【貴方とすごす日々は】ヒュンポプ 【貴方とすごす日々は】ヒュンポプ
「んぅ…」
ヒュンケルの朝は、起きてポップの寝顔を見るのが一日の始まりだった。
すやすやと眠るポップは、さながら眠り姫のようで、可愛くて、綺麗で、ヒュンケルはたまにこのまま起きないのでは無いかと錯覚する。
そんな時は、ちょん、と指で頬を撫でてみたり、そっと口付けを落としてみる。すると、その刺激にポップは身じろいで、ゆるゆると瞳が開く。
その瞳は、とろとろで蕩けていて、甘い飴玉のようにキラキラとしている。零れてしまいそうな、その瞳に、ちゅ、とキスをすれば、ぱちぱちと瞬きをして、ようやく、ポップは覚醒する。
「ヒュン…」
「おはよう、ポップ」
「うん、おはよ…」
ポップはたまに寝起きが悪いこともある。目を覚ましたからと言って、直ぐに、動くことはまずない。
布団の中で、ふにゃふにゃと、だいぶ微睡む時間がある。
特に、今日みたいな寒い日は、温かさを求めて擦り寄ってくる。
そうして、きゅ、としがみついてくるのが、たまらなく可愛いのだ。
「ヒュンケルあったかい…」
「お前も温かいぞ?」
「自分では、わかんねー…」
「そうか?」
「うん…」
グリグリと頭を擦り付けて来て、胸元に抱きつくポップが、本当に可愛くて仕方がないヒュンケルは、なぜ、俺の恋人はこんなに可愛いのか、と毎日毎日、改めて思う。昨日も可愛いかったが、今日また更に可愛いと。
そっと、上向かせて、ちゅ、と口付ける。
最初は軽く触れるだけ。
でも、段々と、口付けが深くなる。
ぺろり、とポップの唇を舐めて、口を開けば舌を差し入れ、小さな舌を絡めとる。
ああ、甘いな、と感じるのは、ポップだから。
どこを舐めても、甘い飴玉を舐めているみたいに甘い。
どんどん無意識に深くなる口付けに、ポップが苦しくなって、背中をトントンと叩かれて、ようやくヒュンケルは解放する。
少し、顔を赤くしたポップが、涙目で見上げてくるのが、たまらない。
『俺のポップは、可愛すぎる』
そう思うのが、日課になっていた。
「ポップ、そろそろ起きるか?」
「んー…」
「今日は、朝からホットケーキを作ってあるぞ」
「ホットケーキ!!」
意外にポップはパンケーキなどが大好きで、ホットケーキと聞いて、ぱっと瞳を輝かせる恋人に、笑いながら、手を引き抱き起こす。
そのまま抱きしめて、頬を両手で包み込む。
ちゅ、と軽く触れるだけの口付けを落として、「おはよう、ポップ」と囁いた。
そうして、キッチンへと向かうヒュンケルの後に、とたとたと着いてくるポップ。それはさながら親に着いてくる雛のようである。
テーブルに座って、ヒュンケルが目の前にコトリと置いたホットケーキに、ポップはにこにこと笑顔をうかべ、食べていい?と目で訴える。
それに頷けば、ポップは待ってましたとばかりに、フォークとナイフで器用に切り取ると、パクリとホットケーキを口にする。
「んまい…っ!!」
「そうか、よかった」
「甘さも丁度いいし、流石ヒュンケル!」
「お前の為のものだからな」
ホットケーキの出来はポップはお気に召したようで、
むぐむぐと口いっぱいに頬張っている。
その幸せそうな顔を見て、ヒュンケルはようやくホットケーキを口にした。
確かに我ながら、良い出来だ、と自画自賛する。
甘さ控えめのホットケーキに、バターがじわりと染み込み、いい具合に合わさっている。
これは、ポップの為に配合を工夫して作っているヒュンケルのオリジナルのホットケーキだ。
普通のホットケーキもポップは好きなのだけれど、ヒュンケルの手作りのホットケーキは、ポップの中でも一位に冠するぐらいの料理である。
今日の出来も目の前の恋人の満面の笑みに、ヒュンケルは満足し、自らもホットケーキの甘さを堪能した。
食べ終えたポップは、じい、とヒュンケルを見つめてくるのを、ヒュンケルは紅茶を飲みながら目を合わせる。
どうかしかのか、と思うが、ポップの機嫌は良さそうだ。
「おれさ、こうして休みにヒュンケルと過ごせるの本当に幸せだなーって思う」
「ポップ…」
「朝はヒュンケルに起こしてもらえて、ゆっくりご飯食べてさ、昼は一緒にいられるし、夜は同じベッドで眠る、それがさ凄い幸せなんだ」
「オレも、幸せだ」
ポップは、椅子から立ち上がりわヒュンケルのそばに来ると、ヒュンケルに抱きついた。
そのまま、ヒュンケルはポップを抱きしめ返す。
ポップはヒュンケルに、触れるだけの口付けをして、にこりと笑う。
「俺気付いたんだ。毎日がさキラキラしてるのはヒュンケルがいてくれるからだ、って」
ふわりと笑いながら言うポップの言葉に、ヒュンケルはじわりと心が熱くなる。そのまま強くポップを抱きしめると、額に口付けを落とし、顔を寄せた。
「だから、これからも、一緒に居てくれるか?」
「当然だろう、ポップが嫌になったとしてもオレは離すつもりは無いぞ」
「へへっ、おれもだよ」
「ポップ、愛している」
そう囁きながら、二人はそっと唇を合わせた。