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    RoM442244

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    RoM442244

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    K暁の日「匂い」
    人間的に相性の良い相手っていい匂いするらしい。ほんとかな?ほんとだったら、たのしいね。

    「匂い」「匂い」K暁


    ピローミストという存在にたどり着くまで、そう時間はかからなかった。スマホというのは便利だ。
    そろそろ加齢臭を気にしなければならない年齢だなと思っていたし、枕を並べて寝たいという恋人の要望を叶え続けてやるためにも、一手間かけるのは大事だろう。
    「ラベンダー、か」
    目当ての大型雑貨屋でテスターと書かれたスプレーを軽く袖口に吹いてみる。嫌な匂いではないし、強すぎるわけでもない、あくまで軽く香る程度。そして消臭効果もあるらしいというそれを一本買ってみた。
    帰宅するなり、暁人がスンッと鼻を鳴らす。
    「あれ?KK、なんの匂い?」
    「え?」
    「なんか、花?」
    「……?ああ、これか、ここに試しにつけてみたんだ、苦手な匂いじゃないか?」
    袖口を見せると、そこに顔を寄せてスンスンと嗅いでいる。
    「ラベンダーか。何買ったの?」
    「ピローミストってやつだ。最近ほら、その……臭いが気になるから」
    「ふーん、そっか。苦手じゃないから大丈夫だよ」
    「そうか、よかった。今日から使ってみようと思う。安眠効果も期待できるとか書いてあったぞ」
    「あるといいね、効果」
    ベッドサイドにポンと置いたそれ。仕事してくれるといいが。

    数日使い続けて匂いにも慣れてきた頃、確かに枕に自分の匂いがつくまでの期間が長くなっていることに気がついた。ラベンダーの匂いが足されるのもあるのだろう。これなら枕カバーを洗う頻度も上げなくて済みそうだ、と思っていたのに、少し難しい顔をした暁人がスプレーを指差した。
    「あのさ、今日はアレなしでもいい?」
    「うん?いいが、もしかして臭かったか?」
    「いや、そのー……臭くはないよ、ラベンダーの香りは好きだ。でもね、あの、えーと……」
    視線を泳がせ、手元をごにょごにょと遊び、歯切れ悪く言い淀むのをじっと待つ。言いづらいことか?もしかして、ラベンダーの匂いが足されてさらに臭いとかか?やはりおっさん臭いのは誤魔化せてなかったか?
    「やっぱ年には勝てねぇか」
    「えっ?」
    「枕カバー、替えを買って洗濯の頻度上げるよ、悪かったな、嫌な思いさせて」
    「えっ?あっ、KK!そうじゃないんだ!」
    「ん?」
    「あー……えーと……あのね。こんなこと言うの、変態っぽいって思われたら嫌だなと思ってたんだけど、あの……」
    少し目をうろうろとさせながら、恥ずかしそうにやっと口にされた言葉に、ただただ驚いた。
    「ラベンダーは、いい匂いだ。でも、KKの匂いがかき消されちゃって……その、僕の眠りが浅くなっちゃうから、たまにしないで寝て欲しいな、って……あの、気にしてるのに、ごめんね、でも僕もKKの匂いが好きだから、その……」
    「オレ、臭くないか?」
    「加齢臭みたいなのは、僕は感じたことないよ」
    「そうか……」
    まさか、暁人のために買ったものが暁人の眠りを妨げていたなんて。でも臭いは気になるし、消臭効果はありそうだし……そうか!
    「わかった、そしたら朝起きた時にスプレーするようにする。そしたら消臭効果は得られるし、寝る時にはラベンダーの匂いも薄くなってるだろ」
    「いいの?」
    「ああ。オレの可愛い恋人の眠りを妨げてまで気にするもんでもない。なにより、暁人が臭くないって言ってるなら、無理に香りを足すこともないんだ」
    「そっか……はー、よかった、思い切って言ってみるもんだね」
    「オレってそんなに匂うか?」
    「分かんないけど、僕にはすごく落ち着く匂いがするよ」
    「暁人はシャンプーと柔軟剤のいい匂いがする。たまに汗の匂いがすると生きてるなーって思う」
    「なにそれ、僕生きてるよ」
    「知ってる。ほら、寝るぞ」
    「うん」
    男二人で眠れるように奮発して買った大きなベッド。そこに並んで横になり、今日は必要以上にくっついて。オレの胸元に顔を埋めて、納得するまでスンスンと匂いを堪能してるのを好きにさせてやる。
    「んー、ふふ、KKの匂いだ……眠くなるな……」
    「そのまま寝ちまえ。どうせ朝にはゴロゴロ動いてんだから」
    「そうなんだよね、朝までくっついてた試しがない」
    リモコンで電気を消して、引っ付いてくる体をゆるく抱きしめる。ここ最近はラベンダーに占拠されていたベッドだったが、スンッと鼻先に自分ではない匂いがした。
    「あ、暁人の匂いこれか」
    「え?僕の匂い?」
    「なんか、シャンプーとも柔軟剤とも違う匂いがする」
    「へー、くさい?」
    「臭くない。むしろ落ち着く」
    「はは!僕ら相性いいんだねぇ」
    「そりゃいいことだな」
    「いいことだ。ふぁ、ぁ、ねむ」
    「おう、寝ろ寝ろ。オレも寝る」
    「んー……おやすみぃ、けーけー……」
    「ああ、おやすみ、暁人。いい夢見ろよ」
    「んー、ふふ、いい夢見る」
    満足げな笑い声を穏やかに残して、すぅ、とすぐさま寝息が聞こえてくる。めちゃくちゃ眠かったんだろうな。ここのところ眠りが浅かったって言ってたし。
    もう一度スンッと匂いを嗅ぐと、暁人の匂いがした。これは確かに……よく眠れそうだ、ラベンダーよりも。
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