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    ru_za18

    @ru_za18

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    11/5 「江華絢爛♡darling!!」

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    ru_za18

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    11/5「江華絢爛♡darling!!」限定公開作品。
    松さに
    バグで松井だけが来ない本丸。
    そんな中、同じく審神者である妹の松井に一目惚れするが、その松井は妹と結婚していた。
    以前から、妹へ嫉妬心を抱いていた為に悪意を向けてしまい――。

    ※捏造設定あり

    待ち望んだ青が今「主、今回も……」
    「……そう。ごめんね、ありがとう」
    「いえ……」
     苦笑した私の目の前に座っているのは、部隊長の篭手切江、豊前江、桑名江、五月雨江、村雲江、稲葉江。出陣後の報告に来てくれたのだけれど、皆浮かない顔をしている。
     負けて帰ってきたわけではない。むしろ戦は勝利を収めているし、上出来と言っていい程の戦果だ。ならば、何故こんなにも沈んでいるのか――。
    「何で松だけ来ねぇんだ?」
    「玉の数さえ集めれば、来るはずなのですが……」
    「雨さんの言う通りだけど……うちには配布されない、とか?」
    「えぇー?そんなことある?」
    「だが、現に松井は来ていないぞ」
     江の刀達が話している松井江。江の刀の中で、うちには松井江だけがいない。
     ちょうど今回出陣してくれていた先が、定期的に出陣出来るようになる秘宝の里。玉も集め、一定数の数は達した――はずなのだ。篭手切に始まり、豊前、桑名とうちにやってくる刀達。稲葉の数まで、玉は集まっている。なのに、松井だけがやってこないのだ。
    「本丸のバグでしょうか?」
     そう問うたのは、会議で出会った時の政府に対してだった。秘宝の里へは時の政府が調査し、“問題なし”と判断された後に期限付きで入ることが出来る。そこでしか会えない江の刀達を戦力として迎えられるよう、定期的に調査されていた。“問題がない”とされているのに、何故こうなっているのか。それだけが聞きたかった。
    「そうですねぇ……調べてはみますが、何とも……。審神者との相性もありますから」
    「それは……相性が悪ければ、『刀剣男士自体が来ない』ということですか?」
    「可能性はありますね。向こうも意思がありますから」
     ガツンと、殴られたような感覚だった。『江のみんなの仲間を迎えたい』と、ただそれだけを思っていたのに、迎えられない原因が自分かもしれないだなんて――。
    「そう……ですか……」
     その後、何を話していたのかは覚えていない。けれど、ずっと頭を占めているのはみんなに対する罪悪感だ。
     ――私がもっとしっかりしていたら……相性が良ければ、松井だって来たのかもしれないのに。
     ふらつく足取りで戻った本丸で、顔面蒼白な私を出迎えてくれたのは、確か江のみんなだった。
    「私のせい……ごめんね……」
     ぽつりと呟いた私に、訳が分からなくても心配して気にかけてくれた彼等の優しさが、嬉しくも辛くて申し訳なかった。
     ――もう、松井は来ないのかもしれない。
     『自分のせいだ』と自らを責め続けたからだろうか。本丸にいるのも辛くなり始め、ふらりと外に出たある日のこと。
    「姉さん?」
    「……久しぶりだね」
     同じ審神者である、妹に出会った。久々に会ったというのに、私の口から出た言葉は短い上に冷たく重い。仲が悪いというわけではない。むしろ、妹は優しげな眼差しを向けてくれる。ただ私が、劣等感を感じてしまうのだ。
     『あの子になりたい』と思ったことは、一度や二度ではない。愛らしい姿、私よりも高い霊力、細やかな気遣いも出来て、頭も良く、気概もある。そんな審神者である妹を、彼女の本丸に所属する刀剣男士を始め、両親、時の政府、審神者仲間。誰もが気にかけ、愛し、期待した。
    「本当に助かりました!」
    「次世代を担う審神者は貴女ですね」
    「可愛らしい上に、仕事も出来るなんて!」
    「お前は私達の誇りだ」
     そう声をかけられるのがあの子。
    「また次回、頑張ってください」
    「貴女はいつも平均的なのよ」
    「もう少し努力出来ないのか?」
     そんな言葉を投げられるのが私だ。同じ審神者である私に向けられることがない期待や関心それらを、あの子は一心に受けていた。
     私と刀剣男士の関係は、悪くはないだろう。けれども、あのバグで私が負い目を感じているのは確かだ。時の政府からだって、最初はかけられていた期待も段々と薄れていき、今に至っては『バグを起こした問題ある本丸』とレッテルを貼られている。
     両親もそうだ。妹の活躍を喜ぶばかりで、私には『努力しなさい』と言葉をかけるだけ。
     ――寂しいなんて思ってはいけない。これが私の価値なんだから。
     そう認めて諦めなければ、私の心が傷付くだけ。そうするしか、心を保つことが出来なかった。
     とはいえ、妹に対して湧き上がってくるのは妬み嫉み。妹が悪いわけではないことをわかっている。けれどそんなことはお構いなしに、負の感情を抱いてしまう私の醜さが、浮き彫りになってしまうことが耐えられなくて、逃げ出したくなる。だから、彼女には会いたくないのだ。
    「一人?ここで何してるの?」
    「……散歩よ」
    「散歩かぁ。少し向こうに、綺麗な花が飾られているところがあるのよ」
    「そう。わかった」
     口を多く開けば、悪意を彼女に言ってしまいそうで淡々と返す。あまり私が話したがらないことはわかっているだろうに、久々に会えたからなのか妹の話は止まらない。
    「あ、そうだ!今度、私の本丸へ遊びに来て欲しいの。改めて報告したいことがあって」
    「……私も忙しいから」
    「お願い!お母さんやお父さんより、先に姉さんに報告したくて……」
     断りたかった。けれど、両親が後から来るのであれば、断ることは出来ないだろう。『何故行かなかったのか』と両親に言われてしまうのも面倒だった。
    「……わかった」
     渋々了承した私に、諸手を挙げて喜ぶ妹。
     ――何がそんなに嬉しいんだろう……。
     そう考えてしまうくらいに、妹を見る瞳は冷ややかなものだったと思う。けれど、妹が何も言わないのは、ずっと好意に囲まれていたから悪意に気付いていないのか、それとも気付いていて敢えて見過ごしているのか。意図が汲み取れないまま、日程の調整を行った。


     妹の本丸を訪れる日がやってきた。既に気分は重い。
    「お待ちしておりました!どうぞ」
    「足元にお気を付けください」
    「ありがとう」
     到着を知らせれば、出迎えてくれたのは前田と平野。先導してくれる彼等に付いていけば、会う男士達に歓迎の言葉をかけられる。
     ここは余所者である私にも優しい。そんな温かい本丸は、妹の人柄を表しているようだった。温かで穏やかで微笑ましくて。そして、それを見る私の心はどろどろと腐ったもののようで、その対比が辛かった。
    「大丈夫かい?顔色が悪いけれど」
    「あ……大丈夫、です」
     相当酷い顔をしていたのだろうか。声をかけてくれた男士を見れば、うちにはいない松井江だった。
    「気付かず、申し訳ありません……」
    「大丈夫ですか?」
    「大丈夫……。気にしないで」
     気にしてくれている前田と平野に、曖昧に微笑む。松井の指示で妹を呼びに行った二振りを見ながら、意識は別のところへと行っていた。
     松井江。男性でありながらも、中性的な印象。刀故の美しさ、なのだろうか。一瞬の内に目を奪われ、胸が高鳴った。
    「あの……」
    「松井!」
    「あぁ、主。姉君が来ているよ」
    「ありがとう」
     そして、落胆した。妹と松井の優しい表情に、松井の甘さを含んだ声。決定的な、左手に嵌まった揃いの指輪。
    「結婚……したのね」
    「そうなの!それを一番に姉さんに知らせたくて、今日呼んだのよ」
     嬉しそうに笑う妹は本当に幸せそうに見える。何とも微笑ましい光景だろうに、私には色褪せて映った。
     ――どうして、私じゃないんだろう。私と妹では、何が違うの。もっと、可愛ければ良かった?それとも霊力?優しさ?頭の良さ?
     ぐるぐると考えても答えが出ずに巡るだけ。どれだけ努力しても、見向きもされない自分。好きだと思った人も、妹を見つめている。彼女は、私とは何から何まで違っていたのか。
    「どうして貴女ばかりが……」
     “幸せなの”
     そう続いた言葉に、場が凍りついたのがわかった。青褪めた妹を抱きしめ、こちらを睨む松井。一瞬で失恋したとはいえ、好きな人に睨まれるだなんて苦笑しか浮かばない。ずっと、心に秘めたままでいるつもりだったのに。この醜い感情には蓋をするつもりでいたというのに。
     ――でも、貴女は結婚まで出来るのに、私は会うことすら出来ないなんてずるいじゃない……。
     バグが無ければ、まだもう少し妹と向き合えたのだろうか。そうだとしても、口に出してしまったのだ。もうここにはいられない。
    「帰るね」
    「あ……」
    「待つんだ」
     くるりと踵を返した私の手を取ったのは松井。少し低めの温かさが伝わってくる。
    「帰るのは、主に……僕の妻に謝ってからにしてほしいのだけれど」
     “僕の妻”そんな言葉を好きな人から聞くだなんて。じわりじわりと滲む視界を余所に、松井をキッと睨みつける。
    「貴方に何がわかるの?好きだと思った人はうちには来ない。なのに、あの子はその人と結婚までして……私の本丸へ来てくれやしない、貴方に言われたくなんてないわ」
     上がる息を整えるように息を吸う。松井は驚いたように目を見開いている。
    「貴女の本丸には、僕が来ないのかい?」
    「……えぇ、そうよ。江のみんなだって、貴方を迎える為に頑張ってくれていたのに駄目だった」
    「バグってこと?」
    「そうね。時の政府からは、刀剣男士との相性もあるだろうからと言われたわ」
    「相性……ねぇ……」
     ちらりと松井が妹を見たと思えば、何を感じ取ったのか妹はこくりと頷く。次の瞬間にはぐいと手を引かれ、松井の腕の中にいた。
    「え……?」
     “何故”と問いかけたかった言葉は音にならず、身体の中に留まった。少し顔を上げて松井を見れば、視線が合う。
    「そうだねぇ……。僕との相性は良いはずだよ。むしろ、良すぎるくらい」
    「じゃあ、何で……」
    「……何を焦らしているかは知らないけれど」
     ぽうと光が私を包んでは消えていく。見えないのに、何かに包まれている感覚だった。
    「これで帰ってごらん。きっと、やってくるよ」
    「……わかった」
     松井から離れ、向いたのは妹の方。眉を下げながらこちらを伺っているのは、先程私が言ってしまった言葉からだろう。
    「……ごめんね。ずっと、貴女が羨ましかった」
     それだけを言って、松井の腕を振り解いて本丸の出口へ。来た時は穏やかだった雰囲気が張り詰めているのは、私のせいに他ならない。
     ――早く出なければ……。
     居心地が悪くなった本丸を足早に出て帰路につく。男士が私を傷付けることだって出来たはずなのに、こうして無事に出してくれたのは、妹の采配なのだろうか。今は、知る由もないけれど――。
     本丸へ帰れば、いつかのように出迎えてくれたのは江のみんなだ。
    「主、おかえりなさ……え⁉松井さん⁉」
    「本当だ……。何で松の霊力が主にあんだ?」
    「何処かで松井に会ってきたの?」
    「うん。……それで、みんなにもう一度お願いがあって」
     そして妹の本丸であったこと、松井にしてもらったことを話した。何とも醜い話だ。
     ――軽蔑されるかもしれないな。
     そう思いながら話をしたが、呆れながらも笑ってくれた。
    「謝って来たのであれば、良いでしょう」
    「だけど、もうしちゃ駄目だよぉ」
    「……わかってる」
     もしかしたら、私の両親より親のような返答をする男士達。そんな男士達に、恋バナをしたのだから気恥ずかしさがある。
    「それにしても、いない刀に恋慕するって茨の道じゃない?」
    「ですが、あちらの松井さんが言うにはもう来るはずだと」
    「戦に出ればわかることだ」
    「じゃ、行ってくるぜ!主」
     早速だと、秘宝の里へ向かってくれたみんなをただただ待つ。行ってくれている時間は短いだろうに、とても長く感じているのは私が心待ちにし過ぎているからか。
     ガラリと鳴った玄関の戸を開く音。それに気付いて駆け出した足は早く、そして玄関側からも駆けてくる音が聞こえる。少し先に見えた曲がり角。そこを走ってきたのは――。
    「主!」
    「ま……つい……?」
     両手を広げ、優しく抱き締めてくれる。温もりを確認するように、そっと腕を背中へ回す。
     ――ようやく、ようやく来てくれたんだ……!
     ぽろぽろと頬を伝うのは、嬉し涙。ようやく会えた、私の松井江。
    「驚かせたかな?泣かないで」
    「……ありがとう」
     指でそっと涙を拭ってくれる王子様のような彼。優しさがじんわりと伝わってくる。
    「松井さん!早いですよ‼」
    「本丸の門を潜っただけで顕現するなんて、松井は何を急いでたの?」
     パタパタと松井の後を追ってきたのは、帰ってきた江のみんな。本丸の門を潜って顕現するなんて、初めて聞いたことで驚きを隠せない。
    「そんなことがあるの?」
    「主が他の僕の霊力纏ってるなんて、耐えられるわけがないだろう⁉」
     そう言った松井の顔は焦っているようで、初めて見る表情の数々に目を奪われていく。
    「早かったよね。顕現したと思ったら、ぴゅーって走って行っちゃってさ」
    「はい、驚きました」
    「門を潜った途端に、刀の状態で暴れ出したからな」 
     そんな三振りの言葉を聞きながら、浮かぶのは微笑み。『そんなにも会いたいと思ってくれたのか』と喜びが滲む。
    「これからは僕が一緒にいるから。他の僕に目を向けないでほしいな」
    「うん。松井だけだよ」
     好きな人から向けられた好意は、甘くて、優しくて、包み込んでくれるような素敵なものだった。

    『この間はごめんなさい。きちんと謝りたくて』
     松井から勇気を貰ったこともあり、妹にも手紙を出した。羨ましいと思う気持ちはあるけれど、彼女に対する嫉妬心は以前ほどあるわけではない。それに、私が遮断してしまっていただけで、妹は私にずっと好意を向けてくれていたのに。
    『私こそ、姉さんの気持ちに気付いていなくてごめんなさい。またお話してほしい』
    「松井……見て!」
    「良かったじゃないか。たくさん話しをしておいで」
     そう返ってきた返事に、松井と共に喜ぶ。絡まっていた糸を少しずつ解いていくように、妹との関係も変えていきたいと思いを馳せて――。

    「え?妹君の松井があの時感じた霊力?……僕も行くよ」
    「心配し過ぎよ」
    「僕が心配なんだ。諦めて」
     そう言い出した松井とのお話は、また別の機会に。
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