Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    wamanaua

    @wamanaua

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍤 🍤 🍤 🍤
    POIPOI 46

    wamanaua

    ☆quiet follow

    兄弟で焼肉に行く話。壊れウダくん。一人称がめちゃくちゃ。ラウグエラウ

    焼肉 ラウダは人前であまり食べない。俺がよく食うのでそれと比べちゃ酷だが、それにしても。
     昼食や夕食など、他の寮生と共に取ることも多いが、そいつらと比べても控えめだと思う。しかしパイロット科らしくバランスよく、必要な分を食べる。理性的な食事だ、恐れ入る。俺がちょっとでも食い過ぎようとすると、横目でちら、とこちらを見てくる。それだけで何も言わないが、俺にも自制心が沸いてくる。しっかりした弟だと思う。
     人前では。
    「焼肉に行きたいな」
     今さっき夕食を終え、さぁ部屋に帰って諸々済ませて寝るんだよ、という時にそういうことを言い出す。腹が減ったのか? そういうわけじゃない。今、廊下に俺とラウダしかいないからだ。
     確かにここ最近のラウダの顔には疲労が見えた。それでも文句も言わず、体調管理も出来ているんだろうと思っていたが、限界が来たか。
     じゃあ明日にでも行くか、焼肉。そう提案すれば、「ありがとう」なんて微笑む。「楽しみだな」なんて。
     一昔前は「にいさん、焼肉とか食べたくない?」「本当はにいさんが行きたいんでしょ」「しょうがないな〜」と俺に様々な責任を押し付けていたが、成長したと思う。でもあの頃の悪戯気な笑い顔も可愛かった。今はいつも、ちょっと憂いを帯びて緊張した顔だ。
     二人っきりで焼肉に行けばそんなもん吹っ飛ぶんだが。
    「たんしお」
    「おう」
    「牛カルビ」
    「上な」
    「特だよ、特上カルビ、上カルビじゃない」
    「他は?」
    「……ロース?」
    「他は?」
    「もーわかんない、にいさん決めて」
     もう、これ。
     焼肉屋の個室に入ったら全ての緊張を緩めて椅子に沈んだ。俺が正面に座ろうとすると隣をバシバシ叩きやがる。二人で来て並んで座るってのは、店員が来た時に恥ずかしいのでできればやめたい。カップルでもなく兄弟でだ。世間から見りゃ同年代。どうかしてる。これで言うとおりにしないと大変なので、隣に座ってやるが。
    そうすると即俺の肩に頭を置いて、「メニュー」と言う。単語で会話するな。備え付けのタブレットでメニューを一緒に見るが、ラウダはぼんやりと眺めて、にいさん決めて、とか言う。こいつよう。
     ラウダにとって焼肉とは解放である。理知的で理性的からの。そもそもそんなペルソナを被ってるのが間違いな気がするが……。
     案外ぽやっとしており、喧嘩っぱやく、疲れたら疲れたと口に出し背中にのしかかってくるおんぶお化けだったラウダが、学園では俺の一歩後ろを歩いている。挑発を受ける俺を嗜め、完璧な補佐を行い、感情をあまり(あまり、だ)見せることがない。素晴らしい弟だとよく言われる。本当は無理やり保っているだけなのに。
     それに疲れたら、二人っきりで焼肉に来る。しゃぶしゃぶとか鍋にも行く。そして俺に全部やらせる。俺にやらせる、のがいいらしい。やってもらう、のが贅沢らしい。俺はぶっちゃけ面倒だとは思いつつも、甘えてくる弟はなんだかんだいって可愛いので好きにさせている。
    「にいさんなんで野菜頼むの」
    「食うからだよ。お前もナムルぐらい食えよ」
    「焼肉は肉を焼くから焼肉なんだからラウダは食べないよ」
     自分のことをラウダ、なんて言っちゃってまぁ。人前では僕と私を使い分け、時折俺なんてこぼし、教官の前では自分だとか称したりもするので、俺の前ではラウダはね〜なんて言ってもいい。幼すぎるかなとは思うけど、言わない。俺がグエルはね〜なんて言ったらこいつ絶対キレると思うけどな……。
     というか、野菜を食え。
     タレを作ってやったり、弟の手を揉んでやったりしなきゃいけないから忙しい。そのうちに店員が商品を持って来る。俺たちの有り様を見て、ぎょっと見てくるのにも慣れた。ラウダはまだ俺の肩に頭を預けながら、髪の毛に息を吹きかけて浮かしたりしている。店員が来ようがどうでもいいらしい。知り合いが来たら違うだろうが、とりあえずくすぐったいから本当にやめてほしい。
     届いた肉を、焼く。ひたすら焼く。
     焼けたら弟の皿に置いてやる。箸すら持たない。
     タレをつけてやって、息を吹きかけ少し冷ましたら、口元まで持っていく。
     ようやく食べる。お食い初めか? ヒナか?
    「おいひ」
    「もっとちゃんと食え、口からタレが漏れるぞ」
    「にいはん」
    「分かった肉な、はい肉」
     こいつが自分で箸を握れるようになるまで平均肉10枚だ。今日は12枚かかった。それまで俺はひたすら肉を焼いて食わせている。カルビ美味しいか? よかったな。
     ニコニコ顔で、にいさんは肉を焼くのがうまいね、と言われるのはちょっとイイ。だがこんな焼肉で焼くのがうまいもなにもないだろう。
     ラウダが自分で食えるようになったので、俺もようやく食えるようになる。焼くのは俺だが……。添えで来ていたカボチャだのも焼き始める。
    「なんでカボチャ焼くの」
    「俺が食うからだよ」
    「ラウダいらないよ」
    「わーった、わーってるから」
     ラウダは地獄の偏食家だ。いや、いつもは食えてるから違うのかもしれない。これは甘えだ。
     俺と二人っきりだと野菜を食わない。肉ばっかりだ。殻がついているようなものも、それをとってやらないと食べない。サンチュなんか出そうもんなら「焼肉食べに来てるのになんでなの」とかいう。俺は野菜が食べたいので食う。こいつよくこんな体型保ってるよな、なんて思うけど、普段の節制はもしかしたらこの焼肉のためかもしれない。いや、それはないが……。
     俺も若いので肉を食える。肉がなくなったらとにかく頼む。ラウダはホルモンがあまり好きじゃない、噛むのが大変だから。鶏は焼くのにちょっと時間がかかるので嫌らしい。豚は生だと大変だからあんまり好きじゃない。ともかく牛。牛を頼む。シーフードは、この店はあまり強くないのでナシ。
    「コーラ」
    「あー、コーラな」
     コーラも頼む。
     ラウダも結構肉を食い、だんだん満足してますますニコニコし始めた。俺の肩にまだ持たれながら肉を食っている。ヨダレ出すな! 服につく!
     こいつはこれが素の姿……というわけでもない。わんぱくと称されたこともあるし、ちょっと甘えたとも言われていた。でもこんなどろんどろんのぐっちょぐちょではない。普段気を張っている反動にしても酷いものだが、まぁ、可愛いから。うん、可愛い。どうせまた、次の日になればしっかりものになってしまうのだ。今のうちに甘やかしておきたい。俺もこんな態度だから悪いんだろうけど、しかし弟っていうだけでどうしてこの男はこんなに可愛いんだろうか。
    「にいさん食べてる?」
    「おう、食ってるよ」
    「にいさんも食べなきゃやだ」
    「食べてるって」
    「あーんしたげる」
     それは今俺がお前の皿に置いた肉だが。
     これで固辞するとまた面倒なので、口を開く。息で冷まされもしない肉はまだ熱かったが、うまい。
     ラウダがそれはもう嬉しそうに笑っている。また肉を差し出してくるので、手ずから食べる。そうしたら、肉がなくなったので、焼いて、だと……。まったく……。
    「にいさん、焼けた? 」
    「ほら、あーんしろ、あーん」
    「ふふ、ふふふ」
    「笑ってねぇで口を開けよ」
    「あーん」
     この年の兄弟(しかも同い年だ)がやっていい姿ではないだろう。気持ち悪いと言われればその通り。でも、こういうもんだから仕方がない、俺たちは。いいんだ、どうせ見てるのは店員ぐらいなんだから。
     ……それもダメだよなぁ。大人になって、ますます社会的責任に問われたら、俺たちはどう過ごせというのだろう。それこそ部屋に篭って一日中二人でヤるしかないのではないか。そっちの方がよっぽど不健全だと思うが。
     あまり考えないように、また肉を焼く。ラウダはひたすらニコニコとしている。俺もだんだん、笑えてきた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🍖🍖🍖🍖🍖🍗🍗🍗🍗🍗❤☺☺👏💘🍗💖💖🙏❤🍗☺❤🍖🍖🍖🍖💘🍗💖☺💖❤😭🙏💕☺❤🍖🍖🍖🍖🍖😭😍💕🙏💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    wamanaua

    DOODLEオルグエ。
    お題「記憶喪失になった恋人に、何も伝えず関係をリセットするべきか悩む話」
    バチクソ人間不信でラウぴとかにすこぶる冷たく当たるグエぴがいます。
    花霞 あなたはいったい誰なのですか? と真顔で聞かれるのはさすがにこたえる。
     オルコットが負傷した。パーティー中、整備不良か恨みか何か、天井から照明が落ちてきて、それから俺を庇ったせいだった。普段ならケガをしようがピンシャンしている男だったが、あたりどころが悪かったらしい。俺に覆い被さって動かなくなったオルコットの背をさすりながら、彼の死んだ息子や妻に祈っていた。どうか彼を救ってください。そして彼を連れて行かないでください、と。
     幸い命は助かった。ただ記憶が無事ではなかった。病院で目を覚ました彼を見て思わず流れた涙は、俺のことなんぞちっとも覚えていません、という態度にすぐ引っ込んでしまった。
     まるでフィクションのような記憶喪失だ。自分のことは覚えていない。過去もよく分からない。ただ身に染み付いた動作がある。フォークは持てる。トイレには行ける。モビルスーツは知らない。ガンドは知らない。ジェタークも知らない。俺のことなんかさっぱり。地球も、テロも、亡くした家族のことも……。
    9200