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    青汁苦瓜

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    青汁苦瓜

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    うっすら両片思い時空かもしれないアイ光♂ 星芒祭話。
    22年の星芒祭イベントのネタバレがあります。

    光を男性想定で書いていますが、名前と一人称と種族を明確にはしていないので、
    性別はどちらでも読めるかもしれないです。何なら今回は話してすらいない。

    ##アイ光♂

    麝香豌豆/アイ光♂ カヌ・エとの会合も終わり、皇都へと帰ってきた頃にはすっかり夜も更けて人もまばらだった。もみの木や外壁に取り付けられた電飾と街灯が、どこか暖かく暗がりを照らす街中を眺めながら邸へ帰れば、もはや家族といって相違ない老執事と老猫がアイメリクを出迎えた。
     足元へ近寄ったかと思えば、グリーブとサバトンから漂う冷気にそろりと身を翻す老猫に苦笑しつつ、コートと緋色の衣が入れられた包みを老執事へと渡す。そのまま武具を保管している部屋へ入り、家宝の剣と武具を取り払い、それぞれを棚の所定の位置へと戻した。普段であれば使用人に任せているのだが、彼はとうに仕事を終え帰路についている。かといって住み込みで仕えているとはいえ、老いさらばえて久しい執事に冷たく重い武具を持たせるのは少々酷と言えよう。
     文字通り重荷が取れ、軽くなった足取りで既に支度が済んでいるバスルームへと向かい、衣服を脱げばすっかり冷えで鳥肌が立っていた。疲労を洗い流すように身体を清め、いまだ白い湯気を立ち上らせている湯船へと浸かれば、触れた側から氷を溶かすように程よい熱が身体中に染み渡る。
     神殿騎士団総長と貴族院議長の二足の草鞋を履くアイメリクにとって、湯船に浸かることは心身共に安らげる貴重な時間だ。心地良い湯に包まれ、人心地が着いたように息を吐き出せば自然と今日の出来事を思い出していた。

     タイミングが良かったのであろう、会合の為にグリダニアに訪れれば、街中の至る所に雪だるまやイミテーションのプレゼント箱、木々や外壁に飾り付けられた電飾ですっかり彩られており、言外に星芒祭が行われる事をありありと語っている。発祥の地に生まれた身として、会合の合間を縫ってではあるが、隣国の子供たちにプレゼントを渡したいと実行委員へ手伝いを申し出れば、驚きつつも快諾してくれた。
     遠い北洋の地から訪れたヴィエラの准教授と幻影を操るトナカイが、余興として子供たちへ輝かしい幻影を見せた後に聖人の従者がプレゼントを渡す。
    そういった段取りのもと、余興が終わるタイミングを見計らっていたアイメリクは、ヴィエラの青年の隣に見知った姿を見つけ、胸の内が仄かに浮き立った。

     かの竜史戦争を終結に導いた友──冒険者も、星芒祭の手伝いをしていたのだ。

     余興も終わり、子供へと声をかけ近付いたところ、声の存在に気づいたのであろう冒険者がアイメリクへと視線を向けると少し目を見開き、緋色の衣をじっと見つめていた。普段は蒼色を基調とした装いをしている男が、従者の装いとはいえ別の色を身に纏う姿が物珍しいのだろう。
     物静かではあるが存外考えている事が表に出やすい冒険者の、不思議そうに目をまん丸にした表情に思わず吹き出しそうになった事は心の内に秘めておく。

     それにしても、思わぬところで会えるとは。そう独り言つ声色は喜びに染まっていた。陰謀に巻き込まれ、フォルタン家に保護される形でイシュガルドへ滞在していた時期はあれど、元来自由の翼を持つ身であり、世界を股にかけて旅を続ける冒険者と偶然出会う事など、非常に稀と言って良いだろう。
     食事会を経てからというもの、アイメリクの旅の話を聞きたいという細やかな願いを叶えるかのように、不定期ではあるが冒険者は手紙を、更に言えば行事ごとが近づけばそれに因んだ贈り物も添えて送り続けていた。そうして今でも続いている文通は、既に実際に会う回数をとっくに上回っており、アイメリクは届けられた手紙を宝物のように木彫細工の箱へと仕舞っている。
     幸い明日の議会は午後から開かれる予定であり、騎士団での書類仕事も既にあらかた片付けていた為、少しの夜更かしは許されるであろう。床に就く前にでも仕舞った手紙を読み返そうと、やや急いだように湯船から上がり、程よく暖まった身体を伝う水滴を拭い、用意されていた寝巻着を身に纏う。

     自室へと戻れば、変わり映えのない机の上に見慣れない物が置かれていた。机へと近付いてみれば、柔らかな薄水色の箱に鮮やかな蒼色のラッピングリボンが飾り付けられており、まるで聖人の従者が子供たちへ贈るプレゼントのようで、虚を突かれたようにアイメリクの目が見開く。
     部屋の管理を任せている老執事からは何も伝えられてはいない為、神妙な面持ちでラッピングリボンを解き、蓋を開けてみれば、中には黄金色の液体で満たされた瓶と紙袋が入っており、その上には一枚のメッセージカードが乗せられていた。カードを手に取り、金の枠組みと隅に小さくツリーのシルエットが描かれた、シンプルながらも品の良いデザインの中心。

    『聖人の従者からの贈り物です』

     そう一言だけ、急いで書かれたのであろうそれは、インク掠れで少し汚れていた。

    「名を書き忘れているではないか……」

     見覚えのある筆跡に、アイメリクの唇は柔らかく弧を描く。カードを机の上に置き、瓶を手に取れば、中の黄金色の液体がとろりと光を反射する。取り付けられた簡素なタグには、バーチシロップと共に製作者の銘が記載されており、紙袋のほうにも同様にタグが取り付けられ、こちらはジンジャーブレッドのようだ。商品として納品している物と同様のものなのだろう、流石にそこはしっかりしているようで思わず吹き出してしまった。
     持っていた瓶を箱の中に戻し、再度蓋を被せる。既に贈る側となって久しい星芒祭の時期に、こうして贈り物をされるというのは存外心が暖まり、遠い子供の頃の懐かしさが蘇る。
     引き出しから木彫細工の箱を取り出し、送られてきた手紙と同様に、メッセージカードを大事そうに箱の中へと仕舞う。今頃かの者もどこか遠い地で星芒祭を満喫しているのだろうか?そう考えながら、アイメリクは床へ就いた。

     翌朝、件の箱について老執事へと伝えれば、目を緩く細め、皺をさらに深めさせた。
     聞けば、昨日の夕方ごろに、邸の主人であるアイメリクが不在である事を承知の上で、せっかくの星芒祭だからと、大事そうに箱を抱えた冒険者が訪ねてきたそうだ。丁度グリダニアで出会った後に皇都へと向かったのだろう。北方の地ではやや薄着と言える服装のせいか、すっかり冷えで鼻と頬が赤く染まり、見かねた老執事が暖まっていってはどうかと邸内へと案内しようとしたが、すぐここを発つからと、半ば押し付けるように箱を渡されたという。

    「それで、かの者は何か言っていただろうか?」
    「ええ、普段の蒼色の方が良いと仰っておりましたね」
    「ふふ、やはりそう思っていたのか」

     実のところ、アイメリク自身も緋色の衣を纏う事に違和感を感じていたのだが、それは冒険者も同じだったのだろう。何とも言いづらい、曖昧な笑みを浮かべていた事を思い出し、くつくつと喉が鳴る。

    「いつか、茶の続きを共にしたいものだな……」

     あの贈り物は確かに心のうちが弾むほど嬉しいものであり、だからこそ寂寥せきりょうさを感じるも、それを飲み干すように、いまだ湯気の立ち上るティーカップの縁へと口付ける。
     飲み干した茶は爽やかな木々の香りとほんの少しの酸味を含んだ甘さで舌を潤し、心のうちを見透かしたかのようにただただ柔らかいものだった。
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