虹色の箱庭② ある日曜日の朝、ベランダで洗濯物を干すジャンの耳にリビングのローテーブルの上で震えるスマートフォンの音が響く、サンダルを脱いでそれを手に取ると「荷物届いた」の短い文章が画面に表示されていて自分も「良かった、また足りないもの送る」と文章を打って家事の続きに取り掛かる。この短い全く同じやり取りをもう一年以上繰り返していて、赴任直後は料理の感想や感謝の言葉があったそれが一つ減り、二つ減り今ではこの一言ずつのやり取りが辛うじて夫婦の絆を繋いでいる気がジャンにはしていた。
必要な物を敢えて聞いてわざわざ送るのもネットショッピングで買えば済むはずのそれをさせないようにしている自分が必死で「妻」としての役割を保とうとしている気がして洗濯日和の空とは打って変わってジャンの心をどんよりと曇らせた。
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