モーニングルーチン「すまん朱類。悪いが慈光を起こしてきてくれないか。一時間は寝かせてやるって話で休んで貰ってたんだが急な呼び出しで、十分後には顔を出してほしくて」
「え、慈光さんて寝るんすか」
「お前あいつのこと何だと思ってるんだ?」
ロボットじゃあるまいし。朗らかに笑う黒西に腑が落ちぬと生返事をして、朱類将来は言われた通り仮眠室へと向かっていた。
件の男をロボットなどと思っているわけではない。ただなんというか、未だに掴みあぐねているというか。正直疲労に喘いでいる姿もあまり想像がつかなかった。
……無論、そのようなことは全くない。彼も人並みに疲弊するし激務に呪詛を吐く日もある。ただただ、悟られにくいのだ。例外はあるが。
一応ノックをし、扉を開ける。所狭しと寝台が並んだその空間はしんと静まり返っており、一見ひとの気配などないように思えたが、確かにひとつ使用されているらしい区画があった。
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