長期出張いつものような日だった。 適当に忙しく、そんな合間に体育館から営業先へ、営業先からリーグへ移動する間に少し息抜きがあってマユにメッセージを送った。 退勤時間をあまり残してマユから迎えに行くか、夕食はどうするか尋ねるメッセージが来た。
迎えと夕食、今日は久しぶりに定時に退勤できそうで、たまにはマユの不満を解消してあげなければならないという考えで、両方ともお願いする」と答えた。 すぐに笑っている老姑のスタンプが戻ってきた。 送る当事者には似合わないスタンプだったが、きっと自分のために購入したと思うと少し笑った。
夕食にはリゾットが食べたいと最後にメッセージを送り、最後の仕事を整理していたアオキは、予告なしに事務室を訪問したオモダカの姿に、先ほどまで楽しかった気分は跡形もなく不安を感じ、ため息をついた。
定時30分前から始まった業務の話が終わった時は、すでに定時から30分が過ぎていた。 ただ座った席で会話をしただけなのに、まるで1時間ずっと全力疾走をしたような脱力感がした。 いつもより遅い足取りでリーグを出ると予想通りマユが待っていた。
「お疲れ様でした。 アオキさん、遅れましたねか?」
「すみません。 急に仕事で急いで会議をしたので…」
普段より疲れた様子が歴然とした顔に、マユは小さく舌を蹴り、アオキの頬を軽く撫でた。
「ごくろうさまでした。 行きましょうか?食事の準備は適当にしておきました」
「…ありがとうございます」
マユはいつものようにボールから黒いポニータを取り出し、アオキを乗せてその後ろに座った。 マユの家に行く道はずっと静かだった。 普段は先に話しかけなくても勝手に会話を始めるが、このように気分が良くないのは幽霊のように気づいて沈黙する。 今は正直、それがありがたかった。 しかし、ずっと沈黙するわけにはいかないのに、どうしよう。 悩んでいるうちにいつの間にかマユの家に到着していた。
「さあ、早く洗って着替えてきてください。 リゾットはオーブンでもう少し煮るだけだから」
アオキはその言葉におとなしく従った。 ただ、お風呂に入る時も、食事をする時もまるで夢を見るようにぼんやりしていた。 確かに自分の好みに合わせて作ったリゾットだが、何の味も感じられなかった。
そして、マユがそのようなアオキの理想に気づかないはずがなかった。
「アオキさん、どこか具合が悪いですか? さっきのリーグから少し変ですが」
その質問に手が止まった。 言いたくない。 言いたくない。 言えば一体どんな反応を見せるか想像もしたくない。
「…長期出張が、決まりました」
「いつから、どこへ、いつまでですか?」
聞きながらアオキの皿に特に肉がふっくらしたエビフライをのせた。 アオキはエビフライには触れないまま質問に簡単に答えた。
「2週間後、シンオウ地方へ、4ヶ月間です」
「シンオウ、4ヶ月か…」
マユがスマートでトムを操作したら、しばらくしてアオキのスマートでトムにアラーム音が鳴った。
俺がよく知っている後輩です。 今シンオウで活動していますので、何かありましたらご連絡ください。 連絡してくだされば俺がすぐ行きますが、物理的な距離は仕方ないですからね」
「…はぁ…」
「そして」
マユの言葉に肩から力が抜けるのを感じ、息を吐き出していたアオキは、続く言葉に再び口をつぐんだ。 ティッシュで口元を拭いてアオキをまっすぐ眺めるマユは、奇異なほど表情がなかった。
「さん」
「さん…」
「俺のポケモン三匹をつけます。 一匹はドラパルトですが、もう二つはどんな子供たちを連れて行くのか直接選んでください」
「三、も…··· これ以上減らすことはできませんか?」
「…アオキさん」
弱い抗議の言葉にマユが静かに名前を呼んだ。 切ないという言葉が似合う声だった。
「俺は許可さえしてくだされば、今すぐにでもあなたについて行きたいです。 でも、この家もあなたの家も誰かが面倒を見なければなりませんし、何よりも出張先までついていけばかえって迷惑になるのではないでしょうか。 だからポケモンをつけることで我慢してるんです」
大きな手がアオキの手を優しく包んだ。 その言葉と温もりに先ほどまでゆっくりと動いていた心臓が急激に速くなった。
「理解してくれますよね?」
拒否を許さない言葉だった。 アオキは瞬きをしてうなずいて、マユはその時になってようやく無表情から笑みを浮かべた顔に戻った。
「ありがとうございます。 早く食べましょう。 冷めたようでしたら、また温めてあげます。」
「いいえ、これくらいでちょうどいいです。 ありがとうございます。」
緊張していた。 長期出張という言葉にこのまま放置されたらどうしよう。 後輩の連絡先を送ってくれた時はもう世話は終わったと思った。 それで彼がポケモンを3人もつけると言った時、安堵した。 その中に主力メンバーに挙げるドラパルトがいるということは、それだけ自分のことを気にするという意味なので、それだけ嬉しかった。
やっといつものように食事をするアオキの姿にマユは微笑んでささやいた。
「心配しないでください。 2週間に1回、俺が週末に伺います」
「-...」
これ以上望むことのない言葉だった。 アオキは口にしたリゾットを飲み込むその刹那を待ちきれず、熱心にうなずくことで答えの代わりをした。