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    a_shiroji

    @a_shiroji

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    a_shiroji

    DONEお正月にアンケート回答いただいたお題のSSです
    目を開ければ隣に君が 夢を見る。同じ夢を、何度も繰り返し、繰り返し。月はおろか星明かりすらない真っ暗な空の下で、その夜空よりも黒い海の波間に漂っている。腕の中にはぐったりと力なく体を預ける相棒がいる。相棒であり、親友であり、かけがえのない存在。幼子を寝かしつけるようにユラユラと揺すって見ても、何の反応も返さない。妙に冴えた頭の中には、最後に聞いた彼の悲鳴がこだましている。そうしているうちに瞼が重くなって目を閉じる。彼とひとつに溶け合えればいいのにと願いながら。

     Talk to me, ――

     目を開けると、そこは見慣れたトレーラーハウスの寝室のベッドの上だった。窓の外がうっすら白んでいる気がする。明け方だろうか。正確な時間は分からない。ベッドサイドに外して置いた腕時計を見ようとして、ふと違和感に気付く。腹のあたりで組まれた大きな手はまるで錨のようで、波にさらわれないように繋ぎとめてくれていた。後ろからすっぽりと抱き込まれ、温かで規則正しい吐息がうなじをくすぐる。くすぐったくて身じろぎすると、腰を抱く手にギュッと力がこもった。無意識に僕を行かせまいとしている大きな体の愛しい子の仕草に、自然と眉尻は下がり、口角が上がる。大丈夫、僕はどこにも行かないよ、と無骨な指を優しく撫でてやると、ぴくりと指が跳ねた。
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