帰れない者と帰れる者犬王はお喋りでピョンピョンとして何かも楽しんでいた。それが羨ましかった。
いつもの場所に軽く琵琶を弾いていると、踊っている最中に犬王が話しかけてきた。
「なあなあ、お前は里帰りなんとやらしないのか?」
「里帰りか…」
ピタリと引くのを止めた。見えない目には幼い頃に見た故郷と海と家族が何故かボヤけて見えなかった。
それを感じたのか踊るのを止めた犬王。
「あれ?仲が悪いのか?」
「いや、一人っ子で両親が居て、見えた頃は素潜りの一番で皆に頼りにされたよ。綺麗な海だったけど潜れば平家の残骸が埋め尽くされていたが少しずつ消えていくような感じだった」
「そういえば素潜り一番と言ってたな」
「うん、その残骸を拾って売って生活できたんだけど最近は売れなくなって魚を獲るしかなくて生活はそこそこだったかな」
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