作成途中最近ニキの様子がおかしい、いや正確にはまるで飢えたような様子を見せるようになった
と言った方がいいか
勿論ニキが燃費が悪く人よりエネルギーが必要だと言う事は理解している。
だが、一応ニキにも満腹感というものがあり一日の半分以上は飢えているとはいえニキとていつも腹が空いている訳じゃない
「……その筈、なんだけどなァ?」
ぽつり呟く
ここの所、じっとりとした視線をニキから感じるようになった、それもニキの腹は満たされている筈なのにだ
初めはお腹がすいたのかと思いおやつや軽食なんかを口に突っ込んでいたがなにやら釈然としないような顔したままである事が続き、それが空腹から来るものではないという事に俺が気付くのは早かったと思う。
そしてその視線がほかの何物でもない自分に向けられたものだと認識した途端背筋にぞくりと肌が粟立った
一心に注がれる熱い視線、ビリビリと身体を走る甘い痺れ、見詰められればどんなオンナだってオトせるようなそんな瞳
勘弁して欲しい、あんな視線を所構わず向けられたらこっちまで引きずられて変な気分になっちまうじゃねェか………
気を持ち直すように小さく息を吐いて携帯で今が何時になったかを確認する
少し早いが振り付けの合わせと調整の為の練習時間になっていた
「ちょっと気が向かねェけど、部屋に入っとくとしますか……」
頻繁に感じるようになったあの視線、またあの視線を向けられると思うと足が重くなるような気がするが、だからと言ってオシゴトに支障の来すようならそれこそ、だ
ニキに性欲なんかあるとは思わなかった、ぶっちゃけ俺を抱くなんて、ニキはそんな気になるはずなんてないって油断してたんだ
だからきっと俺が主体になって動く事になるってそんな風に思ってた
所がどうだ、ニキはまるで飢えたように見てくる上にそんな風に求められるのが嫌じゃない俺が居る、抱かれても良い、なんて
そんな事本人に言える訳もないし俺のプライドも許さない
一体俺にどうしろってんだよ………
***
「さてさて、これであらかた準備できたな?」
部屋のモップ掛けをしスマホに付けるスピーカーを準備しあとはユニット面々を待つだけだ、1人で先に練習するってのでもいいがそれは"天城燐音"に相応しくないだろ
しんとしたダンスルームの壁に身を預けニュースアプリを開く、日々目まぐるしく流行の変わる世界に身を置いているという自覚があるので空いた時間に情報を取り入れるようにしている
そうしなければすぐ流行りに置いてかれてちまうからだ、やはり流行りというものは把握しておいて損は無い、何かと話題に出来るしな、ただ、最近は身が入ってないが
何せ最近は何をしててもふとニキのあの視線に思考を邪魔される
熱くて粘っこくて甘い、蜂蜜のような視線に身の内を焦がされて溶け出してしまそうなそんな感覚に襲われる
これ程ニキのアパートを出て寮に入ってて良かったと思う日はないだろう、ただコレに気付いてからはニキを避けがちになってる自覚
があるからそろそろちゃんと覚悟決めねぇといけないってことは分かってるが…………
そう、分かってるんだ
俺が覚悟を決めれば解決するような些末な問題だ、そんな事は分かってる
分かってるからと言って受け入れられるかはまた別問題だけどな!?
考えてもみろ!俺はニキをリードする気でいたんだぞ?
抱かれる覚悟決めろだ?無理だろ!
だって俺が抱く方だと思ってた訳だし!
ぐるぐると幾度となく思考した事だがそれでも踏ん切りがつかない