先陣に立つ 陰に潜んでいた斥候は自らが短刀を投げる音を聞くよりも早く、その喉笛から呼気の漏れる音を聞いた。刹那、ぱっくりと裂かれた喉笛から鮮血を噴いて倒れる。
敵を一太刀に葬った二刀の剣士、アラミスは更に物陰から放たれる短刀を掻い潜ると瞬く間に残りの斥候を屠った。
「我々も続くぞ! 速攻だ!」
隊を率いる若き王、ギルベルトの号令が響くと共に後方に控えていた竜騎兵ヒルダのワイバーンが咆哮した。大気を震わせ地をも揺るがすかのようなその雄叫びに敵の一群は怯む。その隙を突き、斧鑓に黒炎を纏わせた黒騎士グロスタが狼狽する敵兵を一薙ぎすると周囲は禍々しい業火に包まれた。
燃え盛る炎の中、人の形をした黒いものが崩れていく。
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