物語をもう一度 南方自身もただでさえ体格のいい方だが、門倉と並ぶと単純に言って倍はかさばる。
それなりに広い室内でも窮屈に感じるというのに、よりによってトイレの狭い個室の中に2人すし詰めになっているのだから、ほんの少し身動きするのもやっとだった。
「さっさと済まそうで。人が来たら面倒や」
門倉の指が、じれったそうにベルトを引っ張る。その手を薄汚い個室の壁に押しつけ、スラックスを下着ごと引き下げた。むき出しになった臀部を強く揉んだ後で、こじ開けるように背後から貫いた。
「あぁっ……!んんんっ……」
時間をかけてほぐす余裕もなく、性急に繋がった割に門倉のそこはさほど抵抗もなく南方を迎え入れてくれた。腰を打ち付けるたびに、雄叫びとも嬌声ともとれる喘ぎ声が個室内に響いた。
「おい門倉、もうちょい声抑えろや」
誰か来ようものなら一切言い訳のできない状況だ。聞こえているのかいないのか、「ううっ……クソ、ああ……」と甘い悲鳴を上げて門倉は身悶える。
学生のころならばいざ知らず、お互いにいい大人で、南方に至ってはつい先日まで少なくとも真っ当な警察官僚だった。それがこんな薄汚れた、狭いトイレで獣のように盛っている。こんな馬鹿みたいな状況に、貪欲な身体はしかし激しく興奮した。門倉といるといつでも、どんなときでも16才になれた。
ゴムもつけず、南方は門倉の中で二回射精した。乱暴で礼儀しらずなペニスを引き抜き、荒々しく肩で息をする。
「なんじゃ、もう仕舞いかよ」
トイレの壁に額を押しつけ、息を乱しながら門倉が笑った。
「オッサンやの。2回が限度か」
「アホ。人が来たら面倒や言うたんはおどれやろ」
出入り口に清掃中の札を出してはきたものの、あまり長時間占領していてはさすがに怪しまれる。
「しゃーないの。お前先に出といてくれや」
情事の名残りをそのまま、南方は早々に個室を追い出された。五分もしないうちに、身支度を整えた門倉がすまし顔で出てきた。
「上等や。さっきまで犯されとったとは思えんの」
なんとなく照れ臭くなり、あえて憎まれ口を叩いた。そんな南方を鼻であしらい、隙のない身のこなしで門倉は歩き始めた。
「ぬかせ。ワシが食うてやったんや」
食いたりんけどの、と歯を見せる男の肩を小突く。
「見とれやお前。堪忍してェ、勘弁してくれェて言わせたるわ」
「ほーん。そら楽しみじゃの」
馬鹿みたいなやりとりを交わしながら、直前までの喧騒が嘘のように2人は日常に戻ってゆく。かつてそうだったように、同じ高さで肩を並べて。
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