冬夜のマジック ——ああ、違う、ちがう
どうして、なんで、ずっと——
「——俺の憧れで、いてくれなかったんだよ!なあ!!なんで、なん、ッ…」
頭を抱えながら情けない程小さく蹲り震えるライナーにジャンは普段は見せない程の強い感情を声と、怒りに震える体で伝える。
17のライナーはこうではなかった、ピンとした大きな背中と手がいつも安心感を与えていた、それなのに今のライナーはどうだ。
頬も痩けて、痩せて、自分より酷く小さく見える。そしてそれと同時にジャンはライナーが昔の自分と重なってそれが余計に心を荒ぶらせて掻き乱す。
自らの命の危機を前にしても手も足も出ず荷馬車の上で返り血を浴びながら仲間に辛うじて繋いでもらった命に震えていた自分を、次は必ず殺すと口では言いながら震える自分を抑えるのに必死だったあの頃を。
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