伏恵衣 デートお題 「デートをする」
CP 伏黒恵×神代恵衣
とある日の朝10時。
動物園のチケットを買って、園内に入る2人。
今日は伏黒と恵衣のデートの日だ。
「恵衣、最初は虎を見るぞ」
「うん」
遡ること数日前。
五条から黒い石のブレスレットが渡された。
伏黒の手首に付けるとしても一回り小さいブレスレット。女性物だ。
「なんですか、これ?」
「呪具だよ、一応。効果は使用者についている呪霊または怨霊を生き物から察知されにくくするだよ」
「なんでまたそんなものを?」
どこからどう見ても普通のブレスレットにしか見えない。
等級もたいして高くはなさそうな呪具。
全くもって伏黒に必要なものには見えない。
「それを恵衣にあげてデート行っておいで」
「なんでですか」
五条いわく、『恵衣は蓮(特級過呪怨霊)のせいで人間以外の生き物や低級の呪霊に逃げられるでしょ?デートらしいデート君たちしてないでしょ。青春を謳歌しなよ。』らしい。
大きなお世話だと伏黒は思いつつもその通りだった。
恵衣は動物が好きだ。
たまにスマホで動物の動画や写真を見ていることを伏黒は知っている。
だが、恵衣は動物に触れることが出来ない。
それは恵衣自身に問題がある訳では無い。
恵衣についている特級過呪怨霊のせいだ。
動物達は特級過呪怨霊を恐れて逃げてしまう。
だから、恵衣は1度も動物に触れたり、近くで見ることが出来ない。
その事を知っている五条は2人のためにわざわざこの呪具を見つけてきた。
「ありがたく使わせてもらいます」
五条から呪具をもらった伏黒はそのまま恵衣を誘った。
最初は色々気にしていた恵衣だったが懸念材料を徹底的に潰したのでデートすることになった。
恵衣に動物園か水族館のどちらに行きたいか聞いたところ動物園になった。
それが数日前のことだ。
伏黒はこの日のために念入りに準備した。
少しでも恵衣が楽しめるように。
「恵、どうして、虎からなの?」
「肉食や大型動物は温かくなる昼から休憩したり、寝たりする。天敵が少なくて落ち着いてすごせるからだ。だから、午前中の涼しい時間に見る方がいいんだ。」
「そう、なんだ。カッコイイ、姿が、見れたら、いいね」
同じ時間に入った他の客は入口にいる動物達から見出している。
その客達をスルーして目的の肉食動物エリアへと向かう。
念の為に動物たちの様子を見るが怯えていたり、逃げる素振りはない。
どうやら呪具は効果を発揮しているようだ。
「恵?」
「なんでもない、それより」
伏黒は恵衣の手を繋いだ。恋人つなぎ。
少しづつではあるが、時間がある時はこうやって少しづつ恋人らしい触れ合いをしている。
そのおかげか伏黒も抵抗感が少なく、恵衣も少しづつではあるが意識してくれていると思う。多分。
「今日は楽しめよ、恵衣」
「……!うん(ニコッ」
最初は肉食動物エリアをまわり、次は大型動物エリアを回った。
少しお昼を過ぎた13時過ぎに動物園内にあるレストランに入った。
まだ人が多かったがなんとか入れた。
オススメの料理を食べ、腹を満たした。
普段は滅多に食べないデザートを頼み、ゆったりと過ごした。
ここまでは順調。
だが、伏黒はここからが本番だと思っている。
今までは見るだけだった動物達。
今から行くエリアは草食動物だ。
時間ももう少しで15時にさしかかる。
おやつタイムという名の触れ合いタイムが設けられている。
今まで逃げられていたから恵衣は一歩下がったところから見ようとする。
今日は恵衣を楽しませるために来たのだから少しでも動物と触れ合いをして欲しい。
伏黒はそう考えていた。
「恵、次は、どこ、行くの?」
「そうだな……」
とりあえずは見るだけの草食動物達を見て回ってから自然と目的の場所である触れ合いエリアについた。
「ほら、行くぞ」
「ま、待って!」
恵衣は伏黒の手を引いて止めた。
少し震えているようだ。
「いやか?」
「ち、違う!そう、じゃなくて、こわがら、せたら、いや、だな、って……」
「……。大丈夫だ。五条先生からもらったこれもある。それに、」
「?」
「俺がいるだろ?」
「……!うん、が、んばる」
2人はお互い強く手をつなぎ、触れ合いエリアに入った。
うさぎやモルモットなどの小動物が多くいた。
子供や家族連れも多い。
うさぎやモルモットは人気でどうしても無理そうだった。
だが、少し離れたところに羊やポニーがいた。
「まずは羊から行くか」
「うん」
羊の元に行き、恵衣が触る前に伏黒が先に触った。
羊を触り、触っても大丈夫だということを見せた。
恵衣もおそるおそる触った。
最初触って、想像とは違う毛の触り心地に恵衣は驚いてすぐに手を離した。
だが、またすぐにおそるおそるではあるが羊に触った。
「ふわふわ、だと、思った、けど、ゴワゴワ、なんだね」
どうやら気に入ったらしく優しく触り続ける恵衣。
(恵衣が動物へのおそれが少しでも減ってよかった)
その後は羊に餌をやったり、ポニーに乗ったりしていると人気だったうさぎやモルモットを触れるようになった。
うさぎやモルモットを触る時にはもう平然としている恵衣。
触れ合いエリアを楽しんだあとは鳥や爬虫類エリアを見たりした2人。
そんなこんなでもう夕方になるころ。
最後にショップに入り、様々なお土産を見て回った。
「恵」
「どうした?」
「脱兎、万象、大蛇が、いるよ」
「ん?」
恵衣が指さしたところにはぬいぐるみが並べられているコーナーだった。
確かにそこには脱兎、万象、大蛇に似たぬいぐるみがあった。
「玉犬、蝦蟇、鵺は、いない、ね」
「流石に動物園にはいないだろ」
「そう、だね」
逆にいうが脱兎、万象、大蛇に似たぬいぐるみがある方がすごいことなのだ。
他の式神達に似ているぬいぐるみがあったらそれはそれで怖いだろう。
「どれかいるか?」
「……。ううん、いい」
「いいのか?」
「うん、恵衣が、いつか、全員、揃える、から」
「そうか」
ショップで動物の形のクッキーを買い、動物園を出た。
明日からまた授業や任務と忙しい日々に戻る。
こんな平和な日なんて滅多にない。
だから、今日恵衣が少しでも楽しいと思っているのか気になる伏黒。
「恵」
「……?どうした?」
「ありがとう、恵衣、とっても、楽しかったよ」
「……それならよかった」
(今はこれでいい。これから少しづつコイツに伝えていく努力を俺がすればいい)