いらっしゃい、ジャック。
……お邪魔します。
落ち着かない様子のジャックを前にヴィルは微笑んだ。
事の始まりは1本の電話だった。
長期の海外ロケに出ていたヴィルからの電話だった。
来て欲しい、それだけの言葉でジャックは遠路はるばるヴィルの元へ飛んでいった。
シンプルな家具を基調とした部屋の隅には大量の荷物が積まれている。
撮影の間だけ使ってる部屋だから気にしなくていいわよ。楽にしてて。
……うす。
で、ヴィル先輩。用って何なんですか。
じゃあ、さっそくだけど獣化してもらってもいい?
ヴィルは抱きついてきた。
ふふ、やわらかい
あ、あの、獣化したら俺はどうすれば……
そのまま、何もしなくていいわよ。強いて言えば、アニマルセラピーってやつかしら。撮影中はいろいろあって疲れるのよね。
顔をうずめたり
……ヴィル先輩、何かありましたか
何かって?
わざわざ俺を呼んだってことは
ジャックは何でもお見通しね。
ダッドのことでね、いろいろ言われちゃったの。今共演してる大御所俳優がダッドと同世代の人でね、自分が主役の作品でダッドのほうが人気出たことを引きずってるみたい。
アタシの失態をダッドのせいにされる
ダッド、すごく悲しそうだった……
寒いから、帰ろう。
先に帰っていいわよ。アタシはまだここにいるから。
手は真っ赤に
白い息が漏れていた。
……あったかい。
ヴィルの目から涙がぽろぽろこぼれ落ちた。
わ、ジャック!くすぐったい
涙が止まらず、