くしゅん!
フェリクス、寒いか?
これ、巻いて!
嫌がるフェリクス
……いい匂いがする。
その言葉にディミトリは顔を輝かせる。
裏に縫い付けられたポケットから小さな袋を取り出す。
母上に作ってもらったんだ!
俺が好きな匂い、フェリクスも好きだって言ってくれて嬉しい!
暗闇の中に大きな影が浮かぶ。
ディミトリの側近であるギルベルト、ことギュスタヴが
夜分遅くに申し訳ありません。
殿下に例の症状が出てしまい……部屋まで来て頂いてもよろしいでしょうか。
フェリクス殿。
暗い廊下をただ歩いていく。
ベッドの上で額を擦り付けるようにうずくまっていた。
床には
手に持った毛布を広げると小瓶を取り出した。
それを毛布に吹きかけると花の香りが広がる。
毛布の上から抱きしめた
は……は、うえ……?
呻き声は小さくなり、やがて寝息へと変わった。
あのようになると、
ああ、私の好きな匂いなんだ