ステージの中央に立っている自分の姿、というものがどうにも想像できなかった。一方通行のところへ押しかけたあの日だって、何もない自分にできることは何かを教えてもらうために必死だったくせに、本質的な手応えはまるで掴めなかった。パフォーマンスの向上よりも自分の自信のなさを打ち消したくて、藁にもすがるような思いで死にものぐるいで練習に打ち込んだ日々だった。
それが、どうだ。ステージに立った瞬間、それまでの悩みが全て霧散してしまった。
音楽が鳴ったら歌って踊る。それがとても楽しくて、無我夢中で、気付いたときには十数分の持ち時間はあっという間に過ぎていたのだった。
同じ気持ちだったのだろう、終始笑顔で飛び跳ねていたインデックスが先にステージから捌けていくのを、数メートル後ろで見守るようについて歩く上条が客席を振り返る。たったそれだけで、客席は再び熱狂の歓声に包まれた。声だけじゃない、会場の空気がびりびりと震えるのを肌で感じながら、上条は自分が何もわかっていなかったのだなと思った。
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