虹色の箱庭③日曜日から2週間程立ったある土曜日ライナーはダンボールを抱えてジャンのマンションへとやってくる、以前から続く月に2度ほどの日用品の定期配送だ。
「お届け物です」
「…ありがとう」
久しぶりに見るジャンの表情はどこか重苦しくて少しばかり痩せたようにも思える。重たい箱をいつもの様に玄関の隅に置くと廊下の奥のリビングが見える、その様子は乱雑で薄暗くてライナーの心は落ち着かなくなる。
「ジャン、体調悪いか…?」
「いや」
「少し、痩せたな」
「ああ、なんか…忙しくて、でも大丈夫」
大丈夫、の一言にこんなに頼りなげで痛々しいものがあるのだとライナーは目の前のジャンを見て初めて思う、放っておけない。そんな気持ちも同時に芽生えた、それでも彼は顔も知らない男の物で、このままただの宅配員として知らないふりをしてしまえばそれで終わりだ、見ない振りをしてサインを貰えばそれで。
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