深海魚海の底を見たことはあるか。
海水浴で潜る深さではなく、もっとずっと深く。音も届かず、光もなく、一片の体温すら存在しない。水圧で缶はひしゃげ、人間の肺もぺしゃんこに。そんな海の底を見たことはあるか。
そこは、生命にとって絶望的な環境だ。
まず、水圧と低温に適応しなければならない。暗闇の中でも獲物を取る術を身に着けなければならないし、獲物にならないための術も。生物の本能である生殖の難易度も格段に上がる。
海の底で生きられるのは、そこで生きるために進化した生き物たち。
僅かな光を掴み取るために目は大きく―もしくはごくごく小さく、望遠鏡のように。
時にはチョウチンアンコウのように発光器を備え、獲物を確実に捉えるために口は大きく。
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