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    常夏🐠

    @summmmmmerdayo

    とこなつです┊卍とらふゆ中心に色々と┊R18はワンクッションだったりフォロワー限定だったりします

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    常夏🐠

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    PSYCHO-PASSパロの執行官とら×監視官ふゆパロ┊原作程度のグロ描写があります┊原作見てないと設定解らんと思う

    #とらふゆ

    全部混ぜて黒になるなら(とらふゆ)『エリアストレスの急上昇を確認。当直の監視官は直ちに執行官を連れ、現場へ向かってください』
    「……オレのペヤング」
     チッと舌打ちをして、男――公安局刑事課に所属する監視官・松野千冬は仕方なしに立ち上がった。給湯器の下まで持っていったペヤングをビニール袋に放り込んで机の上に置くと、ジャケットを羽織って小走りに廊下を抜けていく。
     千冬は公安局に勤める監視官だ。シビュラシステムという全知全能と言っていいほど優れたAIによって住民の精神衛生が保たれているこの世界だが、時折精神が不安定となり周囲の人間に害を与える者や、システムに反抗して犯罪を起こす者が現れる。そんな事態が起きた際に現場に急行し、鎮圧をするのが公安局の仕事だった。千冬の属する一係には何人かの同僚がいるが、交代で休みを取っていることもあって今日は二人しか出勤していない。そもそも今日は内勤だけで外勤は三係の持ち回りのはずなのだが、聞けば三係は一時間ほど前に湾岸の方で起きた事件の対処に当たっていて不在とのことだった。
     カモフラージュ用のホロを消し、千冬は赤灯を鳴らしながら高速を移動する。道路を走る車たちは公安局の車が後ろから迫っていることに気付くと、路肩に寄って道を開けてくれる。お陰でスムーズに加速することができた千冬は、運転をコンピュータに任せるとタブレットで事件の資料を開いた。エリアストレスの上昇原因はサイコ=パス色相の濁った女のようだ。何でも客に理不尽なクレームを付けられたことで精神が不安定になった――この程度であればカウンセリングですぐに解決するレベルだが、場所が悪かった。女は今まで街頭スキャンに引っ掛からなかったことが不思議に思うほど色相が悪化しており、店に火を点けたのだ。お陰様で現場は大混乱に陥り、めでたくエリアストレスは急上昇、というわけである。
     幸いテロや複数犯というわけではないので二人でも対処できそうな案件ではあるが、それでも火種を持っている相手に大した装備もなく立ち向かえなどと、上は現場を何だと思っているのか。とは言え仕事なので仕方ないことではあるのだが、と思いつつ千冬はタブレットをしまった。車がゆっくりと減速し、事件の起きた店に入っていく。
     千冬が車を降りると同時に護送車も滑り込んできた。乗っている「犬」が一人だからか、いつもより小型の車だ。千冬が手をかざすと生体認証のロックが解除され、後部座席から一人の男が降りてきた。
    「ったく……分析室にデータ貰いに行くとこだったんだけど」
    「こっちなんかメシ食おうとしてたところですよ。さっさと終わらせましょう、一虎君」
     男――公安局刑事課一係所属の執行官・羽宮一虎は上司である千冬の言葉に「そりゃ残念」とだけ告げる。
     二人は視線を交わすと、現場に到着したドローンに手を伸ばした。蓋が開き、中に並んだ携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーターが起動する。二人がグリップを掴んだ瞬間、青い光が視界に広がった。
    『携帯型心理診断鎮圧執行システム・ドミネーター、起動しました。ユーザー認証――松野千冬監視官。公安局刑事課所属、使用許諾確認。適性ユーザーです』
     淡い光は収束し、銃身に僅かに残る程度になった。ガシャン、と千冬がドミネーターを構えると同時に、一虎も同じようにドミネーターを引き抜く。金色に染めた前髪が夜風に揺れる中、一虎は忌まわしい物でも見るような目で手の中の銃を一瞥した。
    「容疑者は浅岡靖子、二十四歳。元々サイコ=パス色相が濁りやすいタイプでカウンセリングを定期的に受けていたものの、客からの執拗なクレームに耐えかねて店に放火。巻き込まれた従業員や客は現在セラピストが対応中で、浅岡は店の奥に逃げた模様。オレらの任務は彼女の確保、もしくは……」
    「執行、だろ。火ィ点けたとなると犯罪係数は300オーバーしてるんじゃね?」
    「してないことを祈りますよ。行きましょう」
     ふう、と小さく息を吐いて、千冬はドミネーターを手に一虎と共に施設の中へと足を踏み入れる。油か何かを撒きもしたらしく、消防が既に消火した後ではあったが焦げ臭い匂いが残ってしまっていた。店自体はそう広いものではないのだが、他店と共同で使っている倉庫の方が入り組んでいるので探すのは少し厄介そうだ。ライターはまだ持っているようだし、そちらに放火されてはこの後の対応も複雑化する。
    「浅岡さん、いますか? 公安局刑事課です。大人しく投降してくだされば、あなたはまだ社会復帰が可能です。どうかこれ以上、色相を濁らせないでください」
     千冬の言葉に、果たして社会復帰が可能かどうかは不明だろ、と一虎は内心突っ込んだ。先程彼が言ったように、放火までしたとなると浅岡の犯罪係数は執行対象まで上がっている可能性が高い。ノコノコと出てきたが最後二人の握るドミネーターが彼女を射殺すだろうし、浅岡だってそんなこと解っているに違いなかった。だから彼女は物音一つ立てようとしないのだ。
    「……反応なし。どうしましょう、虱潰しに探しますか?」
    「監視官の指示に任すわ」
    「じゃあ、端のドアから順に――ッ一虎君危ない!」
     ドンッ! と勢いよく突き飛ばされたと思ったら、千冬がドミネーターを一虎の背後に向けていた。そこには猛スピードで二人目がけて突っ込んでくるドローンの姿がある。広い倉庫内で荷物を運搬するのに使っているらしい飛行ドローンだ。そう大きくないとはいえ、このスピードで突っ込まれたら最悪の場合致命傷を負いかねない。そんなドローンに向けられたドミネーターは、千冬の瞳を青緑に輝かせると同時に形を変えていく。
    『対象の脅威判定が更新されました。執行モード、デストロイ・デコンポーザー。対象を完全排除します。ご注意ください』
     千冬の手にしたドミネーターがメキメキと変形し、まるで肉食恐竜の口のように開く。そこから放たれたエネルギー弾は一直線にドローンへ向かうと、それを空中で吹き飛ばした。粉々になったドローンの破片がパラパラと地面に落ちていく中、千冬はドミネーターを元の形に戻す。
    「明らかな遠隔操作でしたね」
    「狙われてんな。つーか、監視官が執行官を庇うなっていつも言ってんだろ」
    「庇いますよ。一虎君はオレの執行官なんですから。文句言うなら、次からはオレより先に気付いてください」
     そう言われてしまっては文句の付けようもない。解ったよ、と雑に返し、一虎はドミネーターを握り直すと千冬を庇うようにして歩き出した。
    「ところで千冬、さっきのドローンってこの倉庫内でしか動かせねえタイプのやつだったか?」
    「ええと……、……そうですね。店舗に設置されているタイプのもので、操作は店内でしか行えないと思います」
    「なら決まりだ。浅岡靖子は操作室、もしくは監視カメラのモニタールームにいる」
    「……なるほど。そこなら、オレたちが入ってきたのも解るし、入ってきた相手にドローンをぶつけるのも簡単だ、と」
     そういうこと、と一虎が頷く。千冬は早速分析室に連絡を取って倉庫のマップを送ってもらった。増築を繰り返しているせいで複雑化した倉庫内は移動が面倒であったが、それでも容疑者のいる場所に辿り着けないことはない。しかもこの倉庫は完全な一方通行なため、出入り口を塞いでしまいさえすれば後は追い詰めるだけなのだ。
    「つか、オレらが向かってんの気付いたらまた火ィ点けるか?」
    「だと思って、外からスプリンクラーいじっておいてもらいました。普段の五倍のスピードと量で水が出るように設定したので、火が広がる前に何とかできると思います」
    「流石、仕事早ぇな」
    「……死なせたくないですから」
     ぎゅ、とドミネーターを握り直して千冬が告げる。そんな彼を見下ろしながら、一虎は複雑な気持ちで同じようにドミネーターのグリップに力を入れた。
     脳裏に浮かぶのは十二年前のこと。潜在犯であった自分の前で、同じく潜在犯だった――潜在犯になってしまった男を抱えて泣く千冬。あれだけのことがあっても犯罪係数がまるで上がらない千冬にとって、監視官という職業は天職なのかもしれない。無論、天職だからこそシビュラが彼にこの道を進めたのだが。
     もう二度とあんな事件を起こしてやるものかと思いながら、一虎は千冬の前に立って最後のドアを開ける。ドミネーターを構えながら入った部屋には、浅岡の姿が確かにあった。
    「こ、来ないで……!」
     彼女の手にはライターがある。旧式のオイルライターに指をかけ、浅岡は震えながら二人を睨んだ。一虎がドミネーターをずっと彼女に向けた瞬間、無機質な機械音声が彼の脳内に響く。
    『犯罪係数317、執行対象です。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除してください』
    「……どうする?」
     傍らの上司に小声で尋ねれば、千冬は黒髪の奥で悔しそうに瞳を細めた。シビュラによって判定される「犯罪係数」は、300をオーバーすれば「この世に不要な存在」として死刑判決が下される。かつては一虎も背負った数字だが、下げることができないわけではない。現に一虎の現在の犯罪係数は150前後と、十二年前の三分の一以下にまで下がっている。しかしそれは命を賭してまで一虎を助けてくれた親友や、一虎に手を差し伸べてくれた千冬がいたからだ。この場で即座に浅岡の犯罪係数が下がるということは不可能に等しい。
    「少しだけ待ってください。一虎君、ドミネーターはそのままで」
    「……ん」
     すっと千冬が前に出る。彼はドミネーターを下げると、浅岡の目を真っ直ぐに見つめた。
    「公安局刑事課一係の松野です。あなたの犯罪係数は今300を超えており、このままだと執行対象となります。……カウンセリングに関する資料を見ました。あなたはこの店で働き始めてから、度々悪質なクレーマーに絡まれている。確認を取りましたが、あなたの接客態度に問題はなかった。悪かったのは職場だとオレは判断しています」
    「だ……だから、何だって言うのよ! そんなこと解ってる……わ、私は悪くない! でも、仕方ないじゃない……! シビュラがここで働けって言ったんだから、私は今更よそになんて行けないの!」
    「そんなことはありません。カウンセリングも長期に渡って受診していますし、一度施設に入っていただく形にはなりますが、施設での投薬やメンタルケアが一通り終われば別口からの再就職は十分に可能です。ですから、どうか今は心を落ち着けて、オレたちと一緒にカウンセリング施設に入っていただけませんか」
    「っ……!」
     浅岡の心が揺らいだのは二人とも察した。千冬の落ち着いた口調に、浅岡は希望を見出すことができたのだろう。向けたままのドミネーターて脅威判定を確認すれば、犯罪係数は313に下がっている。とは言え300を割るのは正直厳しいだろうと一虎は思っていた。彼女の犯罪係数が高くなったのは何も今日突然の変化があったわけではない。積み重ねられたクレームによるストレスが今日爆発しただけだ。カウンセリングに何度通ってもぎりぎりのラインを行き来していた犯罪係数は、日常生活が可能なレベルまで下げるのに何年もかかるだろう。
     千冬が潜在犯を見捨てないところを、一虎は好ましいと考えている。自分がこうして彼の部下として過ごせているのも、千冬が諦めなかったお陰だ。とは言え彼の手は誰でも救えるというわけではない。万能では、ないのだ。いくら千冬が一人でも多くの潜在犯を救いたいと考えていても、現実は――シビュラはそれを許してくれない。犯罪係数300は決して簡単に変動するラインではなく、そもそも潜在犯の下限は100で、彼女の数値はその三倍をマークしている。その時点で既に並みの潜在犯とは比較にならない凶悪さを孕んでしまっているということだ。
    「浅岡さん」
     振り絞るように千冬が彼女の名前を呼ぶ。
    「ライターを捨てて。それだけで、あなたは助かるかもしれない」
    「っ……う、あ、あああああ!!!!」
     ガタガタと震えながら彼女は手にしたライターを捨てようと振りかぶって――結局手を離すことはできなかった。ボッ、と重い音がして彼女の手元に火が灯る。近くに積み上げられていた段ボールに火を放ったかと思いきや、浅岡はスカートのポケットから何かを取り出した。
     すぐに千冬が事前に設定しておいたスプリンクラーが大量の水を撒き散らす。さながらゲリラ豪雨のように溢れてきた水で視界が悪くなる中浅岡はゆらりと身体を揺らしながら恨むような目で千冬を睨んだ。
    「無理、無理、無理ぃ……っ! 私なんて……私なんて、また、酷い目に遭うのよ……ッ! 死ね、死ね、死ね死ね死ね!! アンタらも、私と一緒に死ね――!」
    『対象の脅威判定が更新されました。犯罪係数329。執行対象です。執行モード、リーサル・エリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除してください』
    「浅岡さん……!」
    「一緒に……死んでよぉおおおぉッ!!!!」
     左手にライターを、右手にカッターナイフを持ち、火を放ったばかりの女が千冬に向かって突っ込んでくる。ブンッと宙を切るカッターを紙一重で避けた千冬がドミネーターを構えたものの、そのトリガーを引くことは叶わなかった。
     ぐ、と一虎が千冬の襟首を引っ掴んで自分の後ろに引き入れたからだ。片手でドミネーターを持った一虎が冷静に銃口を向ける。メキメキと音を立てて変形していくドミネーターは、社会に不要とされてしまった人間を消し去るための凶悪な形で光を放つ。
     青白い炎がスプリンクラーから放たれる水を掻き分けて浅岡に当たった瞬間、彼女の痩せ細った身体が急激に空気を注入されたかのように膨らんだ。皮膚は熱膨張に耐えられず、ブシュッという残酷な音を立てて破裂する。血管が破れて血が噴き出し、彼女の身体を構成していた臓物が辺りに音を立てて散らばった。生臭い匂いを孕んだそれらから千冬を庇うようにして一虎が腕を広げる。潜在犯でなければ相当にモテていただろう顔が血や肉片でぐちゃぐちゃに汚れたが、彼は冷たい目を浅岡靖子だったものに向けただけだった。
     スプリンクラーの水圧が汚れを落としていく。一虎の足元には真っ赤な血溜まりができていたが、彼はそんなことなどもうどうでもいいとばかりに顔を拭い、千冬の方に向き直った。
    「千冬、怪我してねぇ?」
    「……大丈夫です。一虎君が守ってくれましたから。そのスーツもうダメそうですね」
    「あー、まあ仕方ねえよ。消耗品だろ、こんなん。悪いけど後で新しいの購入申請しといて」
    「もちろんです。……後処理して上がりましょう」
     千冬は水浸しになった床から立ち上がると、デバイスを操作して本部に連絡を入れる。作業用ドローンや消防の要請をする千冬の声を聞きながら、一虎は血溜まりにもう一度視線を投げた。
     彼女には彼女の理由があった。潜在犯のほとんどは、理不尽な社会の軋みに巻き込まれる形でその精神を安定させられずにいる。かく言う一虎だって、トリガーとなったのは両親の不仲や、父親の自分に対する態度だ。それがなければ彼の犯罪係数は100に達することもなかったかもしれない。
    「……でも、起きたことは変えられねえよな」
     死んだ仲間は生き返らないし、100を超えた犯罪係数が99を下回ることもない。だから一虎にできるのは、これからを変えていくことだけだ。この広い街のどこかに身を隠してしまったかつての仲間に銃口を向け、その罪を雪ぐことだけ。そのためなら、自分の命だって差し出していいと思っている。
    「……ではそれで。一虎君、お待たせしました。ドローンすぐに着くそうなので、オレたちは一旦店の入り口まで戻りましょう」
    「了解。あー、早く帰ってシャワー浴びてえ」
    「報告書後ででいいんで、先風呂まで行っちゃってもいいですよ」
    「マジ? サンキュ千冬」
     人を一人消し去ったことなんてなかったかのように振る舞いながら、一虎は元のサイズに戻ったドミネーターを握って歩き出す。
     エリミネーターの光に灼かれる女の顔は頭から離れてはくれないし、存在までをも消すつもりは毛頭ない。きっと今日は夢見だって悪いだろう。そう解っていながら、一虎は傍らの千冬に余計な心配がかからないよう努めて明るく振る舞ってみせる。
     血を被ってドロドロになった革靴から嫌な音がする。水音から逃げるように、一虎は次の一歩を踏み出した。
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    常夏🐠

    DONEPSYCHO-PASSパロの執行官とら×監視官ふゆパロ┊原作程度のグロ描写があります┊原作見てないと設定解らんと思う
    全部混ぜて黒になるなら(とらふゆ)『エリアストレスの急上昇を確認。当直の監視官は直ちに執行官を連れ、現場へ向かってください』
    「……オレのペヤング」
     チッと舌打ちをして、男――公安局刑事課に所属する監視官・松野千冬は仕方なしに立ち上がった。給湯器の下まで持っていったペヤングをビニール袋に放り込んで机の上に置くと、ジャケットを羽織って小走りに廊下を抜けていく。
     千冬は公安局に勤める監視官だ。シビュラシステムという全知全能と言っていいほど優れたAIによって住民の精神衛生が保たれているこの世界だが、時折精神が不安定となり周囲の人間に害を与える者や、システムに反抗して犯罪を起こす者が現れる。そんな事態が起きた際に現場に急行し、鎮圧をするのが公安局の仕事だった。千冬の属する一係には何人かの同僚がいるが、交代で休みを取っていることもあって今日は二人しか出勤していない。そもそも今日は内勤だけで外勤は三係の持ち回りのはずなのだが、聞けば三係は一時間ほど前に湾岸の方で起きた事件の対処に当たっていて不在とのことだった。
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    常夏🐠

    DONEペトショ軸とらふゆ┊とらふゆワンドロライお題「夏の終わりに」「泣き虫」「ファーストキス」┊一虎への恋心を自覚する千冬の話┊※モブ女が出る
    蝉に勝った(ペトショ軸とらふゆ) 一虎君に女ができた。
     それを知ったのは蝉の大合唱がうるさいくらいに聞こえる真夏の日。肌を焦がすような陽射しに照らされながら歩いていたオレは、見知らぬ派手な女と並んで歩く一虎君の姿を街で見かけてしまったのだ。一虎君は暑いからか適当に髪を縛っていて、店にいるときと違って首に飼っているデカい虎を惜しげもなく見せびらかしていた。女はその虎を怖がるでもなく、一虎君と楽しそうに談笑している。
     女の背は160センチくらいで、髪の毛は明るい色をしていた。中坊の頃のオレみたいに金髪というわけではなく、ベージュ色の髪に赤いメッシュが入っているのだ。派手な色をした髪を綺麗に巻いて、腰より少し上まで伸ばしたその女に見覚えはない。XJランドに来店した客、ということは多分ないと思う。そりゃあ一回か二回しか来ていない客であれば顔なんて覚えているわけもないが、とは言えあんなに派手な人が店内にいたら忘れはしないだろう。肩だけでなくヘソまで見えそうな服を着て、サンダルの底はだいぶ分厚い……ってことは、本人の身長は150くらいかもしれなかった。ギャル……とは、ちょっと違うような気がする。ギャルが成長して、ちょっと大人びた感じ? オレの大学の友達にはいなかったタイプ。どっちかって言うと原宿や新宿辺りにいそうなタイプで――すごく、一虎君とお似合いだった。
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