風呂上がり、バスタオルで髪の毛をわしわし拭きながら部屋に入るクジンシー。
椅子に座っていたノエルは振り向き、目を細める。
ノエルの服を借りた姿だったのだ。(いわゆる彼シャツ状態)
「自分の服はどうしたんだ?」
「出すの面倒くさかったから借りた」
悪びれる様子もなく、クジンシーはそのまま寝台へダイブする。
「こら、髪がまだぬれているぞ」
「ちょっとくらい、へーきへーき。
どうせまたすぐ入るんだしさ」
クジンシーはごろんと横になり、ニヤニヤしながらノエルを見つめる。
ぬれた艶やかな髪、湯上がりでほんのり色づいた頬、服の裾からの素足をわざとらしく見せつけて。
「ノエル」
早く。と甘い声で呼びかけてくる恋人に、ノエルはため息をつき立ち上がり寝台へ行き……
そのままクジンシーに背を向け横に寝転がり布団をかぶった。
あり?と疑問詞を頭に浮かべ、「いやなんで!?」と勢い良く起き上がり文句をたれるクジンシー。
「その気が無くなった。
今日はこのまま眠らせてもらう」
「なんで!?俺なんかした?!」
「悪いが、だらしのない奴は好きではない」
「そんなー!!」
ノエルに飛びつき、やだやだと駄々を捏ねるクジンシー。
布団を引っ剥がし上に乗っかるクジンシーに、わざと覚めた視線を向けるノエル。
うっ……とクジンシーが押し黙った隙を見て、ノエルは相手の肩を掴みグルッと回り、身体の位置を逆転させる。
押し倒された状態になり、やる気になった?と期待するクジンシーだが、ノエルはそのまま身体を起こしてしまう。
「ノエルー!!」
「どうすれば良いか……わかるだろう?」
「………………」
ノエルにジッと見つめられ諭されて、ブーイングをやめクジンシーはしぶしぶ上体を起こした。
「……髪、乾かしてくる」
「あぁ、待っている」
「服もちゃんと来てくる」
「いや……それは構わない」
「…………………………興奮してんじゃん!!」
「それはそれだ」
バツが悪そうに顔を背けるノエルに、なんだよそれー!!と怒りながらも笑い抱きつくクジンシー。
そのままキスをしようとするが、手のひらを押し当てられ阻止された。
「こら、まだ乾かしてないだろう」
「良いじゃんこれくらい」
「ダメだ、けじめはつけなければ」
「ノエルの頑固ー」
「まぁそこが良いんだけれどな」と言い残し、クジンシーはバスタオルを手にして立ち上がるのだった。