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    yudoufuneko

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    yudoufuneko

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    藍湛の心の声が聞こえるようになった魏嬰の話。
    照れる魏嬰好きなんですけど、照れる魏嬰が見たいがゆえに書いたと言っても過言ではない……。

    藍湛の心の声が聞こえるようになった魏嬰の話 魏無羨が雲深不知処で暮らすようになって数年が過ぎた。道侶である藍忘機がいればほとんどの時間を共に過ごし、仕事で不在にしているときは雲深不知処内を散歩したり、藍氏門弟たちと話をしたり、新しく術を開発して過ごしていた。この日は藍忘機が雲深不知処を留守にしており、帰るのは夕方ごろになるらしい。魏無羨はうさぎに餌をやる藍思追、藍景儀と話ながら時間をつぶしていた。
    「ずっと気になっていたんですけど、魏先輩は含光君が何考えているか分かるんですか?」
    藍景儀は不思議そうにそう尋ねる。その問いに魏無羨はうーん、と少し考え込み答えた。
    「まあ、分かるかな。何となくだけど、藍湛は意外と感情が表情に出るしな」
    「確かにそうですね。魏先輩といるときの含光君はよく笑っていますしね」
    「え、表情変わってます?」
    「変わってるよな?」
    「変わってますね」
    「いや、表情の変化に気づくの二人くらいじゃ……。あとは沢蕪君とか。普通分かんないって」
    藍景儀は渋い表情を浮かべながら魏無羨と藍思追を見ると、呆れたようにため息を零す。むしろ何故表情の変化が分からないのか不思議そうに思い、二人は顔を見合わせる。
    「まあでも、普段藍湛が考えてる心の内はさすがに把握していないが、大体は俺のこと考えてるだろ」
    「魏先輩も含光君のことばかり考えているんですか?」
    「そりゃあそうだ! 今だって早く藍湛が帰ってきてあれこれするんだって考えてるしな!」
    「ちょっと、そういうのは言わなくていいですから!」
    「はは」
    これ以上惚気を聞きたくなくて、藍景儀は耳を塞ぎたくなる。そんな彼の様子を魏無羨は可笑しそうに笑いながら見ていた。
    「そう言えば、魏先輩は今日は術の開発をしないんですか?」
    「そうだなー、特にこれといったものは浮かばないしな」
    「魏先輩の術、夜狩の時にいつも活躍するから実は皆新しい術を楽しみにしていたりするんですよね」
    「そうなのか?」
    「はい。金凌もこの間先輩の術褒めていましたよ」
    「そうかー」
    藍思追の言葉に、魏無羨は嬉しそうに口元を緩ませる。藍景儀もそう思っているのかと、彼はちらりと目をやる。すると目が合った藍景儀は気まずそうに目を逸らしながらこくり、と頷いた。
    「そんなに俺の術は評判がいいのか! それは作った甲斐があるな! まあほとんど暇つぶしで作ったものだがな!」
    「うわー、出たよ天才発言。魏先輩、普通は暇つぶしであんなに術作れませんからね!」
    「まあ俺は奇才だからな」
    「自分で言わないでくださいよ」
    呆れ顔で言葉を零す。すると藍思追が思い出したかのように彼に声をかける。
    「景儀、そろそろ行かないと」
    「あ、そっか」
    「修行か?」
    「いえ、夜狩へ行くのでそろそろ準備をしようかと」
    「なら念のためこの札を持っていけ」
    そう言って魏無羨は二人へ札を数枚手渡す。彼らはそれを受け取ると、礼を言い、拱手して魏無羨の元を離れた。
    「にしても俺の術がそんなに評判が良かったとはな。……藍湛の心の内か」
    先程の会話を思い出しそう呟く。
    「藍湛のことだし、間違いなく俺のことばっかだな」
    想像して彼はふっと笑みを零す。そして何か考えるように空を見上げる。
    「俺のこと考えてるのは分かるけど、実際どんなこと考えてるかは分からないな。なんか考えてたら気になってきた……。よし!」
    そう口にした魏無羨は楽しそうな様子で足取り軽やかに静室へと向かった。
     静室へ着くや否やすぐに文机の前に腰を下ろし、筆と紙を用意して文字を書き始めた。頭を捻らせながら筆を滑らせること一時辰ほどが経った頃、魏無羨は筆を机へ置き、出来上がった札を見て満足げに笑みを浮かべる。
    「これで藍湛が何考えてるか分かるな! 早く藍湛戻ってこないかな」
    胸が躍る気持ちで、彼は藍忘機が帰ってくるまでの間、そわそわしながら部屋で待ち続けた。そして日が傾き始めると静室へ向かう足音が彼の耳に入る。
    「帰ってきた!」
    口元がにやけるのを抑えながら立ち上がり、入口へ向かう。そして襖が開けられると同時に、彼は藍忘機へ抱きついた。
    「藍湛おかえり! 羨羨待ちくたびれたぞ」
    「ただいま魏嬰」
    藍忘機は魏無羨を抱きしめて耳元で返事をする。
    『魏嬰、会いたかった。やっと魏嬰に会えた。嬉しい。魏嬰好き。元気そうでよかった。今日も楽しく過ごせたみたい。魏嬰が笑顔でいてくれた。私を待っていてくれた。魏嬰愛してる』
    「え!?」
    「?」
    「あ、いや、何でもない! お、お腹空いたな! 夕食にしよう藍湛!」
    「うん。すぐに用意する」
    藍忘機は魏無羨を離すと、部屋を出て夕食を用意しに行った。そんな彼を見送った魏無羨はその場にしゃがみこみ、両手で顔を覆い隠す。
    「いやいやいや、なんだあれは!? 藍湛めっちゃ喋ってるし、全部俺のことだし、藍湛俺のこと好きすぎないか? 知ってたが!」
    自分を想う藍忘機の心の声に彼はいたたまれなくなる。それと同時に嬉しくもあった。自分が想像していたよりも藍忘機が自分のことを想ってくれているのだと。
    「待て、今回は今朝ぶりに会ったからあんなだっただけだろう! 常時あの状態っていうのはさすがの藍湛もないだろうし、取り敢えず落ち着け俺」
    自分に言い聞かせるように彼は言葉を口にする。そして藍忘機が食事を持ってくるまでに何度か深呼吸をして速まった鼓動を落ち着かせる。
    「よし、今度は大丈夫だ。他に藍湛が何考えているか聞いてやるぞ」
    力強く彼は頷く。すると藍忘機が料理を手に戻ってきた。
    「ありがとな」
    「うん。食べよう」
    「そうだな」
    二人は向かい合うように座り、箸を手に取った。魏無羨は料理が綺麗に盛り付けられた皿へ手を伸ばし、掴んだ料理を口の中へ運ぶ。
    「うん! うまいな!」
    「よかった。いっぱい食べて」
    そう言って藍忘機もまた料理を口へ運び始める。魏無羨は食べながらちらりと藍忘機の顔を盗み見る。すると再び心の声が彼の耳へ届いた。
    『魏嬰いっぱい食べてる。君は細すぎるからもっといっぱい食べて欲しい。どうしたらもっと太ってくれるだろうか。今度、魏嬰と甘味を食べに行こう。これから暑くなるからかき氷がいいだろうか。夏になると魏嬰の食欲が落ちるから、食欲がなくても食べられる料理を考えないと』
    「……」
    ポトッと魏嬰の端から掴んでいた料理が皿の上へ落ちる。それに気づいた藍忘機が心配そうに声をかける。
    「魏嬰? どうしたの? もしかして体調が悪い?」
    「……あ、いや! 何でもない! お前が美人だからつい見とれてた! はは!」
    そう口にし何とか誤魔化す。そして落とした料理をもう一度掴み口の中へ放る。まだ心配そうな顔を見せる藍忘機だったが、何ともない様子で食事を続ける魏無羨を見てほっと一息つく。
    (何ださっきのは? 藍湛は俺を肥えさせる気か? と言うかずっと俺のこと考えてるし、少しは別のこと考えないのか? ……俺は藍湛に食事のことで相当心配かけてるみたいだな。取り敢えず今年の夏はたくさん食べるように気をつけよう)
    頭の中であれこれ考えながら彼の鼓動はどんどん速さを増していく。彼は作業のように、皿と自身の口の間で箸を往復させる。
    『魏嬰どこかぼんやりしている。やはり体調がよくないのだろうか。後で脈を測って確かめよう。あとは、今日は早めに湯あみさせて床に就いてもらう。毎日とは言ったが魏嬰の体に負荷をかけるのはいけない。毎日魏嬰と触れ合いたいが今日は我慢しなければ』
    「ん˝んっ! けほっけほっ」
    「う、うぇいいん!?」
    突然むせた魏無羨へ藍湛は急いで水を手渡す。彼はそれを受け取って勢いよく口の中に流し込んだ。
    (これはだめだ! 藍湛の心の声が気になるし、想像以上にあいつの俺への想いが強すぎて俺の心臓がもたん! もちろん嬉しいが、こう気恥ずかしいし俺の心臓がかなりうるさい……)
    息を整えながら、それと同時に心を落ち着かせようとする。しかしその間も彼の耳に届く藍忘機の心の声に彼の試みは失敗に終わる。落ち着くどころかさらに鼓動は速くなっていった。
    「魏嬰、顔が赤い。やはり体調がよくないのか。今日はもう休んだ方がいい」
    「いや、大丈夫だ! 体調が悪いわけじゃ」
    「でも今日はずっと上の空で……。私は君のことが大切だ。だから無理はしてほしくない。言いたくないのなら無理に聞き出さない。でも無理するのはいけない」
    藍忘機は魏無羨の頬へ手を添え、諭すような声色で魏無羨へ告げる。
    「いや。あー、分かった! 言うよ!」
    やけくそとも言える様子で、彼は藍忘機の心の声が聞こえる状態にあると伝えた。
    「そうだったのか」
    「怒らないのか? 勝手に心の中覗いたようなもんだぞ」
    「どうして? 私は君にすべて伝えたい。だから今君に私の想っていることを知ってもらえて私は嬉しい」
    『魏嬰が私のことを知ろうとしてくれてとても嬉しい。思ったことは口にしているつもりだがすべて伝えるのはきっと時間が足りない。魏嬰が私の口にしていない想いまで知ってくれたら、私がどれほど君を愛しているのかを知ってもらえたら私は嬉しくて仕方がない。魏嬰が好きだから、魏嬰とずっと共にありたいから一緒にいるうちは魏嬰に好きだと伝え続けたい――』
    「うわあああ、藍湛! ちょっと心の中で喋るのやめてくれ! 俺ばっかりこんな思いして卑怯だろ!」
    「なら私にも同じ術を使えばいい。私も魏嬰が何を想っているのか、口にしていない君の想いを知りたい。魏嬰のすべて私に教えて?」
    首を傾げそう告げる藍忘機に、魏無羨の心臓は破裂寸前だった。何年経っても藍忘機から向けられる曇りのないまっすぐな愛情には胸が高鳴り慣れない。体中に熱が広がり今すぐどこかへ身を隠したくなった。
    『ふふ、魏嬰可愛い。好き。愛している。今すぐ触れたい、抱きしめたい。口づけたい。魏嬰を私で満たしたい。ずっと私のことだけ考えていて』
    「ら、らんじゃ、俺の負けだからもうほんとむり……」
    「魏嬰可愛い」
    「口にしなくてもいいからぁ」
    「ふっ」
    「笑うなよ」
    「私も今の君と同じようにいつも君には心を乱されている。今だってこんなにも胸が高鳴っている」
    そう言って藍忘機は魏無羨をぎゅっと抱きしめ、自身の胸の辺りに彼の顔をくっつける。トク、トク、と表情からは想像できないくらい早鐘のように鼓動していた。それを聞いた魏無羨は、藍忘機も同じように心臓が破裂しそうなほど鳴っているのだと知り、可笑しくなる。笑みが込み上げ、彼は気付けば声を出して笑っていた。
    「ははっ! 何だ、藍湛も同じなのか!」
    「うん」
    短く答えた藍忘機の耳は赤みを帯びていた。魏無羨はひとしきり笑った後、ふぅ、とひとつ息を吐く。そして顔を上げて藍忘機の顔へ両手を伸ばす。その手は彼の首へ回された。
    「なあ藍湛。俺たち道侶になって何年も経つのに未だに新婚みたいだな。俺はお前からの愛情には一生慣れず、いつまで経っても照れている気がするぞ。藍湛もそのままでいてくれよ。俺一人だけなんてなったら酷いからな」
    「私が君といて平静でいられることなんてこれまでもこれからもない。私は君といる限りずっと君が愛おしくてたまらないし、君といると鼓動が速くなるだろう。きっと私たちはこの先も変わらないのだろうな」
    「あ、でもお前の性欲はもう少し落ち着いてくれてもいいんだぞ」
    「それは、ない」
    「はは、お前、俺がおじいちゃんになっても抱きそうだな」
    「うん」
    「即答だな。そうだよな、お前はどんな姿であろうと俺が好きなんだもんな。しわしわのおじいちゃんになったところで変わらないか」
    「変わらない。君は君だ。私は君を愛しているのだ」
    「そっか、なんかすごく嬉しいな、それ。俺も藍湛が好きだぞ。お前がおじいちゃんになろうと、藍先生みたいに髭を蓄えたとしてもな」
    気づけば二人は互いに愛を伝え合っていた。そして意図せずに互いの未来のことを話していることに気づいた彼らは、心の中に温かいものが広がる感覚に襲われる。この先も共にいることを疑いもせず、それが当たり前であるかのように話せることが彼らにとっては特別であり、この上なく喜びを掻き立てた。
    「藍湛、俺はお前の心の声は聞こえなくていいと思ったよ。俺に伝えたいことがあるならこれから先、一つづつゆっくり伝えていけばいい。俺たちの人生はまだまだ続くんだ。俺も藍湛への想いは長い時間かけてゆっくり伝えていくさ」
    「……うん。そうだな。魏嬰、愛している」
    「急だな。……俺もだ、藍湛。愛している。藍湛が好きでたまらないんだ。日々お前のことを好きになっていく。終わりがないんだ。この先どこまでお前のことを好きになっていくのか楽しみだよ」
    「うん。私も、毎日魏嬰のことが昨日よりも愛おしいと思う。この上なく愛していると思ってもさらに上がある。まだ君を好きになれるのだと嬉しくなる」
    「そうだな! やっぱり俺たちは最高の道侶だな! 正直世界中のどの道侶よりも最高だと思うぞ! 藍湛、俺たちで最高の道侶だって証明するぞ! そのためには有言実行だ!」
    そう口にして魏無羨は藍忘機の目を何も言わずじっと見つめる。すぐにその意図を理解した彼は笑みを浮かべる。
    「毎日、だな」
    「そうだ!」
    「分かった」
    藍忘機は高まる感情を抑えながら、自分の首に腕を回している魏無羨を抱き上げ立ち上がる。そしてはやる気持ちを抑えながらゆっくりと寝台の方へと向かった。

     この時、魏無羨は藍忘機の声が聞こえることを失念しており、その後自身の発言を後悔することとなった――。
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