ニーサン休暇を取るの巻 昨今は書類の電子化が進んだとはいえ、依然上長決裁には直筆が幅を利かせている。
バッサリと変えるにはまだまだ難しい、机の端に几帳面に積まれた慣習の成れの果ての隙間から、明るい金の髪を覗かせ一人の青年が首だけを真横に向けて机に上半身を伏していた。
天板にべったりと頬をつけ、考えることを放棄した虚ろな目は部屋の隅を見ている。
傍から見ると完全に現場検証が必要なように見えるのだが、時折確認出来るまばたきとかすかに上下する背中だけが生きています、と言うかのように生存を主張している。それ以外はピクリとも動かない。
そのうち首が痛くなったのか、九十度左横を向いていた頸椎が零度に直され、その代わり顎が九十度前方へ押し出される。連日の書類仕事の割には肩周辺の筋肉は柔軟に保たれてはいるらしい。
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