってくれている、のは間違いないと思う。まぁ自惚でも良いよ、KKが作ってくれるご飯が美味しいことに変わりはないし。
テキパキとシーツを敷き終えるなり、手招きされる。ベッドに寄ると、そのまま寝かされ布団に収納される。
「さぁ、おやすみの時間だ」
「僕もう24だよ」
「俺にとっちゃ大切な恋人なんだ、大事にさせろ」
「……えへ」
「照れたな、俺の勝ちだ」
「え、ずるい!」
ベッドに寝転んで、ベッドの淵に腰掛けたKKに頭を撫でられながらこうして無駄話をする時間が、僕は好きだ。いつもえっちしたあと寝る前はこうして戯れる時間をとってくれる。特にKKはした後の方がいっぱい撫でてくれる。普段はきっと恥ずかしいんだな。
「いつも余裕でずるいなぁ」
「そりゃ、余裕を見せたいから頑張ってんだよ。白鳥と一緒」
「たまには余裕のないKKが見たいな!」
「嫌だね。そんなカッコ悪いところ見せられるか」
「カッコつけなんだからさぁ。たまには僕に甘えたって良いんだよ?」
「いつも甘えてるよ」
小さく囁くように伝えられたそれにドキッとしたのも束の間、軽く唇を重ねられてさらにキュンとしてしまう。
「いつも、ありがとな」
「〜〜〜〜っ!反則!」
「ルールなんかねえだろ」
鼻の上まで毛布をかぶって、楽しそうに笑うその顔をじっと眺める。KKだなぁ。
「まだ寝ないの?」
「寝るか?それなら電気消すぞ」
「ん」
消灯して、一つの狭いベッドに二人で潜り込んで寝る。もう一部屋寝室はあるんだけど、えっちした日はいつもこう。僕が駄々をこねました。KKの手に撫でられるの、好きなんだ。毛布を巻き付けてまたゆったりと髪を撫で付けるように頭を撫でてくれる。いつもこうして撫でてくれて良いのに。
「ねぇ、KK?」
「ぁん?」
「明日は一緒にご飯作ろう」
「おー、何食いたい?」
「いつもの丼!冷蔵庫に端材がいっぱいある」
「冷蔵庫整理か、暇だしやるか」
「僕は買いすぎたじゃがいもをスープにするよ。玉ねぎもあるし、最近暑いからね」
「あ、ビシソワーズ?」
「正解」
「あんな手間暇かかるもん作るのか」
「美味しいんだよ?手間暇かかるから一緒に作りたいの。美味しいもの食べよ?」
「それもそうだな。じゃあ明日は料理三昧ってことで」
前髪をかき上げられる。そして額に柔らかく触れる唇から、ぽわんと温かいものが流れ込む。毎日KKがしてくれる、安眠のまじない。習慣化して、これをしてもらうと僕はもう眠気がすぐくる。
「……おやすみ、けーけー」
「ああ、おやすみ。良い夢見ろよ」
その腕に抱かれて、その力に守られて、整えられたベッドの中で……僕は今日も幸せに眠りにつく。