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    ant_sub_borw

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    テスデイ
    神の伝承保菌者になった転生デイビットくんの話の作業進捗

    進捗#1『お前に紐づいた二つの因果の話をしよう。まずは一つ目、お前がこの世界に生まれてくる前、純然たる魂が経験してきた前世の話だ』
    頭の中に直接語り掛けるように、どこからともかく聞こえてくる声。
    声の主が誰であるかは、しかし明確ではあった。目の前で頭を持ち上げ、時折ちろちろと舌を出している蛇。その蛇が自分に話しかけているのだと直感的にわかっていた。
    だが、話の内容はそもそもわからず、理解する気もない。蛇もそれは割り切っているようだった。何せ話しかけている相手は、ようやく自力で座ることができるようになった程度の赤ん坊である。
    『お前はこの世に生まれおちる前、高潔なる戦争を戦い抜いた戦士だった。いまその体に覚えがなくとも、観測された記憶は全てお前の中に眠っている。これは来るべき時がくれば、おのずと紐解かれるだろう』
    蛇の胴体は長く、赤子をぐるりと取り囲んでもまだ余るほどだった。赤ん坊を中心にとぐろをまき、柔らかい頬に頭を寄せる。
    『二つ目は、その心臓に絡みついた神の繊維についてだ。それは神の存在、その最も起源に近い姿の一部となる。お前の心臓には厄介な縁がこびり付いているからな。繊維はただの繊維として、お前の肉体に寄生しているのみだが、加護くらいは発揮していることだろう。そしてお前の中に眠る記憶同様、いずれその繊維を通じて、神の持つ全能に接続できるようになる。神が司る全てを知り、全てを能い、手法と手段とを整えれば、全てを掌握することも可能だ』
    淡々と語りかけられている赤ん坊は、じっと蛇を見つめている。
    話の内容はわからずとも、その存在が発する懐かしさだけは、はっきりと感じ取っていた。
    例えば母親と父親、自分を庇護し愛してくれる存在に抱く親愛。ともすればそれよりももっと深く、濃いつながりのようだ、と。
    しかし赤ん坊の興味はその不思議な感覚よりも、紐のような不思議な体の作りにそれる。
    未だ頭の中の声は続いていたが、臆することなく蛇の体を鷲掴みにすると、持ち上げたり床に落としてみたりかじってみたりと、気ままに遊び始めた。
    『ゆえにお前は……おい、度胸のある奴だとはわかっちゃいたが、にしても怖いもの知らずすぎるだろ。神とか以前に蛇だぞ』
    かじられた辺りで流石に狼狽えたようで、蛇は諫めるように赤ん坊の額を頭部で小突く。しかしとうの本人は、遊んでもらっていると勘違いでもしているのか、無邪気に笑顔を見せるだけだった。
    『まぁ、いいか……。いますぐどうのって話でもない。筋を通す意味で、ちょっと会いにきてみただけだからな』
    蛇は威厳を取り繕うのをやめたようで、赤ん坊が自分の体を玩具にするのを諦めたように見ていた。
    しかしそう長く時間はとらず、小さな手からするりと抜け出て距離を置く。離れた場所では、赤ん坊の『今の名前』を呼ぶ母親の声がしていた。
    するすると床を這い、一度だけ振り向く。大きく開かれた紫色の瞳がじっとこちらを見ているのを確認してから、再び床を這って屋外へと出て行った。
    『じゃあな、相棒。また会える日を楽しみにしてるぜ』
    去ってゆく蛇の姿を、取り残された赤ん坊はただじっと見つめていた。慌てた様子で近づいてきた母親に抱き上げられても構わずに。
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    akira_luce

    DONE七夕の時にあげた丹穹。

    星核の力を使い果たし機能を停止(眠りについた)した穹。そんな穹を救うために丹恒は数多の星に足を運び彼を救う方法を探した。
    しかしどれだけ経っても救う手立ては見つからない。時間の流れは残酷で、丹恒の記憶の中から少しづつ穹の声がこぼれ落ちていく。
    遂に穹の声が思い出せなくなった頃、ある星で条件が整った特別な日に願い事をすると願いが叶うという伝承を聞いた丹恒は、その星の人々から笹を譲り受け目覚めぬ穹の傍に飾ることにした。その日が来るまで短冊に願いを込めていく丹恒。
    そしてその日は来た。流星群とその星では百年ぶりの晴天の七夕。星々の逢瀬が叶う日。

    ───声が聞きたい。名前を呼んで欲しい。目覚めて欲しい。……叶うなら、また一緒に旅をしたい。

    ささやかな祈りのような願いを胸に秘めた丹恒の瞳から涙がこぼれ、穹の頬の落ちる。
    その時、穹の瞼が震えゆっくりと開かれていくのを丹恒は見た。
    一番星のように煌めく金色が丹恒を見つめると、丹恒の瞳から涙が溢れる。
    それは悲しみからではなく大切な人に再び逢えたことへの喜びの涙だった。
    「丹恒」と名前を呼ぶ声が心に染み込んでいく。温かく、懐かしく、愛おしい声…。


    ずっと聞こえなかった記憶の中の声も、今は鮮明に聴こえる。
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