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    しおん

    @GOMI_shion

    クソほどつまらない小説をメインに載せてます

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    しおん

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    『逢魔時に花と散る。』#03

    ##逢魔時に花と散る。

    残り香外が明るい。まだ昼間なんか…。毎日毎日夜が待ち遠しい、自分が生きる理由は夜にしか無いから。カレンダーを見ると、今日の日付に丸がついている。
    (なんや…?今日なんか予定あったっけ)
    スマホのメモアプリを開いて予定を確認すると、“昼くらい卯柳の家行く”とメモしてあった。
    (はぁ?過去の自分ちゃんと時間まで書いとけや阿呆…)
    もう昼やし…。とりあえず適当に出かける準備をする。
    「あれェ、ミーくんどっか行くの?」
    「おん、記憶無いけどなんか卯柳ん家行く予定あったらしいから、とりあえず行ってくるわ」
    「そっか行ってらっしゃい。帰り煙草買ってきてよ。」
    「まだ俺17やぞ、買えへんわ。てかお前もまだ18やろ吸うな」
    「けち」
    だらだらする巨体を押しのけて、俺は卯柳の家に歩いて向かった。

    ……………………………………

    最悪。マジで最悪。
    「ねぇねぇ椿姫くんもこっちおいでよ~」
    「そーだよお兄ちゃん!棕櫚お兄ちゃん良い人だよ!」
    棕櫚さんと咲三華が声を揃えて「ねー!」と言っている。本当に何があったら僕の妹はあんなのに懐くのか…。多分僕にしたみたいな気持ち悪い態度は取っていないんだろうな。咲三華は流石僕の妹なだけあって、苦手な人の性格とか喋り方のタイプが全く同じだ。だから尚更棕櫚さんに咲三華が懐いていることが気に食わない。
    「遠慮します。僕ちょっと気分悪い。」
    「気分が悪いのかい?僕が癒してあげよう☆」
    「結構です原因あなたなので。」
    「馬鹿正直☆」
    断ると何も傷ついたような様子もなく、再び咲三華と遊び始めた。まあ子守りをしてくれるのは有難い。
    「そういえば咲三華、頼まれてたお菓子買っといたよ」
    「やったぁ!お兄ちゃんありがとー!」
    咲三華にお菓子を渡して、騒がしい部屋から出て自分の部屋に籠る。一応鍵もかけとこ…。はぁ、今日は特に何も無いはずだったのにお姉さんにパシられたり家に帰ったら棕櫚さんが居たり…。どうして早起きした日はこうなるんだろう、もう寝ようかな。

    ーピンポーン

    眠ろうとベッドに腰掛けた瞬間インターフォンが鳴った。今度は誰だよ…。少しイライラしながら玄関まで向かって扉を開けると、黒いマスクをつけた見たことの無い人が立っていた。
    「えっと…こんにちは…?」
    見知らぬ人に戸惑いつつとりあえず挨拶をしてみると、その人はニコッと笑って挨拶を返してくれた。
    「ちっすちっす!卯柳…あー、綺月おる?」
    「今出かけててまだ帰ってきてないです。」
    声を聞く限り男性のようだ。見た目は少し女性っぽさがあってどっちか分からなかった。
    「そうかァ、今日俺多分呼び出しかなんかされてたらしいんやけど、なんも話聞いとらん?」
    「聞いてないです。とりあえず上がりますか?」
    「ええのぉ!?久々にここ来て道迷ったせいで疲れとったから助かるわァ!」
    手を扇ぐようにパタパタとさせながら玄関に入ってきたのを、とりあえずリビングまで案内した。

    リビングに着くと、椅子にすぐ座って溶けるようにうなだれた。
    「邪魔するわァ〜、案内ありがとさん♪そういえば君、名前なんて言うん?俺は藍葉 翠和(あいば みわ)!」
    「那花 椿姫です」
    「あー!君がね!」
    聞いた事あるかのように指をさしてきた。棕櫚さんに比べて話しやすいし愛想もいい人だな。
    「やっぱ椿姫クンは狩りに興味あるん?」
    「あります!でも、1回見回りに連れて行って貰って戦い方を見せてもらったんですけど…やっぱりちょっと怖いです。」
    僕の言葉を聞いて、翠和さんは真面目な顔でうんうんと頷いた。
    「まあせやろなぁ…君は普通で安心したわ。俺も正式に戦った事ない奴1人育てとるんやけどソイツがま〜〜異常やねん。椿姫クンはそんまま育つんやぞ〜」
    やっぱりこの人達の仲間には変な人多いんだな。
    「その人ってどういう人なんですか?」
    そう質問すると、翠和さんは悩んだような顔をした。
    「ん〜〜〜なんというかなぁ…。家から窓の外におった妖怪見つけたら自分と一緒に自撮りして送ってきたり、家ん中から妖怪に向かって包丁投げたりして危ないんよなぁ、それとほらァあれやろ?卯柳から聞いた事あるか知らへんけど、妖怪を殺せるんは13から19までの人間やろ?つまり未成年やん、や!の!に!アイツは煙草吸うわ酒も飲むわで…。俺より1個しか年違わへんのに大人ぶってんねん腹立つ〜!」
    「なるほどそういう感じか…。」
    未成年ってとこ以外お姉さん(※綺月の姉)と同じだな。あと13歳から19歳の人しか妖怪を殺せないの初めて聞いた。
    「そういう人の対処が難しいって気持ちめちゃくちゃ分かります。」
    「あれやろ、姉ちゃんやろ?」
    「そうですw」
    そう話していると、階段がドタドタと鳴り始めた。棕櫚さんと咲三華が降りてきたようだ。
    「おや!翠和くんじゃないか!今日もかわいいね!」
    「誰が女顔やねんぶちのめすぞ」
    誰もそんなこと言ってないけどごめんなさい翠和さん、僕は思いました女顔だなって。(※特大ブーメラン)
    「女顔とは言ってないじゃないか、そんな事より君も呼び出しかい?」
    「んあ、まぁせやな。卯柳ァ俺らの事呼び出したん忘れたのか?」
    「ははっ、彼女に限ってそんなことは有り得ないさ!それに僕と翠和くんが呼ばれたって事は、綺月以外にもあと一人来るはずだろう?もしかしたら迎えに行ってるのかもしれないね」
    あと一人?誰だろう。まあ当然その人も僕の知らない人だろうな。
    「まあそうかぁ〜、気長に待つ事しか出来へんなぁ〜」
    翠和さんがそう言うと、いいタイミングでインターフォンが鳴った。
    「僕が出ますよ。」
    「ありがとうね椿姫くんっ!」
    棕櫚さんに少し苦笑を向けてから玄関へ向かった。

    扉を開けると、綺月さんに雰囲気が似た長身の女性が居た。
    「綺月は。」
    「まだ居ないですが、棕櫚さんと翠和さんが…綺月さんと多分貴方を待ってます。どうぞ上がってください」
    「そうか、邪魔する。」
    綺月さんに似てはいるけど、彼女よりも強い冷たさを感じた。ほんの少しの恐怖を覚えたが、冷静に翠和さんと同様リビングに案内した。

    「赤桐(あかぎり)お久〜!」
    リビングに着いて早々、翠和さんが手を振った。
    「ああ。」
    素っ気ない返しをされて少しムッとした後、僕に彼女の紹介をし始めた。
    「コイツは赤桐 時雨(あかぎり しぐれ)、俺らの同期や!コイツも俺と棕櫚と同じように弟子みたいな奴がおって、いっちゃん教えんのが上手や」
    「え、まず棕櫚さんにも教える相手がいたんですか」
    時雨さんと紹介してくれた翠和さんには失礼かもしれないけど、そこがいちばん驚きだった。
    「僕に弟子が居ることが何かおかしいかい?」
    「いえ…なんでもないです」
    まあ…独特な戦い方をする人だし居てもおかしくないか…。
    「ほんで!この子は那花 椿姫クンや、卯柳が世話しとるっちゅー子やな。」
    僕の紹介までしてくれた。丁寧な人だなぁ。
    「そうか、よろしく頼む」
    「よろしくお願いします。」
    一通り挨拶が済んだ時、ちょうど綺月さんが帰ってきた。
    「呼び出しておいて遅れてしまい申し訳ない。早速始めたいんだがいいか?」
    「構わないよ〜」
    棕櫚さんが答える。翠和さんと時雨さんも頷いている。僕はここにいても良いんだろうか…。
    「すまない椿姫、少し部屋に戻ってくれないか。咲三華も。」
    「あ、分かりました。行くよ咲三華。」
    4人で集まって何をするのか少し気になるけど、大事な話なんだろうなあっと思いながら部屋に戻った。早起きしたせいか眠たいし、少しの間昼寝でもしようかな。

    ………………………………

    ーコンコンッ
    部屋を掃除していると、扉がノックされた。
    「はい」
    返事をすると、雨月が扉から顔を出した。
    「涼、ちょっといいですか?」
    「はい、どうかしましたか。」
    部屋に入ってきた雨月の片手には、棕櫚様の物だと思われる刀が鞘に収められた状態で握られていた。この刀に…何かあったのだろう。
    「掃除中邪魔してしまい申し訳ないです…突然ですが、この刀…」
    「棕櫚様のですよね」
    どうして雨月がこれを持っているのか気になって、つい言葉を遮ってしまった。
    「そうなんですが、この間突然“刀を交換して欲しい”と言われて交換したのです。それで交換した後、何度か狩りに行ったのですがこの刀を使うと…なんというか不思議な感覚になるんです。それに…何故か妖怪を殺せないんです、絶対弱点を刺したり斬ったりしているはずなのに!」
    いつから交換していたのかは知らないけど、何度か一緒に狩りに出たのに気が付かなかった。この刀を使った時の不思議な感覚を、私は知っている。それは…
    「涼?」
    「え?あぁ、うーん…そうですね、ただ使い慣れていないだけじゃないですか?」
    「でも確かに斬ったのに…!」
    「貴方は戦闘に関する実力はうちでもある方じゃないですか。少し刀が変わって殺せなくなったくらいでそんな騒がないでください」
    「…そうですよね、すぐ慣れてみせます。」
    「ええ、頑張ってください。サポート致しますから」
    雨月があの感覚に慣れる日は来るだろうか。妖怪を殺せないのは、彼が使い慣れない刀で戦ったからではない。この戸惑い方、多分今までこの刀と私たちの使う戦法の相性が悪い事を棕櫚様の戦い方を見ても気が付かなかったんだろうな。
    「あら雨月!此処に居たのね!」
    ノックもせずにお母様が部屋に入ってきた。
    「はい、涼に少々用がありまして。私に御用でしょうか。」
    「いいえ〜?体調が悪かったって聞いて様子が見たかっただけよ。涼〜貴方には少し話があるわ、いらっしゃい」
    「はい。」
    さっきまで私がしていた部屋の掃除の続きを雨月に任せて、お母様について行った。

    「涼、明後日までにはやるのよ。」
    「……はい」
    そっか、もうそんな時期か…。
    「やらなかったら…分かってるんでしょうね?」
    「はい、次こそは成功させます。」
    「それでいいわ」
    はぁ……。
    (明後日まで、か。)

    せっかくだしお兄ちゃんが帰ってきたら、兄妹全員揃って……主がどうとか、従者としての接し方がどうとか考えず、普通の兄妹みたいな話がしたいな…なんてね。
    『涼おいで!一緒にこれ見よ!』
    『見る!雨月も見よ!』
    突然、幼少の頃、3人で同じ絵本を読んでいた時の記憶が蘇る。あの頃はどこにでもいる“ただの兄妹”だったな。おもちゃで遊びたい時、大体みんな同じので遊びたがって…喧嘩にならないようにみんなで一緒にそれで遊んで、絵本も読みたいのがみんな同じだったら、みんなで一緒に声に出して読んでいた。あの頃に戻れないのは当たり前だけど、今もみんなと一緒にいられているのは変わらない。

    …いつかそんな日が無くなるのは分かってるけど、やっぱり少し怖いな。無くしたくないな。
    そんなこと考えてないで、仕事しなくちゃ!
    それと、雨月の刀どうしよう。刀の交換の事をお母様に報告するのは絶対良くないから隠しておくとして、なんとかして普通の刀とすり替える方法は無いかな…。まあ無いか…お兄ちゃんから貰った物なら、雨月めちゃくちゃ大事に持ってそうだし隙がなさそう。

    ……にしてもお兄ちゃんと雨月って、いや考えるのやめよう。ブラコンが過ぎるだけって事にして、私の中にある“あの2人付き合ってる説”は一旦忘れる事にした。

    ………………………………

    「こら翠和、寝るな。」
    「んあ…?」
    綺月にデコピンをされてやっと翠和くんは起きた。綺月は翠和くんが今までずっと寝てたのに今更気づいたのかな?
    「もうすぐ終わるんだから最後まで話は聞け!」
    「聞かんくても前回と内容変わってへんやん…」
    うん…確かに変わってない。こんなことある?ってくらい全部前回と情報が同じだ。新人はいつ入れるのか〜とか、今月は妖怪が出没したのはどこが多かったのか〜とか。ただそれだけの話。内容のどうでも良さを聞いた上で、僕は寝てる翠和くんに気が付いていたけど起こさなかった。
    「変わってないかもしれないが重要な事しか毎回話していないぞ」
    「重要かぁ〜……?」
    「なんだ棕櫚、お前も私に不満があるのか」
    やべ、つい声に出してしまっていた。
    「いやぁ不満というかねェ、動きも変わり映えもなくてつまらないね〜」
    「それを不満と言うのだろう…。はぁ、まあいい。時雨、君からは何かあるか?無ければこれで終わりにするのだが。」
    時雨は黙ったまま首を横に振った。何も無い、ということはこれで帰れる。退屈な時間は終わりだ。
    「そうか、なら今回はここまでで終わるぞ。長時間お疲れ様」
    「っしゃ〜〜帰るぞ〜っと…せや、帰り道調べとかんとまた道迷うわ。」
    「翠和くん来る時道迷ったの?」
    「なんや悪いんか」
    「いやw別に悪くないけど可愛いね〜w」
    「馬鹿にしよんか!?」
    うん、してる。僕もさっさと帰ろ〜。その前に咲三華ちゃんと椿姫くんに挨拶していこうかな。
    「綺月、椿姫くん達に挨拶してもいいかい?」
    「構わないが、あまり椿姫を困らせるなよ」
    「はいはい〜」
    こわ〜い顔で睨みつけられたけど、気にせず2階に行き、椿姫くんの部屋の扉をノックした。しかし返事がない。寝てるのかな?仕方なく咲三華ちゃんの部屋に移動して、ノックをすると、勢いよく扉が開いた。
    「はぁ〜い!あ!棕櫚お兄ちゃん!」
    「やあ咲三華ちゃん、僕もう帰るから挨拶しに来たよ!」
    「えぇ、帰っちゃうの…?また遊びに来てくれる?」
    「勿論来るさ!次は僕の弟と妹も連れてくるよ」
    「うん!待ってる!」
    大きく両手で手を振ってくれる咲三華ちゃんを背に、僕はさっさと卯柳家から出て行った。
    …やっぱ僕、椿姫くんに嫌われてるよね?まあ別に良いけど。にしても、咲三華ちゃんは昔の涼に似てるなぁ。無邪気で愛らしくて…つい昔に戻った気分になって、涼と話してるつもりになってしまっていた。そういえば涼とは、ここ数年兄妹らしい接し方を出来ていなかったな。いつからこうなったんだっけ。涼と雨月が養子として家を出てからだっけ?……あの2人がいない間、僕は1人で家にいるのが怖かったし退屈だった。だから帰ってきてくれて良かったな。

    ージュウッ

    考え事をしながら歩いていると、何かが焼けるような音が突然背後からした。反射的に振り返っても何も無い。気の所為…?“焼ける”という事が、僕は怖い。眼帯の下の火傷が出来たときの記憶は、今でも鮮明に覚えている…それと、雨月と涼にまで火傷を負わせてしまった時のことも…。
    もうあの2人を傷付けたくない。だから僕もちゃんと戦いたい…最近気がついた、妖怪なんかを殺しても意味が無い。僕らが殺すべきなのは、“妖怪を発生させてる奴”だ。まあ、それを殺す力があればとっくの昔に殺していただろうけどね。出来ないから今こうなってるんだ。
    …ひとりになると、いつもこんな事ばかり考えてしまう。だからひとりは嫌いなんだ。
    「棕櫚様」
    前を向くと、涼が微笑みながら立っていた。いつの間にかもう帰り着いていたようだ。
    「涼、ただいま」
    「おかえりなさい」

    ………………………………

    時計の針の音だけが、静かに部屋に鳴り響く。
    音だけは鳴っているのに、その針は動いていない。正確には、進んでは戻り、進んではまた元の位置に戻るのを繰り返している。その時刻はずっと六時を指していた。
    「あれ、もうすぐこの桜枯れちゃいそうだな」
    季節も関係なく部屋の花瓶にさされていた桜の枝に咲く花は、少し萎れている。その隣には、もうすぐ咲きそうな白い椿の蕾が付いた枝が花瓶にさされていた。この部屋にはシュロの木の葉やヤナギの枝、ドウダンツツジ、枯れきったウルシといきいきとしたウルシや藍など、他にも様々な植物が季節関係なく飾られていた。
    「次に咲く花が楽しみだね」
    そっと白い椿の蕾を撫でながら、暗い部屋でひとり、男が不気味に笑う。
    「そろそろ寝たらどう?昨日からずっと寝てないでしょう?」
    「心配ないさ、この子達を見ていれば生きていける。」
    「…そう、無理だけはしないでね。ご飯ここに置いとくから。それにしてもこの部屋…相変わらず暗いのね」
    「それはそうだろう、この空間はずっと逢魔時なんだからね。」
    その男性の言葉に、女性は少し戸惑った様な顔をしたが、そっと頷いて部屋を出ていった。
    「…君が咲くのが1番楽しみなんだ……美しく咲いて、美しく落ちてくれるのを待っているよ…ふふふ…」
    そう言って食事をとりに男性は部屋を出て行った。扉を閉じた衝撃で、1輪の桜の花弁が1枚地面にヒラヒラと落ちていった。
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