犬王の色は稽古部屋から犬王の唸りに近い声が聞こえたので向かい戸を開けた。
「どうした、深刻な声で。悩んでいるのか?」
「あ、友有。うるさかったか」
「いや」
足を踏み入れると何か踏んだ。柔らかかったので引っ込まず感触を確かめる。
「これは布か?しかも滑らかだな」
「ああ、これは高級な糸を使った絹だ。透き通っているんだ」
「へえ」
今度は気をつけて絹を払うよう歩き犬王へ。
「沢山あるようだな。色んな色か?」
「そうだ、今度の竜中将に使う色をどれにするか悩んでいるのだ」
犬王は何度か傾げたのか分からなくなっていた。
「…将軍の前だからと悩んでないか?」
「んー…」
友有は犬王だけは不思議と色が見えていて出会った頃から色合わせていない。
「関係ない」
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