「んぅー…ぅぇ……」
「ほら、飲み過ぎだ。そろそろやめろ」
「やらぁ…まらのむのぉ……」
「駄目だ」
「やらぁ!やだっ!」
砦は酒瓶に伸ばした手を払い除けられ、駄々をこねるように首を振った。そんな様子に呆れながら要塞はため息をつく。
「……はぁ……じゃあこれで最後にしろよ?」
「ん!」
要塞が渋々差し出した酒を、砦は嬉々として受け取り口に含んだ。
「ん……んふー…へへぇ♪」
「なんだ、満足したのか?」
「んぅ♪へいきだよぉ〜♪」
そう言うと砦はまた酒瓶に手を伸ばし、栓を抜いた。しかし今度はそれを要塞の方に差し出してくる。
「ん!!」
「だからもうやめろって……」
「なんら!あーしの酒がのめねーのかぁ?!」
「お前は飲み過ぎだ。そんなに飲んだら明日に響くぞ」
「やらぁ!まらのむー!」
「駄目なもんは駄目だ」
要塞は酒瓶を奪い取ると、そのまま栓をした。
「あー!かえせぇ!」
「もう終わりだって……」
「やらぁ!かえしへよぉ!!」
砦は要塞にしがみつく。酒を取り返そうと必死だが、酔っているため上手く力が入らない。
「かえしてよぉ!かえへよぉ!」
砦は要塞にしがみ付いたままじたばたと暴れる。
「おい、暴れるなって……!」
「かえへぇ!!!」
「あぁもう!分かったから大人しくしろ!」
要塞はついに根負けして、酒瓶を再び差し出した。すると砦は嬉しそうに受け取って、そのまま口をつけた。
「……ん……んぅ……」
「おい、だからやめとけって……」
「……ふぁいよーぅらもん」
口の端から少し酒がこぼれ落ちる。
「んぅー……」
「あーあ、零しやがって……」
「あーしのさーけぇ!」
「はいはい分かったから早く口を拭け。汚いぞ」
「んー……」
要塞は砦の口元を手で拭う。砦はその手を掴み、口元へと持っていく。
「おい、やめろって……」
「んむぅー……♪」
要塞の手についた酒を、砦はぺろりと舐め取った。その様子に要塞は眉間に皺を寄せる。
「なぁ……」
「んぅ?」
「……お前わざとやってんのか」
「なにをらよ?」
砦は首を傾げた。どうやら全く自覚がないらしい。砦はそのまま要塞の親指をしゃぶり始める。
「っ……!」
「んふふ……」
要塞は必死に理性を抑えつけようとするが、砦はそれを許さないかのように強く吸い付く。やがて満足したのか、砦はゆっくりと口を離して指を解放した。
「んー……♪」
「お、おい……もういいだろ」
「やらぁ……もっとぉ……」
そう言って砦は今度は要塞の手に舌を這わせ始めた。小さな舌がチロチロと指先を刺激してくる。その度にゾクッとする快感が背中を走った。
「んっ……ちゅっ……んぅ……♪」
「……っ……」
砦は夢中で指をしゃぶり続ける。そして一通り楽しんだ後、ゆっくりと口を離していく。唾液が糸を引いており、それが妙に色っぽい。眠くなりつつも指を咥えたり、甘噛みしたりしている。
「っ……もう、やめろ」
「んぅー……?なんれ?」
「これ以上は駄目だ」
「なんらよぉ……」
砦は不服そうに唇を尖らせる。そして要塞の指を再び口に含むと、そのままちぱちぱと吸い始めた。
「おいっ……いい加減にしろ」
「んぅー……」
要塞は砦の肩を掴む。そして自身の指を無理矢理引き剥がした。砦は少し不満げな表情を浮かべるが、眠気の方が勝っているのか、そのまま要塞に寄りかかって眠り始めてしまった。
「……はぁ」
要塞はため息をつくと、眠ったまま起きる様子のない砦を抱きかかえた。そして寝台まで運ぶと優しく下ろす。
「全く……人の気も知らずに呑気なやつだな……」
砦はすやすやと眠っている。要塞は砦の頭を撫でた後、静かに毛布をかけた。
「おやすみ」
そう言って砦の部屋を後にした。