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    HonD

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    尾鯉に狂わせられたモブの話(モブ青年の描写が多めなので注意)(現パロ)

    図書館ではお静かに「え」

     目の前でおもむろにキスをしようとする尾形と鯉登を見て、青年は間抜けな声をあげるしかできなかった。

    ******************

     時刻も夕方になろうという頃、青年はゼミで提出するレポートのために大学の図書館を訪れていた。静かな空間いっぱいに広がる紙の匂いにうんざりしつつ、奥にある階段で二階に上がる。一階と違い専門的な資料が多いからか、案の定自分以外に生徒はほとんど見当たらなかった。本の整理をしている司書も今はいないようで、とりあえず適当にあたりをつけた本を数冊引っ張り出す。
    (いつも通りそれっぽい文章を抜き出して、つぎはぎすれば良いだろ……)
     青年はそんなことを思いながら、選んだ本の内容を軽く吟味するために近くの机に座った。彼は決して勉学に熱心な生徒では無かったが、授業に対して不真面目にもなりきれない、いたって“普通”の怠惰な生徒だった。

    「――だから、――……」

    (……?)
     本をパラパラとめくっていると不意に聞いたことのある声が耳に入り、思わず顔を上げる。
    「――もういい。勝手にしろ」
     呆れたような声音とともに本棚の影から現れたのは、褐色肌と濡れ羽色の髪が目を引く同学年の有名人――鯉登音之進だった。
    「あ……」
     その姿に思わず声を漏らすと、鯉登は机に座る青年の方に顔を向けた。黒い瞳に射抜かれてドキリとする。
     すらりとした長身に整った顔立ち。常に凛とした佇まいで真剣な面持ちをしていることが多く、色々な意味で話題に事欠かない人物だ。鶴見教授の授業で一緒になったことはあるが、話をしたことはもちろんのこと、視線を交わしたことすら無い。
     そんな遠い世界の人間がすぐ目の前にいるという事実に圧倒されて青年が固まっていると、鯉登は特徴的な眉毛を少しだけ下げて申し訳なさそうな顔をした。
    「すまない、うるさくしたな」
    「えっ! あ、いやっ、大丈夫!! 全然気にしなっ……」
     有名人に突然声をかけられた緊張のあまり思わず大声で返事をしてしまったが、鯉登が驚いたようにこちらを見ているのに気付き、途中でハッと片手で口を覆う。
     しまった、自分の方がよっぽどうるさいではないか。彼に軽蔑されてしまっただろうか――そう内心で後悔していると、鯉登は目を細めてふっと笑い、
    「共犯だな」
    と言って青年のはす向かいの席に座った。
    (すげー……こいつって俺なんかにも笑うんだ……)
     鯉登が集中して本を読んでいるのを良いことに、ちらちらと彼の顔を盗み見る。窓から入り込んでくる夕陽の色が彼を染め上げていて、さながら美術館に飾られている神秘的な彫像のような美しさだった。

     青年は、先ほどの笑顔を思い浮かべる。

     鯉登の口角が上がるのにつられて頬骨が動き、涼しげな瞳を縁取っていた瞼がきゅっと細められた一連の流れを頭の中で反芻した。
     自分に向けられたあの表情は少しばかりのあどけなさが感じられて、いつもの澄ました顔とは全く違うものだった。そうだ、あの笑顔は間違いなく自分だけに向けられていたのだ。たったそれだけで、青年は自分が特別な、選ばれた存在になったかのような錯覚を覚えた――


    「鯉登」
    「ひっ!?」
     自分のすぐ近くから地を這うような声が聞こえてきて、思わず小さな悲鳴をあげる。先ほどまでの悶々とした思考が図書館の空気に霧散した。声が聞こえたほうに顔を向けると、そこにはまるで猫のような黒く大きない瞳を持った男が立っていて、ロウのような血の気を失った顔で無表情に鯉登のほうを見ている。顎にはうっすらと傷跡が残っており、どことなく危険な雰囲気を漂わせていた。学校内で見たことがない――少なくとも青年は覚えていない男だったが、学生証でしか入れない図書館にいるということはここの学生なのだろう。
    「……なんだ、尾形」
     呼びかけられた当人である鯉登は本から顔を上げることすらせず、やや怒ったような声音で返事をする。それでも“尾形”と呼ばれた人物は特に表情を動かすことなく言葉を続けた。
    「帰るぞ」
    「勝手に帰れば良い。子供の私に付き合う義理は無いのだろう」
    (……あれっ? もしかして喧嘩してんのか……?)
     不機嫌を隠そうともしない鯉登の態度に青年は居心地の悪さを覚え、退席した方が良いだろうかと視線を彷徨わせる。尾形のほうをちらりと盗み見たが、彼の真っ黒な瞳はこちらを一瞬たりとも見ない。この場で鯉登以外には一切の興味を持っていないかのようだった。青年がぞっとしつつも尾形から視線を外せないでいると、彼は無機質な顔をゆっくりと動かし、口元に笑みを浮かべた。しかしそれは先ほどの鯉登のような人間みのある笑顔ではなく、空恐ろしいほどに酷薄な笑みだった。
    「音之進、拗ねるなよ……」
     尾形が艶のある声でそう言いながら鯉登のすぐそばまで歩み寄る。そして彼の隣の椅子に座って足を組み、まるで恋人にするかのように自然と彼は鯉登の肩を抱き寄せ顔を近づけた。

    「え」
     目の前でおもむろにキスをしようとする尾形と鯉登に、青年は間抜けな声をあげるしかできなかった。

    「馬鹿にすっな!」
     青年は突然のことに驚いて動けずにいたが、鯉登は唇が完全に触れ合う直前に自身の片手を間に割り込ませ、尾形の顔を鷲掴みにする。
    「何なんだ、お前は。私を振り回すのがそんなに楽しいか?」
    「たのひい」
     尾形は即答したが、鯉登の手ががっちりと顔を覆っているせいで唇の一部が思うように動かせず、少し間抜けな響きで耳に届いた。それを聞くと鯉登はふんっと苛立たし気に鼻を鳴らして尾形の顔を押し返す。
    「もういい、私は帰る。ついてくるなよ」
    「一人で帰れんのか、ボンボン」
     先ほどの甘い態度から一転して、小馬鹿にしたような態度をあからさまにし始めた尾形を完全に無視し、鯉登は席を立つ。机の上に置いてあった自分のカバンを背負って、先ほどまで読んでいた本を近くの返却ワゴンに置いて帰ろうとした――が、思い出したかのように青年の方を振り返った。
    「うるさくして悪かったな」
     そう言って微笑んで、今度こそ颯爽と階段を下って帰っていく。青年が呆然とそれを見つめていると、くつくつと笑う声が近くから聞こえた。
    「揶揄うと面白いんだよ、あいつ」
     片手で髪を撫でつけながら、尾形がこちらを見もせずに言う。愉快で仕方がないといったようにニヤニヤと笑っていたが、その瞳はどろりと濁っていて底冷えのするような不気味さを秘めていた。

    「…………」

     青年はそれからどう帰ったのか、全く覚えていない。

    ******************

    (鯉登……)
     自室のベッドに寝転がりながら、今日のことを思い出す。

     遠い世界に住む存在だと思っていた人物が自分に向けて微笑んだこと。
     本を読むその美しい顔に、伏せた睫毛が影を作っていたこと。
     そして――

     ――音之進、拗ねるなよ……

     あの男は一体誰なのだろうか。
     鯉登が怒りを隠すことなくぶつけたにも関わらず、全く臆さずに鯉登を下の名前で呼んでみせた男。
     尾形と呼ばれていたが、聞きなじみのある名前ではない。多くの生徒を抱えている大学だから知らない名前があったとしても何ら不思議ではないが、鯉登と近しい間柄であることは明らかだ。

    (……音之進、か……)

     ――揶揄うと面白いんだよ、あいつ。

     あの言葉が頭から離れない。
     まるでそれは「お前もやってみろ」とでも言いたげな響きを含んでいて、悪魔の囁きのような甘やかさを持って青年の脳を支配する。呼吸が自然と荒くなり、青年はいつの間にか尾形の顔を自分の顔に挿げ替えて、鯉登に近付く空想をしていた。耳元でささやいて、肩を引き寄せ、顔を近づけ、そして――

    (音之進……)

     まるで清らかな天使を自分の手で汚していくような、そんな背徳感を伴った興奮が彼の神経を焼き焦がしていった。

    ******************

     次の日、青年は再び図書館に来ていた。
     昨日に引き続きレポートの資料探しのため――というのは建前で、鯉登にまた会えるのではないか、というのが本音だ。実際、昨日の鯉登は暇つぶしではなく何か目的を持って本を探しているようだったから、また今日も図書館に来る確率は高い。
    (昨日は色々あって本が読めなかったみたいだし……もしまた会えたら何て話しかけよう?)
     自然とにやつく口を抑え、昨日と同じく図書館の階段を上って二階へと向かった。

     そうだ、また今日もあの尾形とかいうやつが来てたら俺が鯉登を守ってあげよう。
     俺はあんな男とは違って鯉登を大事にできる。
     いや、俺にしかできない。
     鯉登があんなふうに微笑むことを知っているのは俺しかいない――

     青年が自分の思考をぐるぐると煮詰めながら昨日と同じ机へと向かうと、そこには鯉登が空想の通り、いやそれ以上の美しい実体感を持って座っていた。二階には他に誰もいないようで、昨日以上にがらんとしている。まるで二人きりになれるように神様が取り計らってくれたみたいだ、と青年は思った。
     鯉登がふと視線をあげる。階段付近で突っ立っている青年に気付いたようで、微笑みながら軽く会釈をした。そんな動作ひとつで、青年は顔に熱が集まっていくのを感じる。

     ――あの鯉登が、自分に挨拶をしてくれた。

     まるで天に昇るかのような心地になって、早足で鯉登に近付いていく。
    「こ、こ、鯉登」
     緊張と興奮でどもりながら青年は鯉登に声をかけると、鯉登は顔を上げて上目遣いになりながら青年を見つめた。その少し濡れた黒色の瞳が、青年のうわずった気持ちを加速させる。
    「えっと、今日も来てたんだね。お、俺もさぁ、昨日あの後調べものできなくて、すぐ帰っちゃったから」
     べらべらと喋りかける青年に眉をひそめていた鯉登であったが、その言葉にハッとして、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
    「……昨日は巻き込んでしまってすまなかった。しかし図書館では……」
    「いやいや大丈夫だよ! 俺は全然大丈夫! むしろあんなことがあって、鯉登のほうが心配だよ!」
    「私は平気だ。だから少し声を……」
     鯉登が少し苛立たしげに制止の声をかけようとしているのにも気づかず、むしろ青年は鯉登と途切れることなく会話ができていることにのぼせあがり、更に言葉を重ねる。
    「もしかして鯉登ってオガタとかいうやつに絡まれてる? あいつってストーカーなの?」
    「は?」
    「昨日なんかさ、こうやって鯉登の隣に座って」
     勢いを付けて鯉登の隣にある椅子を引いてどかっと座る。露骨に嫌悪の表情を浮かべる鯉登に気付かず、青年はベッドの上での空想のまま、昨日の尾形のように右腕を鯉登の肩に伸ばした。
    「鯉登は嫌がってるのにさ、こんなふうにキスしようとして――」


     ――顔の右半分が燃えるように熱い。

     青年がそう感じたのも一瞬で、次の瞬間には強い衝撃が全身を襲った。それと同時に何かがぶつかるような大きい音が静かな図書館に響き、いつの間にか低くなった視界に横倒しになった椅子が映る。それを見てようやっと自分が鯉登に殴られて吹っ飛ばされたのだと理解した。
    「な、……な」
     ずきずきと痛みを訴える右頬を抑えながら青年は驚愕のあまり口をパクパクとさせるしかない。先ほどまでの茹っていた頭はすっかりと冷え、もはやまともな言葉を紡げなくなっていた。そんな哀れな男を見下ろして、ふと鯉登はおや、というような表情をする。知り合いを強かに殴ったばかりとは思えないほど、それは日常の延長線上にあるかのような稚い表情だった。
    「貴様、昨日からどこかで見たことのある顔だと思っていたが……」
     そう言って鯉登はしゃがみ込み、あごに手を当てながら青年の顔を覗き見る。
    「――ひょっとすると、鶴見教授の授業を取っていなかったか?」
     片方の眉を少し上げて推理するかのような口調で語り掛ける鯉登に、青年は怯えながらただ頷くしかできない。すると鯉登はあちゃー、とでも言うかのように片手で顔を覆った。
    「しもうた……鶴見教授にまたがらるっ」
     聞き慣れない方言でため息をつく鯉登は、しかしすぐに気持ちを切り替えるかのようにキリリとした表情で青年を真向から見据えた。
    「おい、貴様」
    「は、はいっ」
     思わず裏返った声で、情けなく返事をする。
    「何の許可も無く、私に馴れ馴れしく触ったな?」
    「……」
    「どうなんだ?」
    「は……はい」
     こんなことを詰問されるなんて、情けなくて顔から火が出そうだ。頭の中では「男同士なのに」とか「あのオガタとかいう男には触らせたのに」といった幼稚で自分本位な言い訳がぐるぐると回っているが、とても口には出せない。
    「つまり貴様が先に手を出した。私は正当防衛だ。そうだな?」
    「は、い……はい、そうです……」
    「相談窓口に訴えても良いんだが、私も手を出してしまったし、今のパンチで手打ちにしてやろう。私もこのことは胸の内に秘める。貴様もそうしろ。な?」
     明らかに『パンチ』などという軽い響きの言葉で言い表せるような一撃ではなかったが、青年は泣きそうになりながら大人しくうなずいた。
    「よし、この問題は解決だ。もう二度とするなよ。もちろん私以外にもな」
     話が終わったと判断したのか、「ではな」と言って鯉登はあっさりと男から視線を外して自分の鞄を手に取る。すると、階段のほうから昨日と同じく低い声が聞こえた。
    「おせーよ鯉登、何やってんだ」
     そう鯉登に呼びかけるのは、昨日にやついた笑みで青年を唆した――と青年は勝手に思い込んでいる――あの尾形だった。鯉登はそのその言葉にあっ、と声を上げて自分の腕時計を見る。あまり派手ではないが上品で、いかにも金がかかってそうな腕時計だな、と青年は現実逃避のようにぼんやり思った。
    「すまない、少しごたついてしまって。今帰る」
    「はぁ……」
     呆れたようにため息をつく尾形の元に鯉登は走り寄っていく。昨日あれだけ険悪だったのがまるで嘘のようだ。衝撃で倒れた椅子を微塵も気に留めることなく、青年に背を向けて二人は揃って図書館の階段を下りていく――と思いきや、尾形だけは一つ階段を下りたところで静かに振り返った。
     尾形と青年の視線が初めて交わる。
     く、と片方の口角を吊り上げ、あざ笑うかのような声音で
    「椅子、片付けとけよ」
    とだけ言って、悪魔のような男は階段を下りて行った。

    ******************

    「尾形のせいでもあるからな」
     帰り道で鯉登が突然切り出す。
    「あ?」
    「図書館で急に変なことをするから、勘違いした男にキスされそうになった」
    「はっ、だからって何で俺のせいなんだよ」
     やはり一連の流れをどこかで見ていたか、あるいは聞いていたのだろう。鯉登の言葉に大して驚く様子もなく尾形は鼻で笑いながら反論した。
    「あの平々凡々とした野郎が鯉登のことを下心アリアリですって顔でじろじろ見てたからこいつは俺のもんだってわざわざ見せつけてやったんだ。それをどう誤解したんだか知らねえが妄想を加速させてトチ狂ったことをしたあいつが悪いだろ。何でも俺のせいにするなよ、傷つくぜ」
     口先では文句の言葉をつらつらと並べて捲し立ててはいるが、それとは裏腹に尾形は楽しげな表情を浮かべていた。自分の行いが予想通りの結果を引き起こし、誰かを地獄に陥れたことが楽しくて仕方がないのだと言った顔だ。
     そんな表情の尾形を見て、鯉登は何か言おうとしたが、やめた。
     尾形がこういった表情をするのは、絶対的な正論で自分を武装できていると確信している時だからだ。そして実際、彼の言っていることに間違いはなかった。尾形の行為がきっかけになったとしても、変な勘違いをした挙句に暴走したあの青年が一方的に悪いのは火を見るよりも明らかだ。
     黙ってしまった鯉登を見て、尾形は更に愉快そうに唇を歪める。
    「まぁでも、あいつもある意味可哀想だよな」
    「何?」
    「あいつ元々あんなことするようなタイプじゃないだろうにな。お前にふらふらと引き寄せられて、道を踏み外しちまった」
    「どういうことだ」
    「どういうことも何も。お前があいつに笑いかけたりなんかしなけりゃ何も起こらなかったんだよ」
     気色ばむ鯉登を真正面から見つめながら、尾形はトン、と鯉登の胸を指でさした。
    「つまりさぁ――悪いのは俺じゃなくて、むしろお前だ。お・ま・え」
    「……」
     にやにやと笑う尾形をじっと見据えながら、鯉登がしばし口を噤む。潔癖な彼にとって不快極まりない言いがかりだということを理解した上で言っているのだ。鯉登が何と反論してくるのか尾形は楽しみで仕方なかったが、しかし次に飛び出してきたのは思いもよらない言葉だった。

    「――私の美しさが罪だ、ということか?」
    「……」

     今までの上機嫌な表情から一転、尾形はスッと真顔に戻る。
    「確かに私は幼いころから可愛い可愛いと言われ、成長してからはそこにかっこいいという評価も加わった。あまり自分では分からないが、私の美しさは他者を狂わせてしまうのだな……」
    「……はぁ~~~~……」
     鯉登が自分の胸に手を当てて大仰に嘆いて見せると、尾形は大きなため息をついてつまらなさそうな顔をした。先ほどとは逆で、自分の予想通りに事が進まなかったことによる苛立ちを多分に滲ませた表情だ。尾形は早足で歩きだして距離を取ろうするが、鯉登の長い脚はその距離をすぐに詰めた。
    「恋人が美しいと心配か? そういう意味での忠告だったのか?」
    「近づいてきた野郎を思い切り殴り飛ばすような男を心配するほど暇じゃないんでね」
    「なぁ、手を握って良いか?」
    「……」
     コロコロと変わる話題に閉口していると沈黙を容認として受け取ったのか、鯉登は何の躊躇いもなく尾形の手をギュッと掴んだ。
    「おい……」
    「わいに嫉妬さるったぁ割と気分が良か」
    「は?」
    「じゃっどん、わい以外を見っ気は無かで心配すっな」
    「……」
     勝手に一人で話を進めている鯉登に対して何も言う気が起こらず、尾形は握られていない方の手で髪を撫でつける。それを見て鯉登はうふふ、と笑った。

     彼らの頭の中には先ほど殴られた哀れな青年の姿などもはや欠片も残っておらず、ただ夕陽が二人分の影をのばしていた。
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