「日課」「日課」K暁
風呂上がり、寝るまでの時間。少し忙しいとしても、せめて一緒に過ごす時間が欲しい!という暁人の提案で、ソファに座ってその日あったことなどを話す時間をとっている。夕飯のタイミングが重なればその時にも話すのだが、どうやら隣に座って話すことが重要らしい。しっかりと冷房の効いた部屋ですぐ隣で体温を感じながら話すのが良いのだろうか。
「───でね」
「暁人」
「ん、っ……え、なに、どうしたの?」
「したくなった」
すぐ隣でニコニコとしゃべる暁人が可愛くて、ついキスがしたくなった。だからした。したいからした、というだけでつい淡白になってしまうが、暁人はさらに笑みを深めてオレにぐいと寄りかかってくる。
「けーけーのえっち」
「なんでだよ」
言い方といい態度といい、わざとらしく可愛こぶって見せるのもまた、可愛い。弄ばれているのはわかっているが、まぁ可愛いと思うのは自由だろう。
「キスも日課にする?」
「したいのか」
「んー、したいけど、特別感が薄れるのは嫌」
「じゃあしたい時にすれば良いんじゃないか」
「毎日しちゃうよ」
「今はしてないだろ」
「我慢してるから」
「しなくていいんじゃないか?したいなら、すれば良い」
「……日課になっちゃうな」
「良いんじゃないか。日課のキスと、特別なキスがあっても」
滅多にわがままを言わない可愛い恋人のそんな小さなわがままくらい、通してやりたいと思うのも年上の矜持。
寄りかかってきた肩をそのまま抱いて、甘えたいなら甘えれば良い、とこちらからも示す。
「したいことくらい、言ってくれよ。そんなに頼りないか?」
「そんなことない!でも、KKに対してはその……いろいろ、して欲しくなっちゃうから」
「言えばいい、いろいろ。できる限り叶えてやる」
「欲深いって思うよ」
「思ったからなんだ。それでもいいと思うぞ、我慢されるよりずっとマシだ」
我慢の積み重ねは、最後は崩壊が待つ。それなら最初から、言ってくれなきゃ分からない。
「オレは鈍いから、察するとかあんまり得意じゃない。だから、手間だが言ってくれ。オレもちゃんと言葉で伝えるようにするから」
「……うん、じゃあしたいことを言うのも日課にしちゃお」
「日課が増えていくな」
「増えすぎたら減らせばいいじゃん」
「そうだな」
今日は触れていたい日らしい、ぴっとりとくっついてくるのが少し暑いが、まぁ可愛いもんだろう。
日課、なんて名目をつけないと甘えられない、実は不器用な恋人が可愛くてたまらない。それを伝えられないオレも、不器用だな。