圧倒的オカン属性月島さん③【完】「最近雰囲気変わったよね」
「えっ」
休憩室で杉元君に言われて持っていた缶をぎゅっと強く握り締めてしまう。同期入社の杉元君は、数少ない私の素を知っている人であり、『外面』を作りすぎてしまった私の良き理解者だ。数ヶ月前に片思いが成就した、と報告してきてくれてから、休憩や飲みの席ではもっぱら彼の惚気を聞いていた。
「雰囲気?え、そんなに変わった?」
「あぁいや、『いつもの君』が滲み出てるとかそういうんじゃなくて、最近嬉しそうというか、肩の力抜けてるなーって思う事があるってだけ」
「肩の力、ねぇ…」
杉元君の言葉に首を傾げる。自分では変わったと感じることはなく、いつも通りのつもりだったから。
「別に、普段どおりだけどなぁ」
8166