いつもそばに 木に引っかかった風船が見える。
周りには誰もいない、忘れ去られてしまった風船。
風船といえば、まだ俺が小さかった頃……そうだ、あれはウェインタワーに越してきた翌年、俺の7歳の誕生日だった。初めてアルフレッドと一緒に出掛けた、一緒に行ったコニーアイランドでホットドッグを食べて、赤い風船を買ってもらった。
「ブルース、誕生日おめでとう」
そう言うと、アルフレッドの大きな手が、子供だった俺の細い手首に風船から伸びた糸を結んで、なくさなようにしてくれた。家に帰るまで自分の横に浮かぶ風船を飽きずに、ずっと眺めていた。
タワーに帰り、当時いた両親だけでなく、父さんの秘書や顔も知らない大人たちに風船を見せて回った。そうやってはしゃいでいたときにそれは手首から抜け、キラキラと輝くような絵が描かれた天井に昇った。まるで空に浮かんでいるようだと思ったが、風船に手が届かないことに気づき、慌てた。たまたま通り掛かったアルフレッドが、持っている杖を使い風船を引き戻してくれた。
2030