Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    しおん

    @GOMI_shion

    クソほどつまらない小説をメインに載せてます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 62

    しおん

    ☆quiet follow

    あ、これコハクの後日談2になる予定だった
    コハクがあまりに自己中クズすぎてボツになったやつです。
    最初の方はちゃんと載せたのと変わらないよ

    ##番外

    没!!!読むなら読め!!!年に一度の村中の人が集まる大規模な祭り。今年もその日がやって来た。
    「やっと来たか、早く行こうぜ〜!」
    祭りに一緒に行く約束をしていた結弦、凛咲、響輝が、浴衣姿で待ち合わせ場所で僕が来るのを待っていた。もちろん僕も浴衣を今年は着た。
    「待たせてごめん。」
    みんなの所まで急いで駆け寄る。こう見ると、いつも遊んでた人の人数減ったな…。ひまりは去年のこの日神への生贄になり、小夏は病で去年亡くなった。たった2人が居なくなっただけで喪失感がかなりある。…2人が居なくなったって思ってるのは僕だけだろうだけど。
    「まずどこ行く?」
    響輝がそう問うと、凛咲が手を挙げた。
    「射的!」
    去年と全く同じだ。あの時も凛咲が射的をしたい最初に言い出して行くことになったな。
    また今年も去年と同じように結弦がいい調子で景品を落としていく。その後凛咲も挑戦するが、全く景品をおとすことができずに射的の屋台を担当しているおじさんを狙おうとする。
    楽しむみんなを見ていたら、ふと見た事のあるコート姿の男がみんなの後ろを通った。
    「長谷川……!」
    反射的に声を出して名前を呼んでしまったが、本人は気づいていないようだ。あいつがなんでここに居るのか気掛かりでしかない。去年、海山芝葦倉神とした約束があるから誰も死なないと信じたい。だが嫌な予感がする。
    「ちょっと行ってくる。」
    「は?おい!どこ行くんだ!」
    長谷川を放ってはおけない。あいつだけは捕まえないと。今度こそあいつを止めないと。祭りを楽しむ人々の群れをかき分けながら、走って長谷川を追う。人が多すぎてどこにあいつがいるのか分からない。さっきまで追いつきそうな距離に居たのにいつの間にか見失ってしまった。
    「クソ…!」
    小声でそう呟いていると、目の前に誰かが立ち止まった。
    「おぉ猫羽〜お前も来てたのか」
    笹本先生だ。そういえば笹本先生は長谷川の友人だったはず。
    「足止めですか?」
    「なんだよ足止めってwそんな事よりみんなはどうした、あ、さては迷子だなー?」
    「長谷川がこっちに来ただろ」
    そういうと笹本先生は何も喋らなくなった。喋らない笹本先生を無理矢理退け、再び長谷川を探し始めた。

    あいつを探し始めて1時間ほど経った。全く見つからない。下駄で走ったせいで足が痛い。もう走れないなと思い、1度休憩する為に神社の階段に腰掛けた。スマホの画面に目をやると、凛咲達からの何通ものメッセージや不在着信が届いている。申し訳ないことをした。お詫びのメッセージを全員に送信する。

    { 本当に申し訳ないんだけど急すぎる急用できた、ごめんけど僕抜きで楽しんで

    そう送ってスマホの電源を切り、神社への階段を登った。

    この神社は相変わらず静かだ。空を見上げると、大きなまん丸の月が浮かんでいる。あそこに行けばきっとあいつが居る。本当は1人で行くのは怖い。だけどみんなを巻き込みたくない。
    僕は“あの世界”へ向かう為、そっと目を閉じた。


    鈴のような音が鳴り、目を開けると、前に来た時は踏切の前に居たのに神社に着いていた。なにも変わっていないのかと思ったが、さっきまでいた時間とは違い夕暮れのようだった。ちゃんとあの場所に来れている。辺りを見渡すと、誰もいない…と思ったが長谷川がいた。長谷川の横には、何人かの幼い子供の死体が積まれていた。何かをこっちに言おうと口を開こうとする長谷川を無視して神社の奥に走る。あいつに直接あって話さないと気が済まない。後ろで「待て!」と叫ぶ長谷川を他所に、僕は海山芝葦倉神に会いに行った。

    「おや、コハクだったか?久しぶりだね」
    呑気に神は笑っている。僕はそんな神に近付き、気付いたら無意識に胸ぐらを掴んでいた。自分でももう自分を制御出来ない。
    「話が違うじゃねぇか!約束はどうした!」
    神は笑顔を崩さないまま返事をした。
    「約束?なんの約束をしたんだっけね?」
    「は?しただろうが、去年のこの祭りの日に。もう生贄は出ないようにするって、ひまりと翠だけじゃなく今までお前のせいで犠牲になった命を無駄にしやがって!」
    そう言うと笑顔だった神は真顔で僕を振り払った。
    「そこまで覚えているなら、生贄が無いと君たちの村が危険に曝されるって事も覚えてるだろ?」
    「だからその生贄無しに村を守ってくれるって話だっただろ!」
    少し間を開け、振り払われて地面に座りっぱなしになっている僕にしゃがんで近づいてきた。
    「君も神なんだから、分かってくれよ」
    「僕はお前みたいな神にはならない!僕は誰が何と言おうと人間だ、普通の人間としてあの村で友達と過ごして、普通の人間として死ぬ。僕を勝手に、神にするな!」
    そんな事言われてもなぁ、と神は困ったような顔をした。その顔に苛立ちを覚え、僕はいつの間にか神の頬を思い切り殴っていた。
    「……そんなに私に歯向かうのか。」
    流石に怒ったようだ。殴られた頬を触りながら睨みつけてきた。
    「最初からお前に従うつもりは無い」
    そんな事言いながら僕は恐怖で震えていた。こいつの圧力が怖いとか、殺されるかもしれないという恐怖ではない。僕が今こいつを怒らせたせいで、みんながいる平和な村が脅かされるんじゃないかという考えが過ぎった事による恐怖だ。
    「そうか、残念だよ。考え方が改まったらまたおいで」
    神がそういうと、僕は強制的に元の世界へ戻されてしまったようで、夜の学校の前に立っていた。悔しい、腹が立つ。長谷川を止めれなかったしあいつにも何も言い返せなかった。考えを改めろってなんだよクソ、僕には何も出来ないって言うのか?こんな事で心が折れてる自分にも腹が立つ。いつから僕の心はこんなに弱くなった?
    もう他人なんてどうでもいいか。あぁそっか、なんで今更気がついたんだろう?なんの関わりもない赤の他人の命を守る為に、自分が頑張る必要なんてないじゃん。
    僕は今までなんの為に頑張ってたんだっけ?
    同じ思いをする人を無くす為?
    誰なのかも知らん奴を悲しませない為?
    なにそれどうでもいい。他人なんか救うより“あいつ”みたいに家族を返してもらいたいって行動に表すのが大事だよね。
    「こんなとこでなにしてんの?」
    聞き覚えのある声が突然耳元に囁いてきた。
    「長谷川…」
    「覚えててくれて嬉しいよ」
    薄気味悪い笑みを浮かべ、まるで僕の事を馬鹿にするかのように頭から足までまじまじと見つめてくる。そして目が合った時、長谷川はにやりとまた笑った。
    「何笑ってんだよ」
    「いやあ?君は諦めが悪い奴だと思ってたのに…ふっ、意外とそんなことないんだなぁと思って」
    何も言い返せない。つい今、こいつのやっている事を止める事なんて自分1人じゃできないと分かって全てを諦めてしまったから。
    「自分のできない事はしない。そんなのいつもの事だから。諦めたおかげで新しくやりたいと思うことを見つけた。お前に頼みたい事がある」
    僕がそう言うと、長谷川は無駄に腹が立つ笑顔で下から顔を覗き込んできた。
    「へぇ?頼み事をされるなんて思ってなかったよ」
    長谷川はそのまま行儀悪く地べたに座り込んで頬杖をついた。僕が何を言うのか待ってるようだ。軽く深呼吸をして覚悟を決める。
    「家族に帰ってきてもらいたいって願ってるのは僕も同じだし、きっとお前も今の僕と同じ辛さを感じてた事があるんだろ?…てか今も辛いんか」
    長谷川は何も言わずにさっきよりは真剣そうな顔で僕を見ている。
    「僕にお前の手伝いをさせろ」
    「…なるほどな、でもお前は」
    「コハクっち居た〜」
    僕を探し回ってた様子の凛咲たちが駆け寄ってきた。
    「なにしてたんだよ、あ、その人探してたのか?」
    みんな長谷川を不思議そうな顔で見ている。
    「えっと…まあそうだよ」
    話を遮られたのが不服だったのか少々不満そうな顔を一瞬したが、作ったような笑顔で長谷川は口を開いた。
    「ほらコハクくん、友達が迎えに来てくれたならもう行ってきな!」
    「…行くけど、手伝わせてくれるか考えとけよ。じゃあな不審者」
    「態度ッ」
    その後、突然何も言わずに飛び出して行った事を結弦に怒られながら屋台の並ぶ大通りへ戻り、夜遅くまで祭りを楽しんだ。

    …………………………………………………………………………………

    翌日、何も無かったかのようにまた普通の生活が始まった。カーテンを閉め切っているせいで薄暗くなっている自室をぼーっと見渡す。1年経ってもこの部屋は1人で居るには広すぎると感じる。
    時計の針は5限開始の時刻を指しており、スマホには相変わらず僕を起こそうとしてくれてたのであろうメッセージや不在着信の通知が大量に並んでいる。布団の中で誰から着信が来てたのかゆっくり確認をしてから学校に行く準備を始めた。
    筆箱と何も書いていないノートだけが入った鞄にスマホとイヤホン、モバイルバッテリーを放り込み、半袖の制服を雑に着る。
    「行ってくるね、翠」
    小声でそう呟き、リビングに向かうとテーブルの上に朝食のサンドウィッチが置きっぱなしにされている横に、学校で食べる為に母さんが作ってくれた弁当が置かれていた。
    朝食は登校しながら食べて、弁当は多分食べる時間はないから適当に結弦にでも食わせよう。

    焼き尽くされそうな程暑い陽の光を浴びて朝食を食べながらのんびり歩いていると、近所の幼い子供が目の前に飛び出してきた。その子は自分から驚かしに来るかのように飛び出してきたくせに、僕より驚いていた。
    「人まちがえました、ごめんなさい!」
    「いや逆にビビらせてごめんね。怪我せんように遊ぶんだよ」
    「うん!ばいばいお兄ちゃん!」
    思わず“お兄ちゃん”という言葉に反応してしまいそうになりながら手を振って学校に向かう。
    そういえば長谷川は一気に幼い子供を連れていくわけじゃないんだな、普通にこの辺子供いるっぽいし。あと手伝わせて欲しいってやつ、考えてくれたかな。あいつとの連絡手段なんもないから確認できないのが困った。
    ワンチャン家か学校まで凸ってくんないかな。
    そう色々考えながら歩いているうちに学校に到着した。
    学校では今まで通り何も考えてないふりをしよう。まあ別に何か考えててもまたぼーっとしてるだけって思われるだけで済むと思うけど。無駄な事を寝起きからずっと考えてたせいか、いつもの事なのか分からないけど教室に入った瞬間とても眠たい。先生や凛咲たちに遅刻した事を指摘されるのを無視して席につき、寝る姿勢になる。
    「猫羽すぐ寝るなよ〜何しに学校来たんだ〜?」
    「ねにきた」
    「寝に来たか…」
    呆れたのか諦めたのか、笹本先生はため息をついて授業を再開した。
    (そういえばこいつ、長谷川の友達だったっけ)
    後で授業終わったら話を聞いてみよう。起きてたら、だけど。

    ………………………………………………………………………………

    学校に行ったはずなのに、僕は自分の部屋にいた。自分の席で寝た記憶がある、これはきっと夢だろう。夢の中の自分の部屋で、夢の中でも眠れるのか気になり布団に入ってみる。
    「お兄ちゃん、悪いことしちゃダメだよ!」
    布団に潜った瞬間、今はいないはずの翠の声が僕を怒鳴りつけてきた。
    「す、翠?」
    え?夢ん中で寝ようとするのって悪い事なの?なんかごめん。
    「あの人と同じことしたらお兄ちゃん悪い人になっちゃうよ!」
    あぁそっちね。
    「翠」
    名前を呼ぶと翠はこくりと頷いて僕が横たわるベッドに両手を置いた。
    「僕は間違ってない」
    「まちがってるよ!いっぱい人が死んじゃうんだよ?」
    「うるさい!翠に会いたい事の何が悪いんだ!そうだ、お前が帰ってきてくれれば済む話なのにどうして帰ってこねぇんだよ!」
    翠は今にも泣きそうだ。何か言い返そうとしているようで口が小さく震えている。さすがに言いすぎたか。
    「あぁそっかそっか、帰ってきたくても帰れないから困ってるんだね」
    僕がそう言うと翠は僕の腕を掴み、大きな声で泣き出した。
    「帰れないでいい!帰れなくてもいいからお兄ちゃん悪い人にならないで!お兄ちゃんが悪い人になるの嫌だよ…!」
    「大丈夫だよ翠、家族を助けるのは悪い人になるって訳じゃない。お兄ちゃんが助けてやるからね。」
    翠は聞く耳を持たず大声で泣き続けている。いや聞く耳持ってないのは僕の方か。
    夢の中とはいえ、弟を泣かせてしまったのは心が痛い。僕はその後、翠が泣き止むまで待ちたかったのに目が覚めてしまった。

    ………………………………………………………………………………

    目を開けると同時に、授業終了のチャイムが鳴った。窓の外は、さっきまで鬱陶しいくらいぎらぎらと輝いていた太陽が黒い雲に隠され、強い雨が降っている。目を擦りながら顔を上げ、教室を見渡すが笹本先生はもういない。面倒だけど起きちゃったから仕方なく探しに行こうと席を立ち上がると急に目眩がした。それと同時に吐き気もする。今にも倒れそうな僕に気がついた響輝が体を支えてくれている。心配そうに何か声をかけてくれているのは分かるが何故か何を言っているのか聞こえない、それに自分が喋っているのか喋っていないのかも、喋っていたとしても自分が何を言っているのかも分からない。
    暇そうに教室まで遊びにきた結弦が今の僕たちの様子を見て慌てたように何処かへ行った。
    響輝と凛咲が僕を席に座らせて背中を摩ってくれたり飲み物を渡してくれたりした。脳の奥から血が引いていくような、冷めていく感覚がある。少しずつ吐き気と目眩が引いていき、だんだん意識がはっきりしてきた。凛咲が渡してくれたお茶を一口飲もうとした時、笹本先生と結弦が教室にそんなスピードで来る?ってくらい猛スピードで入ってきた。
    「コハク大丈夫か!」
    「うるさ…今は大丈夫…」
    心配してくれてるのは分かるけど…声が頭に響いて少しクラクラする。突然の眩暈のせいで忘れそうになっていたけど、笹本先生を見て聞きたいことがあるのを思い出した。
    「先生、そういえば僕聞きたいことある。あ、あんま皆には聞かれたくない話だから少し別のとこで話しててくれると助かる」
    少々動揺した様子で凛咲たちは少し離れた所で談笑をし始め、笹本先生は僕に耳を傾けた。こいつが知ってる事なのかは分からないが、僕は去年の出来事やひまりと翠の事をずっと今まで覚えていた事、長谷川がゆずさんを取り戻す為に1人で生贄を探し続けている事も、僕も弟を取り戻す為に長谷川の手伝いをしたいと思っているということ等全て話した。
    「それで昨日彼を探してたのか」
    「いや…まだあの時はあいつを止めようと思ってた。だけど今はその時の考えとは逆だね」
    僕の言葉を聞き、笹本先生は少し考えるような素振りを見せた。
    「手伝うって言っても何するんだ?」
    「子供を集めてくる…とか?しか思いつかないけど、あいつが何かしろって言ったらそれに従うつもり」
    「どんな事でも?」
    「死ねって命令以外なら、ただのパシりでも人殺しでも何でもするよ」
    「あんま人殺しとか簡単に言うなよw」
    冗談を言うような態度だが声色はいつもより真剣だった。
    「まあでも本気なのはわかったよ、長谷川にも伝えとくな」
    「ありがとう」
    「ございますなぁ?敬語おぼえろ?」
    そう言いながら笹本先生は僕の頭を雑にわしゃわしゃと撫で、手を振りながら教室を出ていった。
    「…うざ」
    先生が退出したのを確認し、離れた場所で話していた3人がこっちに来た。
    「もう体調は大丈夫?」
    「何の話してたの?」
    「今日何時に起きた?」
    一気に質問すんなよ。てか何時に起きたかって誰も気にならんだろなんで聞いた。
    「君らは3人でも僕は1人しか居ないんだが。あ、結弦僕の弁当食え」
    結弦に弁当を食べてもらった後、もう今日は授業がないので質問には一つも答えず、傘を持ってきて無かったから誰かに入れてもらう為にみんなと帰ることになった。
    そういえば最近1人で帰ることが多かったから4人で帰るのは久しぶりだ。ひまりと小夏は居ないけど、とても懐かしい気持ちになった。小夏に振り回されてた響輝は今はたまに凛咲にいじられるくらいで、こんな事言うのはあれだが前より楽そうだ。
    (そういえば忘れてたけど、響輝はあの日のこと覚えてるのかな)
    あの日響輝は長谷川と一緒に神社にいた。絶対何か知ってる。響輝に僕がやろうとしてる事が気付かれたら気まずくなりそうだな。まあいっか。
    考えすぎてまた目眩がしそうだ。
    せっかく久しぶりにみんなと帰ったというのに一言も喋らず家まで着いた。もう帰り道は一人でいることに慣れちゃったのかもな。

    いつも夜寝ないって言うのもあるけど、何故か今日は特に眠れなそうだ。

    …………………………………………………………………………………

    案の定眠れないまま朝を迎えた。
    毎日朝は眠たいのに、今日は全く眠気がない。適当に学校に行く準備をしてから朝食を食べにリニングに向かうと母さんは僕がこの時間に起きている事を珍しがってきた。まあ珍しいもんね。
    「今日何か大事な日?」
    「ぜんぜん」
    あの学校大事な日とかないだろ(※あるだろ)
    「ちゃんと寝た?」
    「うん」(※嘘つき!!!)
    朝から起きてることがそんなに嬉しいか?ってくらい嬉しそうに僕の朝食と昼に学校で食べる弁当を台所に取りに行った。弁当を受け取ってカバンに入れ、朝食を食べた後すぐに家を出た。
    外には元気よく登校する小学生が数人いた。
    あの子たちくらいがきっと“使える”んだろうな。昨日会った子はまだ幼すぎる、多分小学生くらいの子供がいいんだろ?翠も小学生だったし。
    無意識でその小学生たちを見ていると、視線に気がついたのかこっちを向いて元気に挨拶をしてきた。僕はそれに返事をしてから、止めてしまってた歩みをやっと進める。
    今日の天気は曇り。昨日の雨で濡れた地面が雲のせいで乾かず、とてもじめじめしていて不快だ。

    学校に着くと教室には誰もいない。来るのが早すぎたようだ。荷物を自分の席に置き、スマホを手に取った瞬間凛咲から着信が来た。
    「なに」
    『珍しい!起きた?』
    思うよね、わかる僕も珍しいって思った。(2回目)
    「もう学校いる」
    『いや早っ珍しっ今日雪降るかもよ?』
    「降らんわ夏だぞ。今から先生に用事あるから切っていい?」
    『いいよ〜朝からごめんね〜』
    アラーム代わりのモーニングコールだったようだ。もしかしたら他の人からも来るかもしれないから着信音を切ってから笹本先生を探しに行こう。

    職員室の前まで行くと、ちょうど笹本先生が出てきた。
    「おぉ珍しく早いな」
    「今日何回も言われてるそれ」
    もう珍しがられるの飽きたよ。と思っていると笹本先生から本題に入ってくれた。
    「そういえば長谷川に聞いといたぞ、“別にいいけど”ってすっげぇ嫌そうに言ってたぜ」
    「そっか、ありがとうせんせー」
    頷きながら笹本先生は小さな紙を渡してきた。そこには誰かの電話番号とメールアドレスが書かれている。
    「これ、長谷川のやつね。電話したくないからできればメールで連絡してほしいってさ。あとこんなの俺が渡したって誰にも言うなよ?」
    「うわいらn...いやありがとう。うん、お前がくれたからって誰の得にもならないし言わない」
    「君いちいちさぁ…まあいいか…」
    そう言って頭を掻きながら笹本先生は教室とは反対の方向へ行った。それを少しの間見送ってから、僕は教室へ帰った。

    この日はやはり何故か眠くならず、真面目に授業を受けた。もちろん周りには珍しがられて居心地が死ぬほど悪かった。
    帰ってから先生に渡された長谷川のメアドへバイトの面接(したことないけど)とかより自己PRがえぐい長文を送り付けてみると、わざわざ一言ずつに返事をしてくれた。暇なのかな。(※特大ブーメラン)
    それから毎日学校から帰った後あいつとメールでやり取りするようになった。内容は今お互い何が出来るか考えろ、とか、来年からすぐに始めるぞーとか。あとなんでお前夏でもコート着てんだとかだ。
    そしてまだあいつは僕の事を警戒しているように思える文章を時々送ってくる。信頼を得るためになにか行動を起こさなきゃ。
    僕が今出来る事は、生贄たちからの信頼を得て神社へ連れて行きやすくすること。僕は弟が居たおかげで子供と接するのは得意だ。仲良くなれば無理矢理じゃなくても簡単についてきて貰えるだろうと僕は考えた。長谷川には情が移らないようにと注意を受けたが、もし相手が友達の弟とか妹だとしても、自分の家族じゃないしそいつがどうなろうと心底どうでもいいから情なんて移るわけがない。
    とりあえず出来るだけ登下校中に出会う小学生くらいのガキ共と遊んでやったり話を聞いてやったりするようになった。

    …………………………………………………………………………………

    「コハク、最近変よ?」
    休日、昼食を食べている時突然母さんがそう言った。
    「変、僕何かした?」
    「うーん…そうねぇ…」
    母さんは僕の頬を優しく撫でた。暖かい、人の体温に触れたのは久しぶりな気がする。
    「自分じゃ気付いてないかもしれないけど表情がずーっと暗いのよ。学校で何かあった?」
    「何も無い。先生とか友達に聞けばほんとに何も無いってわかると思う」
    コップに入れられた麦茶をぼーっと眺めながら答えるが、母さんはずっと心配そうな顔をしている。
    「母さん、僕が変なのは最近だけだった?」
    「やっぱり何かあるの…?」
    「普通おかしいと思うでしょ、居ないはずの“弟”に話しかけたり、弟の分までご飯作ってあげて欲しいなんて頼むんだよ?」
    母さんは眉毛を下げ、困ったような顔をした。
    「大事な息子が真剣な顔して“弟が最近まで居た”なんて言ったら、信じてあげるに決まってるじゃない」
    「…そっか、変なの。じゃあ僕がその弟を取り戻すって言ったらそれも信じてくれる?」
    母さんはきゅっと両手を顔の前で握りしめてにっこり笑う。表情豊かな人だな。
    「もちろん、応援するしお母さんに手伝い出来ることあったら言ってね」
    「うん、ありがとう」
    そう話しながら昼食を食べ終えた。

    …………………………………………………………………………………

    長谷川と毎日連絡を取り続け、生贄にする小学生たちと仲を深めるようになってから約1年。
    またあの祭りの日がやってきた。
    1つ年上である結弦は高校を卒業し、僕と凛咲と響輝は3年生となった。
    今日の事を1年前のこの日からずっと待っていた。翠を取り戻せるかは不確かだけど、やっと僕がやってきたことの結果を長谷川に見せれる。
    祭りに行く誘いを全て断り、今日は長谷川と行動をした。
    僕が生贄たちを神社まで連れていき、そこからの作業は長谷川が全てやってくれる。泣き喚く子供の声は僕と長谷川、そしてあの時のように何かを唱える響輝にしか届かない。
    僕が生贄たちを連れてきた時の響輝の表情はとても見物だった。悔しそうな、怒っているような、そんな複雑な顔をしていた。
    やる事を全て終わらせ、この日を境に僕は親にも友達にも適当な理由を言い、学校を辞めて村から出ていく事にした。

    こんな狭い村じゃ、子供が足りない。
    もっと、もっと集めないと、
    きっと“あいつ”は満足してくれない
    沢山騙して、沢山捕まえないと。

    …………………………………………………………………………………

    僕は村を出てから、学力が低くても出来るくらい簡単な小学生と中学生を対象に勉強を教える家庭教師のバイト等をして、できるだけ子供と接する事を辞めないよう何年も努力し続けた。
    もちろんその何年もの間にも例の手伝いを続けていた。

    「長谷川さん、すみません遅れました。」
    「10分遅刻だよコハク君じゃあ今回もよろしく頼むよ」
    また今年も来年も、ずっと僕は彼を手伝い続ける。翠が帰ってくるまで。

    さて…次はどんな子を選ぼうかな。
    僕は日々、街中で生贄を探し続けている。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭💴💯💯👍💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works