無題 待ち合わせ場所に着いてスマホを見れば、ちょうど五分前だった。ギリギリだったなと苦笑をこぼしつつ、乱れた髪を整えながら鼻歌を歌う。こうして待つ側になるのも板についてきた気がする。普段はおれよりも先に待っているやつは、たまにおれよりも遅れて到着してくる。そういうときのあいつは、シンデレラとでも言うべきか。あぁでも魔法使いもあいつだからなぁ。……おれは王子さまか? なーんて。今日は一体、どんな魔法にかけられているのだろうか。
「れおくん」
コツ、とヒールの音とおれの名前を呼ぶあいつの声が聞こえて、振り返る。
「セナ!」
「ごめんね、待ったでしょぉ?」
「いや、おれも今来たとこ。……うんっ、今日も可愛いな!」
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