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    ksnkz02

    @ksnkz02

    ピクシブで伏乙やら乙右のお話を書いてます、絵は苦手ですが好きです。がんばります。

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    ksnkz02

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    タイトルはアレだけど悲しくはないよ。
    こんな内容は、憂太が本誌で頑張ってるときには絶対書けなかったから、最近ようやく書けるようになった。ちょっと伏乙ですれ違いが生じてるけど、お互いに重い愛カップルだから大丈夫でしょう。

    #伏乙
    voltB

    僕は遺書を書いている特級術師として再度認定を受けた際、五条先生から「大事な話がある」と呼び出された。
    多分、これからの任務についての話だろうなというのは分かっていた。かつて僕が一度、特級術師として認定されていたのは、僕が作り上げていた呪いを特級として認定していたわけだし、僕が特級術師として任務を受けたことはなかった。四級から今に至るまでの間に、複数人や単独での任務はそれなりにこなしてきてはいるけど、同級生の友達に比べれば数は少ない。僕には実践が足りない。それは誰の目にも明らかなことだった。

    「じゃあ、今から大事な話をするよ。一回しか言わないから、しっかり聞いてね。」

    「はい。」

    「憂太、遺書を書きなさい。」

    「へ?」

    遺書って、あの遺書?
    人が死ぬ前に残しておく、あれ?

    「先生、今なんて…」

    「生徒にこんなこと、何度も言えないよ。」

    見慣れない黒いアイマスクをつけた先生は、いつものニッとした笑顔を浮かべて、僕の背中をバシバシと叩いた。

    「ちょ、先生、痛いです!」

    「辛気臭い顔しないの!ただでさえ憂太は暗いんだから、もっと笑って!」

    笑いながらする話でもないと思うんですけど。
    困った顔を浮かべている僕の気持ちを汲み取りながら、先生は相変わらず軽い口調で言葉を繋げる。

    「いつ死んでもいいようにするためのものじゃないよ。誰かに呪いを残さないようにするためって、考えてくれればいい。」

    「呪いを残さない…?呪術師は、呪霊にはならないんですよね?」

    僕は呪術を学び始めてまだ一年も経っていないし、座学も得意でもないから(かといって苦手でもないけど、知識には自信がない)、あんまりそのあたりの違いをはっきりと理解出来ていない。

    「まあ、はっきりとした呪いを残すわけじゃないけどね。例えば、僕が憂太の目の前で敵にやられたとするよ?あり得ない話だけどw」

    「あり得ないですね。」

    「まあそんな状況で、僕が憂太に仇を討てと言い残したら、それは憂太の心を縛り付ける呪いになる、みたいな感じかな。」

    「つまり、僕が最期に人の心を縛り付ける負の感情を残してしまうと、それはその人にとっての呪いになる、てことですか?」

    「大体そんな感じ。」

    最期に負の感情を残さない、伝えないようにする…そんなこと、僕に出来るのかな?大好きな友達とお別れするのはとても寂しいし、想像しただけでも泣きそうになる。僕のこと忘れないでって、絶対願っちゃうと思う。そういう言葉すら、友達にとっての呪いになってしまうなんて…。

    「それと遺書は、どういう繋がりがあるんですか?」

    僕なんて、遺書を書いておくことによって、ますます未練がましくなってしまう気がするんだけどな。

    「まあ、そう言っちゃうと語弊が生じるかも知れないね。憂太に分かりやすく伝えるなら、日記…かな?」

    「日記が、遺書になるんですか?」

    「例えば、憂太が友達とケンカしたまま任務に出向いたとして、そこで万が一のことがあったとする。憂太は謝ることすら出来ないまま、友達と決別することになって…悔いは残るよね?そうならないために、人には素直に言えないことも、全部言葉にして残しておくんだ。書き残した憂太も、残されてそれを読んだ人間も、みんなが負の感情を生み出さないようにね。」

    「なるほど…そういうことですか。あんまり重くしなくていいんですね、だったら書きやすいです。」




    そんなアドバイスを受けてから、僕は毎日遺書を書いている。スマホが壊れた時のことを考えて、よくあるB5サイズのノートに毎日の出来事や気持ちを書き続けている。いつもは机の引き出しに閉まってあって、任務で外泊する際には必ず持ち歩いて、アフリカの地にまで降り立ったアクティブなノートだ。


    僕は遺書を書いている。


    僕に初めて出来た大切な友達や、僕の人生を変えてくれた大切な先生、僕を慕ってくれる元気な後輩や、ちょっと接し方の難しい後輩、そして僕がひっそりと想いを寄せる…僕を尊敬してくれる素敵な後輩に向けて。













    俺は遺書を見つめている




    久しぶりにお邪魔した先輩の部屋で、俺は乙骨先輩の遺書を見つけた。
    よくあるB5サイズの青いキャンパスノートの表紙には、はっきりと『遺書』と書かれている。

    宇宙飛行士は、ミッションに参加する前に、遺書を残して行くという話を聞いたことがある。
    特級術師として、俺たちよりも遥かに危険を伴う任務をいくつもこなしているあの人ならば、こんなものを用意していてもおかしくはないだろう。
    ましてや、乙骨先輩は優しい。
    あの人に万が一のことがあった際に、あの人が思いを馳せることは、きっと残される大切な友人や、俺という恋人のことに違いない。
    だからきっとこのノートの中には、そんな人たちに向けたあの人からの愛情が詰まっているに違いない。
    「僕がいなくても、幸せになってね。」
    いつもの、まるで陽だまりのようなあたたかな笑顔が脳裏に過ぎる。
    …そう、あの人はそんな人だ。


    だからといって、俺はこの現実を素直に受け止められやしない。
    こんな心構えをするくらいなら、あなたの心をもっと俺にください。
    こんなものを書いている時間を、俺にください。
    あなたが想いを馳せるのは、俺だけにしてください。
    最期の時に俺を想うより、今、俺にあなたの愛をもっとください。








    「ただいま〜。遅くなってごめんね、ちょっと任務が長引いちゃって。」

    いつもの俺なら、お疲れ様ですと気遣いをしてやれるはずだった。
    だけど、今からの俺は違う。
    あなたが俺を変えてしまった。
    まるで死に急ぐように何冊もの遺書を書き続けるあなたを知ってしまったなら、俺はそんなあなたを止めるために、俺の感情をぶつけていくしかなかった。

    「ねえ憂太さん、愛してる。」

    強引に捩じ伏せた身体を、生まれたままの姿にしていく。
    剥き出しの愛をぶつけてやる。




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