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    ru_za18

    @ru_za18

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    ru_za18

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    限定公開作品
    twst カ/リ/ム×not監(婚約者)+ジ/ャ/ミ/ル

    カ/リ/ム/が好きで会いに来てしまった婚約者とジ/ャ/ミ/ルのお話。
    視点は色々と変わりますが、基本🐍視点。
    ⚠️捏造たくさん、4章後のお話

    熱砂の薔薇には棘がある 月が天に高く座している。もう周りに明かりは見えず、煌々と照らすのは月の光のみ。月の明かりを頼りに、自らが踏み締める砂の音だけが聞こえ、風が緩やかにマントを揺らし、通り過ぎるのを感じる。
    「……やっと、見つけましたわ」
     明かりの灯らない真っ暗な宮殿を見て、にやりと口角が上がる。ここまでの道程は、もちろん長いものではあったけれど。
    「貴方様の為ですもの。……ねぇ、カリム様」
     その声は誰にも聞こえることなく、風と共に消えた。


    「おやすみ。ジャミル」
    「あぁ、早く寝ろよ」
     従者のジャミルを見送り、部屋に差し込む月明かりを頼りに布団へ潜り込む。今日も楽しい一日だった。あった出来事を振り返りながら、ゆっくりと瞳を閉じる。暗闇の中でふと頭を過ぎったのは、『明日は何をしようか?』ということ。ジャミルに怒られない程度に、楽しいことを。そんなことを考えれば、眠ろうとしているのに心は踊るばかり。
     ――あぁ、ダメだ。明日も学校なんだから、早く寝ないと。
     過ぎった考えを振り払おうと、寝返りをうつ。
    「……ん?」
     気の所為、かもしれない。けれど、何か物音が鳴った気がした。軽くて小さな、コツっという音。鳴っていないかもしれないのに、一度気になると、どうして人はこうも意識がそちらへ行ってしまうのか。
     ――少し見るだけだから。
     そう自らを言い聞かせて、ゆったりとした足取りで窓へ向かう。恐る恐る窓に手をかけ、周囲を見渡す。けれども、そこに人影や物影などはどこにもなく。やっぱり気の所為だった。そう納得して息をつけば、どうやら緊張していたらしく、肩の力が抜けたことがわかった。だけど、これで心配事無く寝ることが出来る。弛んだ気持ちに呼応するように、眠気がじわじわとやってきた。ごろりとベッドに寝転がり、少し重くなった瞼を開いて天蓋を見上げれば。
    「……うわぁぁっ」
     あるはずのない視線と交わったことに、眠気は吹っ飛び、思わず叫んでいた。上から落ちてきた何か。逆光と目深く被っているフードで顔は見えないが、影からして人だろう。それに口を塞がれ、馬乗りにされる。
     ――もしかして刺客が
     手元にマジカルペンは無く、上のやつも重さはないのに力で負けているのか、相手を押し返そうとしても動くことがない。
     ――俺、ここまでなのか……?
     そう覚悟して、ぎゅっと瞳を閉じれば、ふわりと香ったアデニウム。そして、耳元で聞こえた声に驚愕した。
    「お会いしたかったですわ、カリム様」


    「さて、明日の朝御飯の準備でもするか」
     カリムの就寝の用意も終わり、自分の時間――とも行かず。明日が少しでも楽になるよう、事前準備をする為に厨房を目指す。明日は何の料理にしようか。きっと、カリムは何を作っても“美味い”と言うのだろうが、あれこれと料理の候補が浮かぶのは長年やってきた従者としての責務からだろう。決して、あいつの為ではない。こういう時に頭に浮かぶのも、長く一緒にいたからだ。
    「明日のターバン……用意したか?」
     そんなふうに、ああだこうだと考えていれば、ふと思い出したこと。明日、カリムが巻くターバンを用意し忘れている気がする。確認するのは明日の朝でも良いが、せっかく思い出してしまったのだ。
    「はぁ……」
     深い深い溜め息を吐きながら、用意が出来ているのかを確認する為に、来た道を戻っていく。
    『……うわぁぁっ』
    「……カリム?」
     行く先から少し小さく聞こえてきたのは、よく聞き慣れた声。
     ――何があった?刺客?……いや、ここはナイトレイブンカレッジだ。そんなことは無いはず……。
     そう考えていても、不安は少しも拭えない。気付けば、俺はカリムの部屋へ駆け出していた。
    「カリム」
     叫ぶように名前を呼ぶと同時に開けた扉。そこから見えた光景は、自らの主人が何者かに乗られて動けなくなっている姿。それを見て、考えるよりも動き出す方が幾分も早かった。
    「っ離れろ」
    「………」
     マジカルペンを構えながら駆ける。距離が近付けば、上に乗った奴はふわりとマントを靡かせながら宙を舞い、音もなく着地した。本当に人間かと思うほど、音が立たなかった。相手が少し離れたことで、先程よりは自分の気持ちに余裕が出来たらしい。このまま警戒をと、マジカルペンを何かに向けながら少し落ち着いた頭で、ゆるゆると起き上がったカリムに近寄る。
    「カリム!大丈夫か⁉ケガは⁉」
    「あ、あぁ……何ともない……」
    「待っていろ。俺が刺客を……カリム?」
     刺客を倒さなければ。そう思ったが、服をカリムに引っ張られて制止された。
     ――何故だ?こんなやつを庇う必要が?
     考えを巡らせても、答えは辿り着くことなく、疑問が浮かぶのみ。
    「あいつは敵じゃないんだ……」
    「は?どういうことだ?」
     カリムの言葉に、尚の事意味がわからなくなる。確認をしなければと刺客へ目を遣れば、いつの間にか、奴は着地した位置におらず。マントを纏っていたのだ。衣擦れの音くらいしても良いはずなのに。何処へ行ったのかと辺りを見渡せば、見つけ出すより前に、パチリと音がして部屋が明るくなった。
    「……お前は何者だ」
    「あのな、ジャミル……」
    「カリムは静かにしていろ」
    「………」
     音の鳴った方を見れば、そこにいたのはあの刺客。部屋の灯りを点けたのは、刺客だったらしい。背はカリムと同じくらいだろうか。マントを纏っているからわかりにくいが、細身のようにも思える。だが、カリムが動けないくらいだったのだ。おそらく、細身でも力はそこそこにあるのだろう。
     そうして警戒していれば、くすくすと笑う声が聞こえた。それも、少し高めの女性の声。
    「カリム様の言葉を遮るのはよろしくないわね……ですが、御身を案じ、守ること。流石、カリム様の従者だわ」
     聞こえた声と、フードが取られたことでようやく相手を認識する。カリムの言う通り、この方は敵では無かった。
    「何故貴女がここにいらっしゃるんですか、婚約者様」
    「あら。私、カリム様に会いに来たのよ」
     マントを纏い、フードを目深く被り、宙を舞った上にひらりと音もなく着地、移動する。刺客のような動きをしたこの方は、カリムの婚約者様。にこりと笑う様は、優雅で気品に溢れているが、それもそのはずだ。この婚約者様は、一国の末娘。つまりは、王女なのだから。まぁ、行動がおかしいことこの上ないが。“様”を付けているのも、王族だからであって他意はない。
    「全く、カリム様に会いに来たと言うのに……ジャミルは私に気付くこともなく、刺客扱いだなんて……大変残念だわ」
    「……格好が刺客のそれでしたからね」
    「あぁ。俺もベッドの上にいたときはビックリしたけど、その格好も似合うな!」
    「カリム様……!照れてしまいますわ、ありがとうございます」
     そして、今回の行動でも分かる通り、カリムに惚れ込んでいる。こうして寮にまで入り込んできたのは初めてだったが、ホリデーに戻るたび、気付けばアジーム家へやって来ているのだ。そして、いる間中、幾度“カリム様”と呼んでいるのを聞くことか。一度、一日に何度呼んでいるのか数えてやろうかと思ったが、昼前で数が大きくなり、面倒になったので止めた。
     今回のホリデーは戻らなかったから、何度も呼ぶ光景を見ることが無かったというのに。何故かホリデーに帰ったときの光景が、今ここに。早く終わらせようと、カリムと婚約者様の間に立つ。
    「俺達は明日も学校です。お帰りください」
    「ここまで来たというのに、帰らせると言うの?」
    「当たり前です。ここは男子寮ですから」
    「私は婚約者ですもの。未来の旦那様とベッドを共にしたとて、問題は無いでしょう?」
    「ありますよ、貴女は王族の自覚が無いんですか?」
     いくら婚約者と言っても、相手は王族。そして、まだ成婚もしていない状態で、カリムに至ってはまだ学生なのだ。結婚前の王族、それも王女に、カリムだから万に一つも無いだろうが傷物にしてみろ。世界有数の大富豪であるアジーム家でも、終わりかねない。
    「ほら、早くお帰りください。ナイトレイブンカレッジなら、誰かしら相手をしてくれますから」
    「……カリム様、悲しいですわ。私達の間には、障害があるのですね……」
    「あ、そ……そうかぁ?」
     カリムへ縋り付くように、悲しそうな表情をしながら俺を通り越して寄っていく。カリムはカリムで、俺もこの場にいて、何と言っていいのかわからないのだろう。肯定も否定も出来ず、困ったようにこちらをチラチラと見ている。『お前の婚約者だろう』と言いたい気持ちもあるが、カリムが言えないだろうこともわかっていた。
     今日でどれほどの溜め息を吐いたかわからない。思わず出た溜め息をそのままに、魔法でカリムを引き剥がし、これまた魔法で婚約者様をふわりと浮かせる。
    「なっ……」
    「さ、どうぞお帰りください」
     抵抗する暇も無く、窓から円弧を描きながら婚約者様を飛ばした。
    「あぁぁぁージャミル女の子に何てこと……」
    「大丈夫だ。あの方なら無傷で学校まで戻るだろうさ」
    「ジャミルの魔法か?」
    「……いや」
     否定をしながら空を見上れば、まだ目で確認出来る婚約者様。見ていれば、空で甲高い指笛の音がして、大きな鳥が二羽飛んできた。あの方のマントから伸びたロープが両の鳥の足にかかり、その鳥に連れられ飛んでいく。
    「カリム様ーおやすみなさいませー」
    「……お、おうおやすみー」
    「何で返すんだ……」
     婚約者様の行動が、いまいち理解出来ていなかったのか。少し呆けていたが、安心したのかカリムも返事を返していた。
     ただ、夜更けの空に響いた大声に、起きた奴がいたのだろう。他の部屋から少し、話し声が聞こえてくる。色々と聞かれるのも厄介だ。
    「ほら、お前も早く寝ろ」
    「……うん、そうだな」
     今度こそ、カリムが床に入ったのを確認し、自らも部屋へ戻る。明日の用意が出来ると思っていたが、時計を見ればもう就寝時間。結局、何も出来なかったと落胆しながら、部屋までの道程を行く。
    「……ターバン、確認し損ねたな」
     本日で一番大きな溜め息を付きながら、朝の準備項目を一つ、頭の片隅に追加したのだった。


    「……はい!では、今日はある国の王女様が見学に来ていますからね。皆さん、しっかりと、大人しく、一日を過ごしてください」
     朝をいつもより慌ただしく過ごし、いつも通り登校する。朝一の授業は、カリムのクラスと合同で魔法史だったかと準備をしていれば、扉を開けて入ってきたのは学園長と婚約者様。
    「げっ……」
    「あ!おーい」
    「まぁ!カリム様学園長。私、カリム様のお隣で授業を受けてみたいわ!」
    「そうですねぇ……許可します!なにせ私、優しいので」
    「流石ね、学園長」
    「……いや、何でだよ」
     スリットの入ったマーメイドドレスの裾を揺らし、キラキラと宝石のアクセサリーを煌めかせながら歩く姿は、本当に華やかなもので。教室内に、ほうと感嘆の息が漏れていた。これも、本来の姿を知らないからこうも見惚れられるわけで、そうでなければ目を逸らしたくなるというのに。
    「カリム様、どうぞよろしくお願い致します」
    「おう!一緒に勉強、頑張ろうな!」
    「えぇ、もちろんですわ」
     朝のそれからというもの、その日は魔法史、錬金術、体力育成、古代呪文語と婚約者様が見学していた。時折、カリムと離れては俺の様子をじっと見ている。
    「ジャミルさん。王女様、貴方をよく見ていますね」
    「……あの方のあれは気紛れだ。気にするな」
     アズールも、婚約者様の行動を見ては面白がって揶揄ってくる。正直、こちらを見てくるのは止めてほしい。居心地が悪くて仕方がない。
     そんな気持ちを抱えている内に、昼休みがやって来た。今日は学食ではなく、俺が作った昼食だ。どうやら、カリムのクラスはまだ授業が終わっていないようで、中庭の日当たりの良いところで昼飯の準備をする。
    「……そこにお座りください。立ちっぱなしは疲れるでしょう」
    「あら、気になさらないで。もうすぐ、カリム様もいらっしゃるでしょうし」
     準備の間、後ろにずっと立たれるのが落ち着かなくて、少し離れたベンチを勧めてみたが、さらりと躱された。
     ――それにしても、何だって今日はこんなに付いて回っているんだ?
     手を動かすスピードはそのままに、浮かぶ疑問の答えは出てこない。が、それも婚約者様の一言でわかることになる。
    「……ジャミル。貴方、カリム様に仇なしたそうね」
     聞こえた言葉に、ヒュッと息を飲む。カリムの前では聞くことがない今の声色は、昨日の刺客の印象がピッタリ当て嵌まるくらい冷たくて硬い。そして、王族だからだろうか。圧もずしりと圧し掛かってくるようだ。世界中に知られたのだ。執り成しても無駄かと、婚約者様へと向き直る。
    「……その通りです」
    「それでも、貴方がここに……カリム様の近くにいるのは何故?」
     表情なんてまるでない。相手は魔法を使えず、更には女性であるはずなのに、眼光は蛇のように恐ろしく、こちらを見透かしているようで動けなくなっている自分がいた。
    「……カリム、が……いるから……」
    「裏切ったというのに?カリム様の優しさに、付け込んでいるということかしら?」
    「違う俺は……」
     付け込んでいるのではない。かといって、友達はお断りだ。
     ――なら、俺は…?俺は、従者としてここにいるのか?
     その感覚はもちろんある。でも、もっと――違う何か。あいつと共に、ここにいることに理由があるというのなら。
    「従者として……そして、あいつに遠慮しない……対等な一人の人間として、ここにいるからです」
     カリムは対等な関係でライバル、友達になろうと言ったが、俺の中では違った。そのような括りではなく、ただの“俺”としてあいつとここにいる。ちぐはぐな考え方ではあるけれど、俺の今の気持ちが、それだと思った。
    「“従者”と“対等な一人”では、相反するように思えるけれど……昨日からの様子を見る限りは、そうなのでしょうね」
    「……え?」
     てっきり、納得はされないだろうと思っていたので、驚いてしまった。けれども、婚約者様の声色は、先程より幾許か柔らかく感じる。
    「昨日、カリム様の元へ駆け付けた貴方の行動は、間違いなく従者であり、心配した姿は従者というより、一人の人間としてだったわ。友人としても見えるけれど……」
    「それは違います」
    「……でしょうね。そして、今日も、登校の様子から見ていたけれど、甲斐甲斐しく世話し、側に控えて、勉学のわからないところを助け、他愛のない話をする。……そうね、わかる気がするわ」
     ゆっくりと伸ばされた手は、指が俺の輪郭をなぞり、肌が粟立つ。幾許か柔らかく感じたとはいえ、目の前の方は俺より小さくても捕食者のようだ。
    「ジャミル。次にカリム様に仇なせば、カリム様が何と言おうと私は許さなくってよ。側にいる限りは、従者であれ、一人の人としてであれ、きちんと向き合うことよ。良いわね?」
    「…………」
    「悪い!待たせちまったー」
    「カリム様!お待ちしておりましたわ!さ、お昼に致しましょう」
     返答を、しようとした。そんな時にカリムが来たものだから、しそびれてしまったが。カリムが来た瞬間、満面の笑みで迎える婚約者様は、恐らく傍目には可愛らしく、美しく映るのだろう。先程の冷淡で見透かし、カリムの為ならこちらの様子を狙い、伺っている様が素だというのに、誰も気付かない。
    「さ、カリム様。お座りになって。あぁ、そうだわ。ジャミル、こちらに」
    「……はい」
     何かあったか。呼ばれたので近くまで行けば、小声で話しかけられる。
    「昨日の夜の対応は、従者として合格点よ。相手が王族であれ、過ぎた行為には戒められる者でなければ。投げ飛ばそうと思うくらいの気概も良いわね。……将来、仕えてもらうのが楽しみだわ」
    「……まだ、どうなるかわかりませんがね」
     にやりと笑って言う貴女は、さながら悪役のようで。素が怖くはあるけれど、王女である婚約者様に言い返せたのも、投げ飛ばすことが出来たのも、幼少からの馴染みだからでもある。この方なら大丈夫だと、わかっているからだ。
     苦笑で返したけれど、能天気で明るすぎる主と棘を隠し持った薔薇の様な奥方。そんな二人に仕える未来も、悪くないかもしれない。そう思ってしまったのは、俺だけの秘密だ。
    「ジャミルも王女もどうした?二人共大丈夫か?」
    「えぇ、今参りますわ」
    「あぁ、すぐに用意する」
     今はただ、このどこか眩しく感じる日常を、一つ一つ過ごしていくだけだ。
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    ru_za18

    DONE桑さに
    青空でのお題提出作品
    あることから本丸を逃げ出そうとした主と見つけた桑名のお話

    捏造設定あり
    暗めのお話
    エゴだとしても 物音一つしない、丑三つ刻。今日は生憎の曇りで、本来ならば見えたであろう満月も今は姿を隠している。
     そんな中を小さい鞄一つを抱えて、出来るだけ足音を立てないように廊下をゆっくりと歩く。部屋から出て少し進んだところに、『風通しのためだ』と開けてもらっていた雨戸が見える。そこに辿り着いては息を潜めて辺りを見渡し、誰もいないことを念入りに確認した。
     ――見つかるわけにはいかない。
     緊張感から息をすることすら忘れて、確認出来たと同時に人が通れる程だった雨戸から庭へと下りた。素足のまま下りたものだから、庭に転がる小石たちが『自分はここだ』と存在を主張してくる。痛みを伴うそれを無視しながら、歩く速度はどんどん早まっていき、前へ前へと足を出す。終にはとうとう走り出して、目指す先は本丸の門だ。春には桜の花弁を浮かべた池の横を通り、近くに向日葵が咲いていた畑を横切り、可愛い色だと埋めたチョコレートコスモスの花壇を越え、冬には雪の帽子を被っていた椿の垣根を抜ければ、辿り着いたのは目的地。しんと静まり返る中に佇むそれは、私の最後の覚悟を問うているように思えた。
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