心の棚リアナの心には棚がある。
食器棚を想像して貰うといいかもしれない。
1番上には扉が付いた棚があり、それより下は普通の棚だ。
扉が付いた棚には、鍵がかかっている。そこに入っているのは両親との思い出だ。
リアナはこれを時折取り出しては大事に大事にしまうのだ。
他の棚に並んでいるのは2つ、養父と、友人であるマリーだけだった。
その棚に載せられる条件は1つ、その愛情を無条件で受け入れるかどうかである。
なぜこの2人なのかといえば、それは本人も理解していないので回答はできない。ただ、本能的にこの2人から受け取ったものはこの棚に置かれて、大事にされるのだ。
彼女に好意を向けている人物は勿論他にもいる。しかしそれらをリアナは受け取っていないのである。
一見受け取っている様に見えて、その実それをそのまま返しているのだ。
しかし相手はそれを愛情が返されていると錯覚する。
そこにリアナの意思は無い。
実際どうか分からないが、少なくとも彼女は無意識でそれをしている。
一旦自分の棚に預けるが、それが定位置になる前に返す。
例えば、例えばである。
彼女が告白をされたとしよう。
初めて会う見知らぬ相手ならともかく、ある程度知った相手なら彼女はそれを受ける。
そして求められればそれを返すだろう。
ハグ、キスーー或いはそれ以上。
決して彼女が自分を軽んじているわけでも、そういう行為を好んでいる訳では無い。
ただ、求められたから応えただけなのだ。
それに気づかずのぼせ上がるか、気づいてしまって虚無を味わうか。
決して彼女からの愛情が無い訳では無い。
どういう感情かはさておき、好意がある事には間違いないのである。
それでも、彼女の感情を、自身の愛情では満たす事が出来ない。
そうわかった瞬間、大体の人間はリアナから離れていくのである。