いざ、枯れ逝くその時まで「茨木、おい茨木」
隠世のとある昼下り、屋敷の縁側に座り、外を眺めている茨木に伊吹は後ろから声を掛けた。
「…」
「おい、茨木。聞いてんのか」
伊吹は後ろから肩を掴み、自分の方へと向かせた。
「……あ……伊吹様……どうされましたか?」
「どうしたじゃねぇよ。お前がぼーっとしてるから声掛けてやったんだ。」
「あぁ……すみません…」
ここ最近、茨木はぼーっとしている事が増えた。
「お前……最近ぼーっとする事が多いな。大丈夫か?」
「……そうですか?私は大丈夫ですよ。」
茨木は微笑みながら、伊吹に返した。しかし、その笑顔はどこか哀しげだった。
「……そうかよ、なら良いけどよ……」
伊吹は茨木がいつもと何かが違う、その違和感を気に留めながらもそれ以上言及はしなかった。
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