丁容様と隋州の飲み会「俺の嫁が一番可愛い」「汪植ー?いるー?」
「なんだ、唐泛、いきなり」
「隋州来てない?丁容に頼みたいことがあるとかで、こっちに来てるはずなんだ」
「私は会ってないぞ。別棟にいるんじゃないか?仕方ない、一緒に行ってやる」
テクテク
「あ、隋州の馬だ。やはり来てたのか。約束の時間になっても帰ってこないから心配してたんだ」
「全く貴様ら、西廠を何だと思ってる。お前らの城内休憩所ではないのだぞ?」
二人が中を覗こうとしたその時、珍しく丁容の陽気な声が聞こえてきた。
「だから!汪植様がくしゃみした時が超絶可愛いんですよ!クチュンですよ?クチュンって!子猫みたいなんですよ!」
「子猫?いや、子猫に見えてるのお前だけだから!」
「隋州だって、さっき唐泛がご飯食べるのリスみたいで癒されるって言ってたじゃないですか!」
「いや!それは!いや、確かにそうは言ったが!」
「ついつい餌を作ってやりたくなるって!」
「あー、うん、まぁ、そうなんだが……」
唐泛は【子猫かよ!】とからかってやろうと横を見たが、真っ赤な顔をした汪植はいきなり唐泛の腕を引っ張って執務室に戻り、外套を掴むと、
「お前、どうやってここまで来た」
「え?歩いてきたけど……」
「送ってやるから乗れ」
と言って、馬車に乗ってしまった。
唐泛は仕方なく一緒の馬車に乗ったが、汪植は黙ってそっぽを向いたままだ。
「あの……汪植?あの二人、飲んでたよね?」
「いいから、黙って乗ってろ!」
その後は、耳まで真っ赤にしたまま、ずっと黙ったままだった。
約束通り、隋州邸の門前で降ろしてくれたが、そのあとは一瞥もせず、そのまま馬車で何処かへ行ってしまった。
数日後。
汪植と丁容は、調べ物の為に、禁裏の書庫へ出向いていた。
書庫は埃っぽく、当然くしゃみが出そうになるが、この日ばかりは意地でもくしゃみをするものか、と大きな手巾を口と鼻に当てて、汪植は対策を講じていた。
「今日は奥の書架まで、お前が行ってこい」
「どうなさいました?」
「いいから!」
「お探しの資料、こちらで宜しいですか」
「うん、では早速照合していこう」
パラパラ
ま、まずい…鼻がムズムズしてきた…
それにしても、丁容は何故涼しい顔をしていられるのだ?
「皇上驾到〜」
えっ、陛下が書庫に?
二人は跪いた。
「陛下」
「汪植か。どうした、調べものか?」
「はい、陛下。先日ご下命頂きました一件で」
「そうか。では明日辺りには報告出来るな?」
「臣遵旨」
………クチュン
「汪植、そなた、貴妃と同じような可愛いくしゃみをするのだな💕」