プロムひとり参加サンズはダイニングテーブルでコーヒーをすすりながら、この家に暮らす母子がふわふわとした花のようなドレスを囲んで討論するのを見ていた。
「これがいいんじゃないかしら?」
「可愛すぎないかな?」
「あら、とっても似合ってるわ」
サンズはバタースコッチパイをフォークで一口サイズに切っておもむろに口に運ぶ。
「フリルがいっぱいで子供すぎない?」
「そんなことないわ、ねえ?サンズ」
フォークに刺さったパイはサンズの口に入ると同時にスッと消えた。
トリエルの背中越しにフリスクが、サンズの口元を凝視している。
フリスクいわく『サンズが物を食べる姿は何回見ても不思議』らしい。パイは口に入れた時点でエネルギーへと変換されて咀嚼されることなく消え去るのだ。
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