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    みなも

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    みなも

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    今回はうちの子しか出てこないよ!
    なんか…とても…納得いかない出来なんだけどこれ以上こねこねしても現状出てこない気がするのでとりあえず投げるよ!!

    うちよそ第2話【第2幕】 この地に中華街が形成されたその起源は、遥か江戸時代まで遡る。その頃より、外国人、ひいては中国人の受け皿となっていたこの街はいわゆる治外法権区域であり、戦前から権勢を誇っていた中華街の花街は、戦後風営法のために日本各地の花街が縮小、あるいは消滅していく中、さらに規模を拡大させた。日本のそれとはまた違った独特の空気を纏う花たちは、中華街の住民のみならず国内外から男を引き寄せ、やがてそこは小さくも決して他の介入を許さない、煌びやかなひとつの“世界”を形成し——今に至る。
     一晩で数千万、あるいは億単位の金が動くと言われるこの花街で、数多の店の頂点に立つ大籬。それが仁華楼である。大きな塀にぐるりと囲まれた広大な敷地内に睡蓮の浮かぶ清流を有しており、水上に浮かぶように佇む豪奢な大屋敷はまるで歴史ある中華名家の様相で、足を踏み入れる者を古代中国へ迷い込んだような心地にさせる。とはいえ、何度もここに足を運んだことのある柳追眠は、今更そんな陶酔感に浸ることもないのだが。
     追眠は睡蓮がゆっくりと流れる水路上に掛かった小さな橋を渡り、やがて前を行く案内役の黒服が立ち止まったのに合わせて足を止める。襖の前だった。湖の中に浮かぶ御殿が流麗に描かれている。水の中に立つから、水殿。天女が楽を奏で、馳走が無限に涌いて出て、楼閣も敷物も衣も、果ては樹木に至るまで、金銀や宝玉が散りばめられている、美しい楽園。確かそれもこの部屋の主から聞いた話だったような気がする。部屋の広さを表すように、ずっと向こうまで続く襖の上の世界はどこまでも広がっていた。ふと視線を上げると、廊下の向こうで睡蓮がゆっくりと流れていく。そのうち自分が絵の中にいるのかここは現実なのか、分からなくなってくる。もともとそれを狙った意匠なのだろう。
    「どうぞ。室内にて芙蓉がお待ちしております」
     腰を落とした男が告げた。
    「案内どうも」
     追眠の言葉を受けて、男は音もなく立ち上がり一礼するときびきびと去っていく。

    「いらっしゃい、風猫」
     襖を開けると、鈴を鳴らしたように美しい声がした。
    「ん、待たせて悪かった。芙蓉」
     しゃらんしゃらんと、どこかで風に揺られる水琴鈴の音がする。畳張りの広い部屋だ。たった二人だけしかいないのが勿体なくなるような、大広間とでもいうべき広さ。室内の衣掛けに煌びやかに広げられた鮮やかな赤やはなだの呉服、朱色や黒の艶やかな漆に金色の蒔絵細工、虹色に輝く螺鈿細工などが施されたたくさんの小箱は恐らく馴染み客からの贈り物だろう。小箱の中身は宝飾品だろうか。
     奥の丸窓に背を向け、肘掛けにもたれ追眠を見遣る女性は、目を見張るほどに美しい。
     中華街、番付一番。その源氏名は、芙蓉。
     頭上に結い上げ、いくつも輪を作る黒髪は艶やかな濡羽色。真珠や翡翠に加え、いくつかの宝石が輝く金細工の髪飾りが豊かな髪を華やかに彩っている。ほっそりとした首はすらりと長く、紅を基調とした化粧が色白ですっきりとした目鼻立ちをより際立たせる。二重瞼のぱっちりとした瞳を柔らかに細めた芙蓉は、紅く透き通った唇でにっこりと微笑んだ。
    「いいえ? 時間通りよ」
    「待たせたっていうのは、今日の話じゃない。探し物を見つけるまでの時間だ」
     追眠は肩をすくめてみせると、襖をぴたりと後ろ手に閉めて芙蓉の前まで進み出た。腰を下ろすと、懐に抱えていた木箱を芙蓉の前に押し出して蓋を開く。
    「確認してほしい」
     追眠が示した小箱の中に入っていたのは、一振りの美しい簪だった。果実のように真っ赤に艶めいた赤珊瑚がいくつも連なっており、芙蓉の細い指先がそれを持ち上げるとしゃらしゃらと揺れる。芙蓉は簪を手に取ると、細く繊細なその髪飾りをそっと回し、あちらこちらを確認する。驚きに見開かれていた美しい瞳はだんだんくしゃりと形を崩した。
    「まぁ、まぁ、本当に……! もう戻ってこないかも、って諦めてた……間違いなく、この簪よ。ありがとう、風猫」
     胸の前で抱きしめるように簪を両手でそっと握ったまま、芙蓉は涙ながらに微笑んだ。追眠は淡く微笑む。
    「どういたしまして。贈り主にも報告してやってくれ」
     言いながら立ち上がりかけると、芙蓉が小首を傾げた。しゃらん、と髪飾りが揺れる。
    「もう帰るの? ねぇ、恩人にお茶くらいご馳走させてもらえないかしら」
    「あー……落ち着いて飲んでらんねェからいい。茶器からちり紙一枚まで、ここにあるモン全部めちゃくちゃ高ェだろ」
    「嫌だわ、茶器を割った、弁償よ! なんて、あなたに請求したりしないわよ」
     芙蓉はくすくす笑うが、追眠は譲らない。
    「気持ちだけありがたく受け取っとく」
    「……ねぇ風猫、どうしてそんなに急いでいるの?」
     追眠はぎくりとする。芙蓉はつい先ほどまでのさめざめと涙ぐんでいた様子はどこへやら、利発そうな香色の瞳で追眠を捉えて悠々と微笑んでいる。
    「まるで、誰かがここに来てしまうかもって恐れているみたい」
    「そっ……」
     うっかり言葉に詰まる。目の前にいるのは、この街一の人心掌握のプロだ。芙蓉に安易な嘘を吐くとさらに自分を追い詰めることになるだけだと、追眠は嫌と言うほど知っている。追眠はそのまま口を噤んだ。
    「そんなに焦らなくても、今日オーナーがここに来る予定はないわ」
    「な……」
     にっこり笑顔で告げられた言葉に追眠は一瞬固まって、やっとのことで口にする。
    「なんで分かった」
    「詳しくは何も。でもねぇ、昨日のオーナーの様子と、今日のあなたの態度を見たらなんとなく?」
    「……劉仁、なんか言ってたのか」
    「そうねぇ、ひどく落ち込んだ様子だったわ。オレは何か、追眠に嫌われるようなことをしたんだろうか、って」
     そんなことを言われると、何となく罪悪感でもやもやしてしまう。
    「別に俺は、あの人のことを嫌ってるわけじゃない」
    「やっぱり、オーナーに会ったのね」
    「……あぁ……」
     結局するすると言葉を引き出されている。追眠は目を伏せると、観念して頷いた。

     王劉仁の名前は前から知っていた。
     もともとここに足を運ぶようになったのは、芙蓉をはじめとするここの女性たちに、あれこれと頼み事をされるようになってからだ。そのうちなぜか「オーナーならあなたの力になってくれる」「気にかけてくれる」と劉仁に会うことを幾度となく勧められてきたのだが、追眠はなんのかのと理由を付けて、ずっと先延ばしにしていた。誰が何と言おうと、ヤクザには違いない。わざわざ会って繋がりを作る必要があるとは思わなかったのだ。
     とはいえ、劉仁に対する印象は決して悪くなかった。彼女たちが「尊敬している」「信頼している」と口を揃えて語るからだ。けれど追眠が何度も断っているうちに次第に劉仁と追眠を引き合わせようという声はなくなり、特に芙蓉の見請けが決まってからはここに足を運ぶ機会も減っていたため、あの時、追眠の中でこの仁華楼と王劉仁がすぐに結びつかなかったのだった。
    「会ってみたら思ってたよりすげー若ェし、マフィアのボスなのに、なんか知ってる店の奥から普通に出てくるし、俺みたいなのにも普通に頭下げるし……けど俺、劉仁のこと、ここの楼主なんだって思ったら反射的に拒絶しちまった」
    「……そうだったのね」
    「あんな風にいきなり突き放して、昨日の今日でどんな顔して会っていいのか分かんなかったんだよ、でも、今日の約束を反故にしたくはなかった。それ、早く届けたかったから……」
     追眠は芙蓉の手の中の簪を見遣った。芙蓉は柔らかく微笑む。
    「そんなに迷っていたのにここに来てくれたのね。ありがとう、風猫」
    「別に……仕事として請け負ってる以上、当たり前のことだろ」
    「そんなことないわ。それにね、こういうお店の経営者だときいたら、劉さんがどんな人であろうと黙って受け入れることはできない。あなたの気持ちも、よく分かる」
     こういうお店。はっきり言ってしまえば性風俗。ここは古風だから、遊郭とでも呼んだ方が相応しいかもしれない。なんにしてもやることは同じだ。女性が自分自身を切り売りして身を立てる場所——死んでいった追眠の母親も、そうやって生計を立てていた。あの殺人鬼が来る前は平穏無事に生きていたかと言えば、そうではない。遠い遠い記憶の中で、確かに優しく美しかった母親は、消費され疲弊し、それでも休むことも許されず労われることもなく、だんだんと壊れていった。幼い追眠は変わっていく母を誰よりも近くで見ていた。だから、こうした商売をどうしても受け入れられない。母のように壊れていく人間を生み出す仕事だと思っているし、彼女らに身を明け渡させる楼主を憎んでいる。ここにいる者は大事にされている、王劉仁は悪い人間ではないかもしれない、でも、それでも。追眠は鼻と口を両手で覆って、重く溜息をついた。
    「アンタらを軽蔑してるとか、そんなんじゃねェんだ……ましてやこの店は、働く人間を大事にしてるってのがよく分かる」
    「分かっているわ。ありがとう」
    「やめてくれよ。口ではそう言ってんのに受け入れられない、俺が今言ってるのはそういう矛盾してることだ」
    「そうねぇ、でも……」
     芙蓉は静かに目を伏せると、目の前にもう一度簪を翳した。
    「これね、あの人からのはじめての贈り物なの。なくしたって伝えるとき、もう二度と来てくれないんじゃないかってとても怖かった……私たちはどれだけ願っても、自分から出向くことはできないから」
     首を傾げた芙蓉は追眠に目を向けて、唇を綻ばせた。
    「だけどあの人はまた来てくれて、もう一度買おう、って言ってくれた。嬉しかった。でもね、私、どうしてもこれがよかったの。不慣れな彼が私のために選んでくれた、これが……だから、あなたに頼んだ」
     そこまで話すと、芙蓉は突然くすくすと笑い始めた。
    「あの人ね、私の未来の旦那様……ここに来るまで女性と手を繋いだこともなかったんですって。そんな人がここに来たの、仕事の付き合いとかって。最初は私と目を合わせることもできなかったのよ……ふふふっ、おかしいでしょう? でもね、きっとここでなければ、私があの人と出会うこともなかった。ねぇ、風猫」
    「……うん」
    「受け入れてほしいとは言わない。でも……こういう世界にしか居場所がないと思っていた私たちを、オーナーは受け入れてくれて、それから、居場所は決してここだけじゃないんだって、教えてくれた。劉さんのもとで、私みたいに救われている人間は大勢いるのよ」
    「……分かってる」
     願わくば——かつて血溜まりに沈んで死んでいった母にも、そんな救いがあればよかったのに。なんて、らしくもない思考にぼんやりと沈む。
    「このままにはできねェから、近いうちに、劉仁とはまた話をしてみる」
    「よかった。でもね風猫、ここまで話しておいてなんだけれど」
     芙蓉が、寄りかかっていた腰掛けから離れた。立ち上がった芙蓉の動きに合わせて、花弁のようにふうわりと、薄い羽衣が舞う。
    「受け入れられなくてもいいの。いいのよ、追眠」
     柔らかく優しい声が、耳元で響いた。それは、遠い遠い記憶の中の、追眠を優しく呼んでくれた声と重なった。鼻の奥がつんとする。
    「あなたが背負うものは壮絶だわ……だからね、決して立ち向かわなくたっていいの。目を逸らしても、逃げ出したって構わない」
     とんとん、と、回されたほっそりした腕が幼子を慰めるように優しく背を叩く。夢の中のようにいい香りがした。焚きしめた白檀の香りだ。
    「辛いことを思い出させる話をしてごめんなさい」
     芙蓉は知っている。追眠の母親が身売りをしていて、追眠の目の前で殺されたことを。芙蓉と出会ったころ、言うつもりはなかったのに引き出されてしまった。ただ、その犯人が羅甚仁という連続殺人鬼であることだけは伏せている。それを知れば、芙蓉にも危険が及ぶかもしれないから。
    「……っ」
     追眠は黙って小さく首を振った。違うのだ。感傷に浸るほどに、あの母を愛してはいなかった。愛情なんてとうに枯れ果てていた。何度も何度も手を上げられて、優しい母はいなくなったのだと、ずっと昔に悟っていた。だから涙は溢れなかった。けれど否定の言葉も誤魔化しも強がりも、何を言うこともできなかった。声が喉に張り付いて出てこない。
     あやすように背を撫でる手に目を閉じて、追眠はほんの少しだけ身体を預けた。どれくらいの間そうしていただろう。長かった気もするし、ほんの少しの間だったような気もする。芙蓉がすうと離れて、追眠の顔を覗き込んだ。やんわり微笑む表情は、美しく慈悲に満ちている。
    「劉さんとあなたには返しきれないほどの恩がある。私はもうすぐこの街を去る身だけど、もし役立てることがあれば、なんでも言ってちょうだいね」
    「……うん。ありがと、芙蓉」
     それだけをなんとか口にして、追眠は芙蓉の腕の中から抜け出し言った。
    「でもそれは、俺にも言えることだろ。他に片付け損なってることはないのか? なにかあるなら手を貸すけど」
    「あらあら。あなた、本当にいい子ね。風猫」
    「そ……そういうのはいい。ないに越したことはねェけど、どうなんだ」
    「そうね……」
     芙蓉の美しい眉根が微かに寄り、表情が陰る。
    「ねぇ風猫、この簪を盗んだ犯人は、分からなかったのよね」
    「あぁ。残念ながらな」
     盗まれたのが分かった直後に仁華楼でも入念に調査を行ったが、犯人も簪の行方も分からなかったらしい。ただその後、芙蓉の同僚が古物市で似た簪を目撃した。同僚はまさかその簪が芙蓉のものとは思わず、ただ美しいその品が印象に残り、芙蓉の前で偶然それを話題に上げたのだ。彼女は、その品がどの店で売りに出されていたかもはっきりとは覚えていなかったし、それが盗まれた芙蓉の簪である確証もなかった。それでも芙蓉は、まだこの中華街のどこかに自分の簪があるかもしれないと一縷の望みを懸け、追眠に依頼をしたのだ。
    「それは古物市で売ってるところを見つけたんだ。売ってた店主にも話をきいたが、別の市で仕入れたものを買って売り出してるだけってことだった。市ではいろんな店からたくさんのものを仕入れるから、簪を買った店についても覚えてねェって。だから、それ以前の簪の所在は分からないまま……ここから盗んだ奴の正体も分からず仕舞いだ」
    「そう……実はね、確証がなかったのと、あなたに危険が及ぶのを避けたかったから伏せていたんけれど、私、犯人に心当たりがあるの」
     芙蓉は尚も躊躇する様子を見せてから、ゆっくりと告げた。
    獏乱ムーラン。彼はそう名乗っていたわ。本名かどうかは分からない」
    「ここの客か?」
    「そう、私が指名されたわ。それで……初めて登楼したその日のうちに、出入り禁止になったの」
     これには追眠も眉を顰めた。一発出禁だなんて余程のことをしでかしたに違いない。
    「そいつ、何をやらかしたんだ?」
    「暴力よ」
     芙蓉は事も無げに軽く首をすくめてみせたが、追眠の眉根はきつく寄る。
    「幸い、大事には至らなかったわ。ここにはね、どの部屋にもすぐに助けが求められる仕掛けがあるの……万が一のとき、私たちを助けるためにオーナーが用意してくれた措置。おかげで私も命拾いしたわ。痣がしばらく残ってしまって、その間は仕事をお休みしたけれど」
    「……言えよ」
    「だめよ。言ったらあなた、こてんぱんにしようって動くでしょう」
    「当たり前だ」
    「もう。風猫ならそう言うと思ったから、伝えなかったのよ」
     芙蓉は苦笑を浮かべながら続ける。
    「たまにいるわ、私たちを支配したいと思ってお店に来る人。あの人の場合は、その手段が暴力だったのね。高いお金を払っているから何をしてもいいだろう……そういうことを言われて、手を上げられたから助けを求めたの」
    「……ここのオーナーが、劉仁みたいなまともな奴でよかった」
    「そうね。あの時は、それはもう烈火のごとくだったわよ。劉さんがうちの仕事に関わることであれだけ怒ったのは、私の知る限りあの時だけ」
    「それこそそんな奴がこの街をまだウロウロしてるなら、虎仁帮がきっちりマークしてるんじゃねェのか?」
    「えぇ、そのはず。ただ、中華街にまだいるのは確かみたいだけど、なかなか捕まらないみたい……逆に言えば、ここの皆でも手を焼く相手だってこと。だからね、巻き込みたくはなかったけれど……街のことを知り尽くしているあなたならもしかしたら、尻尾が掴めるんじゃないかと思って」
    「なるほどな。いいぜ、任された」
    「威勢のいいこと。頼りにしてるわ」
     くすりと微笑んだ後、芙蓉は真剣な表情になる。
    「でもね風猫、一つだけ約束して。犯人を見つけても、一人でどうにかしようとしないで頂戴」
    「は? そんなのに俺が負けるって思ってんのか」
    「そうじゃないわ。あなたが強いのは十分知ってる。でも、手段を選ばない男よ。海外の傭兵上がりだとも話してた。何をしてくるか分からない。あなたのことが心配なのよ」
     眉尻を下げて切々と訴えられると、どうも弱い。
    「……わかったよ。見つけたら一旦ここの誰かに報告する」
     仕方なく、追眠は呟いた。
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    みなも

    DONEとんでもない書き間違いとかなければ!これにて!完結!
    7か月もかかってしまった……!
    長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!
    ウルトラバカップルになってしまいましたが、今の私が書けるウルトラスーパーハッピーエンドにしたつもりです!
    ものすごく悩みながら書いた一連の3日間ですが、ラストは自分でも割かし納得いく形になりました
    2024.3.24 追記
    2024.4.30 最終稿
    玖朗さんお誕生日SS・2023【後編・3日目】 ゆっくりと瞼を開けたその瞬間から、身体が鉛のように重く、熱を持っていることが分かった。たまにある現象だ。体温計で測るまでもなく、発熱していることを悟る。
    「ん……」
     起き上がろうとした身体は上手く動かず、喉から出た唸り声で、声がガラガラになっていることに追眠は気づいた。そういえば、引き攣るように喉も痛む。ようやっとのことで寝返りを打って横向きに上半身を起こすと、びりりと走った腰の鈍痛に追眠は顔を顰めた。ベッドサイドテーブルには、この状況を予期していたかのように蓋の開いたミネラルウォーターのペットボトルが置かれている。空咳をしてから水を含むと、睡眠を経てもなお疲れ切った身体に、水分が染みていった。
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