【一輪の華】ヒュンポプ「潜入任務ぅ?」
大事な話があると、会議室へと向かったポップ。
その部屋にはごく少人数の限られた人物しかいなかった。どうやら、他国が、パプニカを狙っているらしい。その国のパーティに潜入して、その国が、パプニカを攻め入る準備をしているのかどうかを調べてくる…という任務なのだという。
確かに、国家間の問題だ。最悪戦争にもなりかねない。穏便にことを済ませたいのだろう。
問題は、誰が行くか、という事らしい。
「パーティなんだから、マァムとヒュンケルで行けばいいんじゃねぇか?」
「それは考えたのだけど…、サポートできる人も必要だと思うのよね」
「サポート?」
「そう、例えば、魔法…とかね」
レオナの言葉に、ポップは嫌な予感がしてくる。まあ、でも潜入捜査なら、特に問題はない?とは思うが…何故こんなにも嫌な予感がするのか。
「だから、ポップ君とヒュンケルにお願いするわ」
「分かりました」
「りょーかい」
自分に回って来るだろう言葉に、まあ、ヒュンケルと一緒なら、なんとかなるか。とポップはプランを考え始める。
「ま、男二人でも入り込めば、簡単にすむかな」
「男二人だなんて誰が言ったの?」
ブツブツと考えを纏めようとしているポップに、レオナがそれをぶった斬るように声を発する。
ぱちん、と考えを中断したポップは不思議そうにレオナを見て、首を傾げた。
「そりゃ、俺とヒュンケルだから…」
「そうね、君たち二人ね」
「男二人じゃねぇか」
「ええ」
「なんかおかしいか?」
キョトンとするポップに、レオナはニンマリと笑みを浮かべて、びし、とポップを指さすと、爆弾を落とした。
「ポップ君、君は女の子として、パーティに参加してもらいます!」
その後、ポップはあれよあれよと身体を整えられて、衣装室へと押し込められた。
レオナは嬉々として、あれでもない、これでもないと衣装を鏡に合わせては衣装選びに没頭していて、最初こそ抵抗していたポップだったが、何時間もたてば、好きにしてくれ、と抵抗も諦めてしまった。
そうして、数時間後に、ようやく満足したのか、レオナは、ポップから身体を離した。
「かんっぺき!!」
ふう、と額の汗を拭うように、レオナは満足そうに笑うと、部屋に皆を呼んだ。
呼ばれた皆は、あんぐりと口を開けてポップを見つめている。
髪は長く腰まであり、見た目からもしっとりとしていてサラサラだということがわかる。
ドレスは、ポップの細身の身体に合わせてエメラルドグリーンのマーメイドドレスで、散りばめられたビーズがキラキラと輝いている。すこし、スリットが入っていて、足元が見え、艶めかしい。
元々、母親似で、可愛らしい顔立ちもあるため、化粧を施された瞳は大きくぱっちりとしていて、唇はグロスによってふっくらとしている。
もうどこから見ても、女の子そのものである。
「かわいい」
「綺麗」
「凄い」
変装したポップをみたみんなが口を揃えて、そう言う事に、恥ずかしさがどんどん募るポップに、追い打ちをかけるように、ヒュンケルが近づく。
そして、目を見開いて、ポップを見つめていた。
「なんだよ、似合わねぇって言いたいのか?」
「いや……」
「なら、なんだよ…」
ぷう、と唇を突き出して、不満を表に出すポップ。
いつもの唇なのに、グロスを塗っていることによって、まるで、キスをして欲しい、と言われているようにも見えるだろう。
ヒュンケルは、堪らず、ポップを抱きしめると、その唇に自らのそれを押し付けた。
「!?!?!?」
「「「「……」」」」
ちゅ…、と唇を離したヒュンケルは、目を細め、愛おしそうにポップを見つめる。
肝心のポップは、呆然とした表情でヒュンケルを見つめていた。
「お前を…今すぐ攫ってしまいたい……」
「っ……」
「誰にも見せたくはない、こんな可憐な姿を」
そう囁いて、ポップの腰を抱き寄せる。
そうして、また唇を重ねようとした瞬間。
「いい加減にしなさい!!」
ヒュンケルは、レオナから鉄拳制裁をくらってしまったのだった。
「盛るのもいいけど、時と場所を考えなさいよね?」
「すみません」
「……まあ、ポップ君が可愛らしいのも分かるから、このまま二人で、帰りなさい」
「良いのですか?」
「良くねぇよ!!」
ようやく我に返ったポップが反論するが、レオナの言葉は絶対だ。
ニッコリと笑っている後ろに黒いオーラが見える。
「本番でしでかすよりいいわよ、今から耐性つけておきなさい。ああ、ドレスは汚さないでよ?」
「承知しました、ドレスは脱がせ……」
「何言っんだよ二人とも!!?」
キャンキャンと吠えるポップは他所に二人だけで会話は成立している。
要は【このままポップをお持ち帰りして頂いてしまなさい】という事。
「それでは、姫、失礼します」
「任務は明後日からだから、ポップ君に無理させないでよね」
「は……」
ポップを抱き上げると、ヒュンケルは部屋の出口へと向かう。
そしてそのまま、ポップを部屋に持ち帰り、文字通り頂いたのだった。
「俺の話聞けよ!!!」
そんな声が響いた、パプニカの日常だった。