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    mobdesuka

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    mobdesuka

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    モブ♀と嘘の熱愛報道かかれた瀬名と激おこレオくん
    ズ!!捏造

    熱愛カレシ(って書いてあった)事務所へと顔を出すと、仁王立ちの夏目とニコニコと笑顔を作っているつむぎに入口を塞がれる。朝が得意ではない泉は、自身の行動を遮られ余計にイライラとする。
    「ちょっと来テ」
    年下にタメ口で指図され、はぁ?と文句を言いつつ何故か怒っている夏目に渋々着いていく。事務所の会議室へと足を運べば、広い机の端に一冊の雑誌。嫌な予感がして、バッと勢いよく取り上げる。
    「なに、これ…」
    「それを聞きたいのはこっちなんだけド」
    週刊誌特有の趣味悪い文面と写真に、泉は立ちくらみがした。
    白黒写真だが、写っているのが誰なのか分かってしまってため息を吐く。
    嫌な汗が背中を伝う。

    (やられた…っ!)




    ◇◇◇◇◇

    「『瀬名泉、熱愛発覚?!お相手は今を揺るがす合法ロリ女優!』…だって。とうとうセッちゃん、変態認定されちゃったねぇ」
    雑誌を読みながら、愉快そうに笑う凛月をギロリと睨む。セッちゃんこわぁい、なんて思ってもないことを言うものだから余計に腹が立って大きく舌打ちをした。
    人生のどん底にいる気分だった。
    週刊誌報道なんて泉にとっては遠い話だと思っていた。瀬名泉はお姫様たちを守る騎士として剣を振り、愛を囁くアイドル。そして、自身が培ってきた努力と美貌を売り出すモデル。どちらも泉にとっては大切でかけがえのないもの。そんな大切なものを、報道一つで壊されてたまるものかとプライベートは特に気をつけていた。
    それなのに、だ。
    「有り得ない…チョー有り得ないんだけど!」
    怒りの矛先が多すぎて地団駄を踏む。週刊誌にもパパラッチにも女にも。
    「セッちゃん、落ち着いて。…一応聞くけどさぁ、この話ほんとなの?」
    「…はぁ?あんた、分かってて聞いてんの?」
    「一応だって。本人の口から聞かないと」
    「…絶対に有り得ないから。この女は…この間のドラマで共演した子。この写真も打ち上げのときのだと思う」
    「ふーん。…それにしてもさぁ、よく撮れてるよねぇ。まるでそこにセッちゃんとこの子がいるのが分かってるみたい…♪」
    「ッチ!はめられたってわけぇ…」
    今すぐビリビリに破いてやりたい衝動を抑えて、穴が開きそうなほど睨んでやる。しかし、泉が何をしたってこの雑誌は世に出てしまうわけなのだ。…これが、でっち上げで相手の仕業だとしても、世論は揺れ動くだろう。
    「まぁ、エッちゃんが動いてくれるだろうから多少は抑えられると思うけどさぁ。…しばらくはKnightsの仕事もお休みかなぁ」
    凛月の言葉に歯を食いしばる。ズシン、とのしかかる事の重大さに、鼻の奥がツンとした。
    「泉ちゃん!大丈夫!?」
    「瀬名先輩…っ!」
    遅れて来た嵐と司が、勢いよく会議室の扉を開ける。おいっす〜という気の抜けた凛月の挨拶に、二人も少し落ち着いた。
    「これね…。あら、よく撮れてるわぁ」
    「Jesus!なんなんですかこの文章は…!」
    やいのやいのと雑誌に文句を言う二人に、泉は何も言わずに俯く。誰よりも繊細で責任感が強い泉にとって、自身の行動がメンバーに迷惑をかけていることが耐えられなかった。
    「…ごめん」
    辛そうに呟かれた言葉に、三人は目を丸くする。
    「やだっ、そんな顔しないでちょうだい!せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」
    「瀬名先輩は騙されたのでしょう?こんなの、見れば一目で分かります!司は味方です!」
    「でも、迷惑かけるのは事実でしょぉ。天祥院にも、事務所にもKnightsにも…他のアイドルにも」
    明日には、この報道が世間に知れ渡る。ファンには失望され、ニュースに取り上げられ、説明を求められるに決まっている。それは、泉だけではない。他のアイドルにも火種が飛んでしまう。そんなことを想像して、泉の精神はジワジワと蝕まれる。
    「セッちゃん、大丈夫。俺たちを信じてよ。夢ノ咲の時代を乗り越えてきた俺たちだよ?こんなことでへこたれたり失望したりなんてしない。…そもそもうちにはエッちゃんもス〜ちゃんも、兄者だっているんだから。ねぇ、信じて?」
    赤い瞳が、泉を捉える。言葉だけじゃない、表情でも信じてくれと訴えてくる。嵐と司を見ると、二人は頷いて微笑んでいた。
    三人の表情に、地に足着いた泉は小さく深呼吸をした。
    「…しばらく迷惑かけるけど、よろしくねぇ」
    どこかぎこちない笑みだったが、一先ず大丈夫そうだと凛月は胸を撫で下ろす。
    「お任せ下さい!Knightsの王として、朱桜家の人間として、この司が貴方を守ります」
    「お仕事のことはアタシたちに任せなさい!」
    「うん、ありがとうねぇ…」
    重たい空気が、一気に軽くなる。泉も自分でできることはちゃんとやろうと拳に力を入れる。英智と話をして、事務所の所長に頭を下げて…それから。
    各々が意気込んでいると、先程よりも強く勢いよく扉が開く。
    「れ、れおくん…」
    納期明けで熟睡していたはずのレオが、髪も結わず目元に隈を乗せて肩で息をしている。『うっちゅ〜☆』とレオ特有の挨拶と可愛らしい笑顔でピースをする姿は何処にもない。まるで、猛獣が獲物を捕らえたような鋭い目と感情が読めない表情。
    無言で司に近づいて、持っていた雑誌を奪う。今のレオに話しかけられるほど、空気が読めないわけではない。四人は黙ってレオを見つめる。
    「…へぇ、よく撮れてるな。セナはこーんな汚ぇ週刊誌に載っても、綺麗だよなぁ」
    雑誌を読みながら、揶揄うような言い方で嘲笑う。
    「なぁセナ。なんでこんな写真撮られちゃったか分かるか?…お前が鈍感で優しすぎて、馬鹿だからだよ」
    ギロリと睨むその目に、泉はヒュッと息を呑む。雑誌を床に叩きつけて、泉に近づく。胸ぐらを掴まれそうな勢いで、思わず目を瞑る。しかし、一向にその衝撃が来る気配もなく、ゆっくりと目を開ける。表情は相変わらず泉を睨みつけているのに、だんだんと新緑の瞳がユラユラと揺れる。
    「もう、勝手にしろよ。そんなにロリが好きなド変態とはチューもえっちしない!一緒に住まない!実家に帰らせてもらいます!」
    「ちょ、れおく…!」
    言うだけ言って何処かへ行こうとするレオの腕を掴むと、ガクリと力が抜けて泉の胸へと体を委ねる。ギョッとした泉は、急いでレオの顔を見るがスースーと規則正しい呼吸音に眠っているだけだと安心する。
    「…痴話喧嘩なら他所でやりなさいよ」
    嵐の言葉に、泉はムッと顔を顰める。
    「まぁ、レオくんが怒るのも無理ないとは思うけどねぇ。…許してもらえるまで謝りなさいよぉ」
    「ていうか、ロリが好きなんじゃなくて月ぴ〜が好きなんだしねぇ」
    「くまくんっ!」
    泉に凭れながら気絶したように眠るレオに、なんとも言えない気持ちが溢れる。逆の立場だったら泉だってレオに怒ってしまうだろう。
    不安にさせた、怒らせた。謝らなきゃなぁ。
    そんなことを考えながら、不甲斐なくて格好悪いなと自嘲気味に笑う。



    泉の件で、ES内は何処と無くバタバタと人が動き回る。中でも、発端の泉が一番忙しそうで。司と凛月は英智の所へ向かい、嵐は今後の仕事の調整やモデル仲間と連絡を取り合っていた。
    「ん、んぅ…?」
    足音や話し声がだんだんと大きく聞こえて、レオはゆっくりと目を開く。パチリ、一つ瞬きをして辺りを見回す。
    「あれ?!ここは何処だ?!は!遂に宇宙人に攫われた?!家で寝てたはずなのに!でもここ見覚えあるぞ…」
    「おや、やっとお目覚めかナ?」
    何やら作業をしていた夏目がレオに気づいて水を渡す。
    「ナツメだ!うっちゅ〜☆…ん?じゃあここは事務所か!なんでおれココにいるんだっけ?」
    「呆れタ。瀬名センパイに殴り込みに来たんでショ」
    「…あぁ」
    泉の名前を聞いて、スっと表情が消える。これはだいぶ拗らせてるなと苦笑しながら、夏目は眠っている間のことを話す。
    「とりあえず、あの雑誌が世に出回るのは確定。これはどうにもできなかっタ。だから、女優の嘘を暴こうと猛スピードで情報を集めてル。ま、幸い情報集めが得意な人間がたくさんいるから、これがでっち上げなことを証明できるのも確定。その間は、瀬名センパイは外出禁止だけド」
    「…ふーん」
    聞いているのかいないのか分からないほど適当な返事をするレオに、眉がピクリと上がる。
    「今も言ったけど、瀬名センパイの熱愛は嘘だヨ?」
    「分かってる。セナは浮気なんてしないもん」
    断言されて、夏目はこれ以上は関わりたくないなと思う。こんなにも拗らせた人間をどうにかできるのは、同じように拗らせた人間なのだろう。
    「失礼しま〜す…あ!逆先くん、頼まれてた件だけど…って、うわ、月永先輩!」
    おどおどとしながら事務所へと入ってきた真が、レオの存在に驚く。少し嫌がっているような表情に、レオは苦笑する。
    「ゆうくん、そんな顔されたら流石のおれも傷つくぞ…?」
    「え?顔に出ちゃってました?…そうそう、逆先くん。これ、女優さんの情報。意外とガードは弱かったよ。ボロボロと化けの皮が剥がれてきてびっくりしちゃった」
    「…やっぱり。瀬名センパイを利用して自分の名前を売ろうとしたわけネ。そして、あわよくば瀬名センパイとどうにかなろうとしタ」
    「泉さん変に優しいから、そこに付け込まれちゃったんだね」
    「わざわざ持ってきてくれてありがとウ。…そうだ、ついでだからそこの騎士殿の話も聞いてあげてヨ。ボクはこれからまた忙しくなるから構ってあげられないからサ」
    ニコリと笑う夏目に、真の顔は引き攣る。
    なんだか後輩に遊ばれているようで面白くないレオは、ムッとして夏目に文句を言う。
    「構ってもらわなくていいけど!Knightsが戻ってくるまでここで作曲するし!」
    「今のセンパイに作曲ができるほどの霊感とやらは湧いてくるノ?…ボクは心配なんだヨ。瀬名センパイも月永センパイも、一人で頑張ろうとしちゃうかラ。不安なら口に出さないト。本人には言えなくても、誰かにきいてもらうだけで少しは心にゆとりが持てるはずだヨ」
    泉と同棲する以前、夏目とは寮で同室だった。そこでもレオは夏目に世話になったし、夏目もレオに何度も相談をした。互いに夢ノ咲では辛い経験をしていたのもあって、二人の仲は友人と言えるくらいには深まっていた。そんなレオを、夏目は本気で心配している。
    「そういうことだかラ、よろしくね遊木くん」
    「え?!ちょ、逆先くん…!」
    さっさと事務所から消えてしまった夏目の背中を、真は残念そうに見つめる。しばらくして、チラリとレオを見れば目が合う。
    「あー…なんかごめんな?おれは大丈夫だからさ、ゆうくんは戻りなよ」
    力なく笑うレオに無性に腹が立ち、レオの腕を掴む。よろめくレオを気にせずに、真はレオを連れて歩き始める。
    「え?ちょ、ゆうくんどこ行くの?」
    「事務所だと人目気にして話してくれないですよね?だから、移動します」
    「…ゆうくん、無理しなくても」
    「無理なんてしてません。まったく、泉さんも貴方も本っ当に世話が焼ける!」
    レオが連れてこられたのは、応接室。ソファに座らされて、途中で買ったコーヒーを机に置く。正面に真が座って、しばらく沈黙が続いた。
    「…さっきすれ違った泉さん、いつものしかめっ面も忘れて必死に走り回ってましたよ」
    さっき、とは真が事務所に顔を出す前だろう。レオの同情を買うつもりなのだろうが、レオは心中穏やかではないのでその言葉をスルーする。
    「まさか、あの泉さんがハニートラップに引っかかっちゃうなんて思ってもなかったです。…あぁでも、鈍感だから女の人からの視線に気づかなかったのかな?」
    綺麗だし、外面はいいから表しか知らない子達はコロッと落ちちゃうんだろうな。
    笑顔を崩さず淡々と話す真に、少しばかり苛立つ。
    「ま、泉さんの鈍感は今に始まったことじゃないですもんね」
    「…ゆうくんさぁ、さっきから何が言いたいの?」
    機嫌の悪さを前面に出したレオがコーヒーの缶を机に置きながら真を見る。
    「お前、まさかセナの味方?…知ってるだろ、セナはおれの恋人だって。お兄ちゃんを守りたい気持ちはわかるけどさ、おれは怒ってるんだ。同情なんてしない」
    「…月永先輩は、本当に怒ってるんですか?」
    「…は?」
    「本当は、怖いんじゃないんですか?」
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    Replies from the creator

    mobdesuka

    MAIKING別れたいずレオの話
    夢ノ咲卒業後Knights解散成人設定
    これもいつか完成させたい〜……
    汝、天才を愛する覚悟はあるか 案外、こんなものなのか。薬指に嵌めていた指を弄りながら、泉はまるで他人事のように冷静に分析をする。目の前の、数秒前まで恋人だった旧友の涙を見ても罪悪感は湧かなかった。そんな資格はないと思ってしまったのだ。あまりにも冷めきっている思考に自分でも驚きながら、もう戻れないのだと確信する。
     指輪を抜いた左手が、とても軽く感じた。



     レンズ越しに見える自分は、誰よりも美しくありたい。カメラマンが無意識にシャッターを押したくなるような。慌ただしくスタジオを駆けるスタッフが立ち止まってしまうような。一秒たりとも目を離したくないと願ってしまうほどの人間でありたいと、泉はカメラの前に立つときに必ず願う。けれども現実はそう上手くはいかない。実際何度かカメラマンやスタッフが息を飲むほど美しいねと褒めることはあれど、慣れればもう日常に溶け込んでしまうのだった。それでもいいと思えるようになったのは、ここ数年の話。幼少期から培われた努力は、絶対に報われている。自分がそう確信しているのだし、文字で埋め尽くされているスケジュールアプリを見れば如実に現れているのだから、いちいち悔やむほうが勿体ない。事実、あまり気にしなくなってから余裕が出たのか、いい雰囲気だと褒められることもしばしば。瀬名泉と聞いて首を傾げる人間のほうが、今は流行りに乗り遅れていると笑われるのだろう。
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