牢獄牢獄
重い足を引きずって、また今日も白い扉の前に立つ。本日の9桁のランダムセキュリティコードは、7が三つも続いてる。今日はラッキーかもしれないだなんて到底思えないが、こんなチンケな願掛けすらも少しの慰めになった。慣れた手つきでコードを入力し終わると、赤いフラッシュで撮影され、生体認証が行われる。こればかりは、何度やっても慣れないものだ。
「やあ、今日の調子はどうだい?」
椅子に腰掛け、テーブルにポツンと置かれたマイクをオンにする。なるべく明るい声を意識した。
政府所属の監査官である一文字則宗の問いは、マイクとスピーカーを通じて、透明なアクリルガラスの向こう側に投げかけられた。ガラスの向こうには10畳ほどの真っ白い空間が広がっている。
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