米が望む永遠 帰りたくても帰れない夏がある。もう戻れない、無邪気にはしゃいでいたあの頃には。
ライス、君はもう――。
「やっと僕達一緒になれるんだね!念願だった同じ器に盛られるんだ。ドキドキしちゃうな……」
バイクのエンジン音が鳴り響く中、ポリエステルの容器を湿らせながらライスが言った。密閉されているから彼の様子まではわからないけどさっき詰められる前にチラ見した、艶々とした彼の肌を思い出して俺は熱くなる。
俺たちはしがない牛丼屋で出逢った。牛丼の別メニューではあったが、出逢うべく俺たちは生まれてきた。これからウーバーイーツで運ばれ、いざ食を求める人間のもとへ。生まれてから最期まで同じ運命を辿るんだ。これ以上に幸せなことはない。
1929