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    ant_sub_borw

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    ant_sub_borw

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    テキーラ×エンカク
    ボリバル解放運動のリーダーとして大成した立派になったテキーラ君がロドスに帰ってきてエンカクに可愛がられる話を書きたいとこ(最初と最後)だけ抜粋したSS
    前半はモブ記者によるインタビュー
    後半がイチャコラ本番
    テキーラ君の活躍もいつかちゃんと書きたい
    政党名とかもろもろは捏造あり
    ※歌った歌は「カiタiオiモiイ」イメソンです

    ラ・ヴィーダ思えば彼は、最初から気さくで親切で、そしていまいち人物像の掴めない人だった。
    「タバコを吸っても?」
    そう言って彼は、ボリバルでは最も普及している銘柄の葉巻タバコを懐から取り出した。
    「虫よけの臭いって案外目立つんですよ。化学物質の塊だからかな。結局、これが一番自然で目立たないし、こういう場所には丁度いいんです」
    「以前、熱帯原虫熱にやられたりしたんですか?」
    「刺された同志を見たんです。あれ、かかったらとにかく解熱してウイルスが死ぬのを待つしかないでしょ? 持病あると飲めない解熱剤もあるし、そもそも効かなかったりするし。絶対かかりたくないなってね」
    彼は朗らかな笑い声をたて、葉巻に火を点けた。
    カミーロ・デ・スクレ。某国の資産家・テルミドール氏の後継者としての噂がたっているその青年は、テルミドールが力を入れているボリバル解放運動、いわゆるトゥルーボリバリアンたちによって結成された『民主党(パリティコ・リブレ)』の有力幹部の一人だ。
    暫定政権をずるずると維持している連合政府に対し、民主党は正当な選挙の開催を訴える形で、長きにわたる反政府運動及びボリバル解放戦争をしている。王朝の発言権は裏で糸を引いていたリターニア本国のごたつきによって失われる一方で、未だ衰えてはいないクルビア側は旺盛そのもので、ボリバルの土地の領有権を手放そうとしない。それまでは間接的だったボリバル国民たちへのしわ寄せは連合政府の力の拡大に比例して強まり、今ではかなり直接的に、トゥルーボリバリアンを締め付ける目的での横暴な治世が目立つ。そして、これを看過できないとして立ちあがったレジスタンスたちの勢いも、かつてないほどに強かった。
    「僕は噛みタバコ派なんです」
    「へぇ、珍しい。ボリバル人でも今時、それをやってる人って少ないんだよなぁ」
    「少しでもボリバルのためになればと思って。残念なのは、税関が厳しい国が多いってところですかね。他の国では紙巻で妥協することが多いです」
    「なら、ここではやり放題だ。どうぞ、気にしないで」
    青年の言葉に甘え、懐から噛みタバコの粉末が入った小さな袋を取り出す。記者としてパソコンに向かう時間が長いと、精密機器への煙の影響はどうしても気になるところだ。結局、これを口に含んでキーボードを打つ癖がどうにも止められなくて、噛みタバコを愛用している節がある。何より臭いも目立ちにくいため、タバコの類を一切嗜まない妻の機嫌も損ねない。
    机上の小さな扇風機、換気扇の出す音が響く室内。快適な空調が利いているとは言い難いが、つい最近確保できたゲリラの前線基地に、最低限かつ急ごしらえの居住空間しかないのは当たり前のことだ。
    ただの記者である自分が、そんな場所にまで来られたのは本当に幸運なことだった。
    かねてより、ずっとこの青年の取材をしたかった。青年と呼んで差し支えない年齢かは微妙だが、少なくとも風貌は若々しい、いたって普通の青年に見える金髪のペッロー族。
    彼はいくつか種類のある医師免許のうちの一つと、調剤の資格を持ってボリバルに入国した。政府と民主党の内戦が激化するのにつれ、外国からきた優秀な医師たちが母国へ次々引き上げていくなか、若くて体力もある医療関係者というのはとても歓迎されたことだろう。
    しかしながら、彼の本当の目的はそれではなかった。医療に携わった活動もしていはいるようだが、その実体は外国で必要な経験を積んだのち、ボリバル解放運動に本格的に参加するため戻ってきた、生粋のボリバル人だ。
    カミーロというのも本当の名前ではない、というのは公然の秘密と化していて、周囲の人間などは親愛と敬意の感情を込めて、あえて彼の望む様々な『偽名』で呼びかける。
    最初に彼の噂を聞きつけた時、彼は『リブレ』と呼ばれていた。属する組織と同じ名で呼ばれる彼は間違いなく、誰からもこの運動のキーパーソン、あるいは希望となるに違いないと期待されていたのだろう。かのテルミドール氏に話を聞いた時ですら、そのニックネームで呼ばれていた。
    「リブレという名称の由来について、教えてもらってもいいですか?」
    そう訊ねると、タバコの煙をくゆらせつつ、彼が笑い声をたてる。
    「いやぁ、たいした由来なんてないんですよ。俺、他国(よそ)にいた時バーテンダーとして働いていたこともあって。気前のいい物資が届いた時なんかは、同志たちにカクテルを作ってやったりもするんです。でも俺自身は願掛けで、いつもキューバリブレばっかり飲んでて。だから、からかいとか色々含めて、そう呼ばれだしただけです」
    「あぁ、なるほど。誰かがリーダー・モーガンなんて呼んでいたのもそのせいですか」
    「そいつも恥ずかしいニックネームだな。ラムといえばそれ、っておかげで、なんの苦労もなくあちこち運び込めるのはすごく便利なんだけど」
    そういって無邪気に笑うものの、葉巻の先を切り落として咥え、マッチを擦る一連の仕草は無駄がなく鮮やかだ。ついでに、葉巻の準備に使った小さめのナイフをくるくると手の中で取り回し、体につけたホルダーにノールックで納める手際の良さまで目の当たりとすれば、彼がただの薬剤師などではないことも明らかである。
    自分の使命は取材を通して、ボリバル人のことを世界中に発信することだと考えている。それを最も効率的に、かつ効果的に行うならば、この若者を取材するのがいいという閃きがあった。
    薬剤師のデ・スクレ。陽気なバーテンダーのリーダー・モーガン。そして民主党の若き希望。
    あるは、彼自身は否定し、秘密としたい過去。否定というよりは、それも願掛けか何かだ、と後になってわかったことだった。
    今ゲリラに身を寄せ、各地にある政府軍との内戦に奔走する指導者の一人である彼が、かつて同じこの国で持っていた一つの身分。それは眉唾な噂だったが、信じるに値する根拠も複数あった。資産家テルミドールとの繋がり、ひいてはかの有名な製薬会社ロドス・アイランドとのコネクションあたりの情報を掘れば、否が応でも浮き上がってくる。
    本当の意味で彼がまだ若い一人の青年だった頃の面影と、彼がかつて持っていたというドッグタグには間違いなく刻まれていた、本当の名前とが。







    「久し振りにキューバリブレ以外を飲んだ気分はどうだ?」
    そう言う彼には、ブランデー・クラスタを要求されてそれを作った。彼に与えられた個室、その小さなキッチンコーナーを広々と占拠していた酒類や割り材のジュースなんかを自由に使え、と言われるがままに。
    俺のグラスにはジンライムが注がれている。カクテル言葉なんて、彼はそんなに気にしないんだろうなと思いつつも、気付いてくれたら嬉しいなんて思うのは、年甲斐もなくて恥ずかしい。
    彼に会うまでは、今の自分がつかみ取った立場や責任なんかに相応しいふるまいをしよう、と決めていた。実際ロドスに帰還した直後はそうできていいたけれど、いざ彼を目の前にすると、数年前と変わらない青臭い自分が飛び出してきてしまう。
    そしてそれをしっかり見抜かれて、彼は相変わらず俺を子供扱いした。情けない気持ちと、それすらほんの少し嬉しい気持ちとがない交ぜになって、心臓は常に早鐘を打っている。
    「自分が作ったカクテルを美味しい、って中々言いにくいんだけど」
    そう言うと、彼は喉の奥で笑いながらグラスを空にする。くっきり浮いた綺麗な形の喉仏、その近くに浮き出た鉱石病は、昔よりも大きく広がっていた。
    「おかわりは?」
    自然にそう問いかけると、彼は無言でグラスを差し出してくる。彼の無言が肯定であるのも、昔と変わらない。変わらないのに、彼を蝕む鉱石病は確実に悪化していた。
    グラスを受け取り、ついでに自分の分も作る。彼には同じものを、自分用には新しくテキーラサンライズを。
    「サンセットじゃなくていいのか?」
    何気なく手を動かそうとしたとき、彼がそう言った。つい彼の顔を見ると、意味ありげに笑う目と目が合う。
    「……別に、慰めてほしい気分じゃないから」
    なんとかそう言うと、彼はなおも妖艶に微笑む。
    「なんだ。立派になったと言って、頭を撫でてほしくないのか?」
    その物言いは、彼にしては少し珍しい。けれど悔しいくらいに、俺の内心を言い当てる聡明さは、時間がいくらたとうと変わらないようだ。
    取り出したオレンジジュースを大人しくレモンジュースに持ち帰ると、彼が楽しそうに笑った。
    「同じものを」
    そう言った言葉に従い、二つのグラスを持って彼の側による。彼があごでしゃくった、ベッドの隣に。
    大人しく彼の意思に従うと、大きな手がやや雑に頭を撫でてくる。
    「俺、これでもボリバル民主党の幹部なんだけど」
    「らしいな。可愛げしかなかった子犬の頃が懐かしい」
    「そんなに子供じゃなかっただろ? あの頃だって……。それに、そんな子犬に抱かれてたのはそっちだろ」
    「それもそうだな」
    言いつつ、彼はグラスを空にし、ベッドを寄せてある壁に取りつけた棚に置いた。そしてその側に立てかけてあったギターを拾い上げる。
    彼は多芸で、ピアノが弾けるというのは聞いたことがある。アーツを使う人々が音楽を嗜むのはごく自然なことなので、特に違和感などは感じなかった。残念ながら、演奏を聞く機会はなかったものの。
    ギターも弾けるのかと思うと、少し意外というか驚きの気持ちが強まる。隣の彼はなんてことないようギターを抱きかかえ、軽く弦を鳴らしてみせた。相変わらず綺麗に整え、黒く塗った爪につい視線を奪われる。
    「一曲弾いてくれるの?」
    「特別にな」
    「へぇ……。子供扱いも、悪くないかもね。あんたがらしくないこともしてくれる」
    「そうだろう? 一仕事終えた奴を労ってやるのも、年長者の仕事ってもんだ」
    調律代わりか、適当に音を鳴らしてはネックで弦のテンションを調節しながら、ふと彼の片手がまた俺の頭に伸びてきた。素直に差し出すと、垂れた耳元にそっと唇が触れる。
    こちらはこちらでお返しに首筋に吸い付くと、喉を震わせて笑う彼の声が、皮膚越しの振動として伝わった。
    首筋の鉱石に気まぐれに触れる。昔、こうすると彼が珍しく俺を叱ったっけ、などと回想しながら。
    だが、彼は何も言わなかった。まさかこれまでお見通しなのだろうか。本当に、彼にはいつまでも敵わない。
    「鉱石病の初期症状、結構痛いんだね、あれ」
    あまり深刻になり過ぎないように言ったつもりだったが、感情に反し声がわずかに震えてしまった。
    情けないな、とぼんやり思う。今の自分はもうただのテキーラじゃない。名実ともにトゥルーボリバリアンの代表たち、母国の自由と自立を支えるために身を捧げると決めた身だというのに。
    「こんなものは、経験しなけりゃそれに越したことはない。それ自体が戦士の価値を決めるものではないからな」
    応えた彼の声も、どこか静かで重たかった。
    俺は内戦中に感染した。いつかはこうなると覚悟はしていたため、その瞬間から今に至るまで、さほど絶望を感じたことはない。
    幸いなことに、抑制も上手くできていて、融合率なんかもかなり低く抑えられている。ロドスで学んだことは全て実のあることだったが、鉱石病に関しての知識は群を抜いて価値があった。鉱石病に苦しむ人は、当然ながらボリバルにも大勢いる。同じく前線に出る同志たちが感染する瞬間も、何度も目の当たりにしてきた。
    しかし、病の進んだ彼を見たとき、忘れていたことを思い出したかのように、その病にたいする恐ろしさが腹の底から湧き出た。
    これは不治の病だ。それこそ死ぬまで、ずっと向き合い続けなければならない。いつかボリバルの真の自由と自立がごくごく当たり前のものと定着したとて、その運命は誰にも変えられない。
    「この曲を知ってるか?」
    不意に彼が、何かのメロディをワンフレーズつま弾いた。どこかで聞いたことがあるような気もしたが、曲名やアーティストは思い出せない。
    「聞いたことあるような気がするけど、思い出せないや」
    素直にそう言う。彼は抱えていたギターをしっかりと構えつつ答えた。
    「なら、この機に覚えるといい。色男ぶりがあがるぞ?」
    「別に他の誰も口説く予定はないよ」
    口から出たその言葉は、紛れもない真実だった。
    俺の人生。最愛の人。そんな人が出来るだなんて思わなかったけれど、いつの間にかそうなってしまった。そのこと自体に後悔は微塵もないけれど。
    彼はふ、と柔らかくほほ笑んでみせた。それがあまりに綺麗で、息をするのをつい忘れかけてしまう。
    「だったらこれで、俺を口説いてみろ。もう一度な」
    そう言い放って、彼がギターを弾き始めた。普段の話し声よりわずかに甘くて、優しい彼の歌声がそれに続く。
    ふと視界が歪んだ気がして、誤魔化すようグラスを飲み干す。それから、時々こちらを見る彼を集中して凝視した。一瞬も見逃さないよう、聞き逃さないように。
    そのメロディは穏やかでゆっくりとしていて、全身で感じて覚えろ、と彼が訴えているかのようだった。
    この時の思い出を抱いて、そしてずっと忘れるなと言わんばかりに。
    彼はいつか、自分の傭兵としての名以外を後世に残すことに、さほど興味はないと言っていた。
    そんな彼が俺に『思い出』を残してくれるつもりになったことは、きっと何より明確な、俺の想いへの答えだったに違いない。

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    ant_sub_borw

    DOODLEmhykの各国の魔法使いたちがFate世界のアライメントを持ったらどうなるだろう、という妄想メモを単にまとめたものです(無駄に長い)
    キャラの解釈を深めるためという意味でも考えたものです
    あくまで独断と偏見、未履修のエピソードもある中での選定です
    異論は認めます。
    賢者の魔法使いたちの属性についての考察(妄想)・アライメントとは?
    一言でそのキャラクターの性格、人格、価値観、信念や信条を表す属性と、そのキャラクターが生前どんな偉業を成したか、どんな人生あるいは物語を歩んだかなどを考慮したうえで振り分けられるパラメーターのうちの一つ。
    細かく説明すると非常に長くなるので割愛。
    『善』とつくからいいひと、『悪』とつくから悪人、のような単純な指針ではないことだけは確かです。

    ・アライメントの組み合わせ
    『秩序』『中立』『混沌』/『善』『中庸』『悪』の組み合わせで9パターンあります。
    今回はさらに『天』『地』『人』『星』も加えました。
    おおまかに『天』は神様、それに連なるもの。『地』は各国に根付いた物語に出てくるような英雄。『人』は生前に人でありながらすばらしい才能や功績を認められた人物。『星』は人類が作り上げた歴史の中でその技術や知識といったものに大きな進歩を与えるような功績を持ったもの。
    19391

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