アップルグミ 新しい街へ辿り着いた後、五人連れ立って観光に赴くことはすっかりお決まりの流れとなっていた。
「そこの旅人さん達! 疲労回復に効果覿面なグミがあるんだが……」
その最中、商人の呼び込みを聞き、先頭を歩いていたアナマリアが足を止める。自然と、連れ立って歩いていた四人も立ち止まった。リディがじっと、商人に対して品定めの視線を向ける。
「ぐみ……とは、なんですの?」
アナマリアの疑問に、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに商人はひとつ頷き、隣のショーケースを指した。各々が自然とアナマリアの周囲に固まり、覗き込む。赤、橙、紫、ピンク等、色とりどりで目に鮮やかな楕円形の小さな塊が、宝石の様に並べられていた。
「疲労回復に効果があるとされるハーブと採れたての果物から搾った果汁を、ぷるぷるの素で固めたものだ。グニグニしていて、癖になる食感だぞ。よかったら試食してみてくれ」
「まぁ! よろしいのですか!?」
ルディロームでの一件の後、金銭の授受が発生するやり取り、しないやり取りについて、きっちりラウルから学んだアナマリアが、パッと表情を明るくさせる。ニッコリ笑った商人が、別で皿に取り分けていたグミを取りだした。嬉々としてひとつ手に取るアナマリア、続けて手に取るシャルル。同じように順番に差し出される。目新しいものをそこまで毛嫌いするタイプは存外居らず、結局全員が楕円の塊を口内へ放り込んだ。
「新食感ですわ……!?」
「意外とハーブの味はしないんですね」
「お兄さんにはちょっと甘いなぁ」
「……いいわね、これ」
味の感想を好きに呟く中、グミを幾つか買い求めた少女の躑躅色の瞳に、研究者の熱が灯る。特製の新作栄養食が近々出来上がりそうだと思いながら、エドは不思議な食物を飲み込んだ。